白雪姫の勘違い
俺の頭の中は今?で埋め尽くされていた。猫が宇宙に放り出されている某ネットミームのような顔を想像していただければわかりやすいだろう。今の俺ならば宇宙人と交信できるかもしれない、そんな間抜けな顔をしていた。
俺が若菜と付き合ってる?……一体どこからそんなデマ情報が流れてきたんだまじで。無理よ、あんな元気な人についていける自信なんてないよ。若菜はもう正樹が手綱握ってるんだからこっちに押し付けてこないでよ。
「付き合ってないよ?というか若菜もう彼氏いるし」
「そ、そうなの?」
「うん、うちのクラスの木村正樹ってやつと付き合ってるよ」
「そう……なんだ……」
……え?何その絶妙な間は。納得したのは理解できるけどなんでほんの少し安堵してるの?なんですか?嶋村さんが俺みたいなやつと付き合ってなくて良かったとか思ってるんですか?もしそうだとしたら普通に泣きますよ?おぎゃあおぎゃあ。
納得した表情に安堵の色をにじませる凛花を見て、?で一杯だった頭の中にさらに?が追加で搬入される。注文するときに桁一つ間違えましたよねこれ。
「つかなんで俺と若菜が付き合ってることになってんの?それどこ情報よ?」
そう、なぜそのような疑問に至ったのかが一番の疑問点なのである。というか若菜と正樹が付き合ってるのって結構な人知ってると思ったんだけどなぁ……。
高校という閉鎖的なコミュニティの中で恋バナというのはいつもホットな話題だ。A君がBさんのこと好きだよという噂やC君とDさんって付き合っているんだよなどの恋愛事情はいつ話しても人の興味を惹きつける。
そしてそれがイケメンや美少女だったらなおさらのこと。元々火がついている話題なのにそこに油がぶちまけられるのだ。そして若菜と正樹に関して言えばこの例に該当する。正樹もそこそこ女子人気が高いし、若菜も美少女のカテゴリーに属している。くそっ顔面偏差値の暴力!!
他学年についてはしらないが、同学年の生徒はそこそこ知っているものだと思っていた。というか知っていると思う。でもまぁ確かにこの二人に関して言えば中学の頃から付き合っているからそこまで大きな話題にならなかったのかもしれない。
じゃあ知らないのも仕方ないか。そもそも凛花ってあまり人の恋路に興味ないタイプだったりするのか?いやでもさっき俺と若菜が付き合ってるのか聞いてきたからそんなことはないのか。……え?まじでなんで俺と若菜が付き合ってることになったの?本当にわかんないんだけど。
色々と考えたものの、一周回って分からないに戻ってきてしまう。ちょ、凛花さん速く教えてください。僕の頭から?があふれる寸前なんです。
「その……拓人と嶋村さんがこの前廊下で話してるのを見て、それで──」
「それで?」
「距離がすごい近かったからもしかしたらって思って……」
「あー……」
なるほどね。言われてみればそうかもしれないし、勘違いされたのも納得が行くわ。若菜普通に俺のこと叩いてくるもん。
「実は俺と若菜って幼馴染なんだよね。多分それで普通の人より若干距離が近いのかもしれないわ」
「え?そうだったの!?」
「そうそう。小中高全部同じなんだよね」
俺と若菜が幼馴染だということを聞いて大変驚いているご様子。よくよく考えてみると高校になっても仲がいいのは珍しいのかもしれない。いや……そうでもないか。うん、そうでもない気がする。
「まぁそういうわけで俺と若菜は付き合ってないよ。あの元気についていけるかつ上手く制御できるのは正樹くらいだし」
……ん?俺と若菜が話しているところを見たってさっき言ってたよな?……じゃあ俺が急に真顔になってるところ見られてたりする?
若菜が俺の昔話をほんの少し引っ張り出してきたときのことを見られたのか心配になる。あの時の光景は第三者からすると、楽しそうに会話してたのに急に真面目な雰囲気が流れるという絶対に何かあっただろ!と勘ぐってしまうものだと思う。
あ、だから「付き合ってるの?」って聞いてきたのかな?和気あいあいと話してたのに急に真面目な雰囲気流れ出したら「え、修羅場来ちゃった?」という考えが浮かぶのかもしれない。
うーん……でもまぁこの感じあの時の顔は見られてないっぽいな、良かった良かった。もし見られててなぜ急に真顔になったのか聞かれたらどう答えれば分からないからね。
すっきりとした表情の凛花を見て見られていないという判断を下す。というか今日なんか様子がおかしかったのってこのことが気になってたからなの?ちょっと恋バナ好きすぎません?
「ごめんね拓人変な勘違いしちゃって」
「いいよ別に、その誤解も解けたわけだし。でも凛花と若菜って確か同じクラスだろ?休み時間の時とかに話したりしないのか?」
「話したことはあるんだけどね。嶋村さんは嶋村さんで人気だからあんまり話す機会がないの」
そうだった、つい忘れてたけど若菜は若菜で人気あるんだったわ。
常に明るい若菜は自ら望んでいるわけではないが、クラスの中心人物へと自然と昇格していく。陽キャの中の陽キャだから当然と言えば当然だが。
もちろん凛花の周りも人であふれかえっているとは思うが、若菜の周りもかなりの人がいる。そうなれば話す機会がほとんどないのも納得がいく。今思ったけど俺の知り合い人気者多すぎない?間接的に友達少ないっていう事実をつついてくるのやめてほしいんだけど。
「若菜も白雪姫様も大変ですこと」
「そう呼ばないでって何回も言ってるでしょ」
「ごめんごめん」
いつもの感じの凛花に戻ったみたいで何よりです。こっちは友達が少ないという現実にちょっと心が傷ついたけどね!




