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賢者様、貴方をパーティーから追放させてください!  作者: 鳥路
第1章:水上貿易都市「ウェクリア」/勇者と賢者の始まり

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16:魔法の作り方

真夜中の教会というのは、神聖なものなのにどこかおどろおどろしい空気を漂わせている。

明かりがついていないからだろうか。

…まあ、この世界で「電気」という概念が存在するのは機械都市ぐらいだからだろうけど。

一部だけなら、他の都市にも電気を使用した設備というものは導入されているが、前世のようにどこにでもあるわけではない。


この世界の明かりはまだガスが最新鋭。

王都ほどの都市であれば、ガス灯なるものが導入されている。

しかし普及率がまだ低い。大体の都市は蝋燭が夜を照らしているような環境だ。

もちろんそれはウェクリアのような都市でも同じ。

ここは蝋燭で夜を照らす都市なのだ。


「月がないから、ほとんど何も見えないわね」

「見えるのは目先程度ですもんね」

「魔法で光を出してもいいけれど、居場所がバレるのは避けたい…」


外よりも、空に浮かぶ星の方が明るく見えるような環境。

向こうも私たちのことは見えないけれど、私たちも向こうの様子が見えやしない。


「…暗視魔法とかないの?」

「ない」

「ありそうでないのね」

「けれど、今すぐ作れるよ」

「無茶振りした私が言うのもなんだけど、魔法ってそんな簡単に作れるものなの?」

「そんなアリアに魔法の作り方を教えてあげよう」


私たちを包み込むように、謎の結界を張ったノワはどこからか黒板とチョークと白衣を用意してくる。

…この世界にもあったのね。


「ノワ先生の〜三分魔法クッキング〜!早速魔法の原理を今一度説明しようじゃないか!」

「お願い…って、大丈夫なの?これ、声は外に漏れたりとか!」

「大丈夫。師匠の魔法を丸コピして作った異空間だから!確かええっと、この世界の一日は外の世界の一秒程度だぜってやつ」

「そんな魔法まで使えるのね…」

「うん。編み出すのには少し苦労がある。魔法の創造は想像力。具体的に何がしたいのか、その魔法で何がしたいのか、魔法を発動したとき、どういう現象が起きるのか…それを頭の中で組み立てて、言語化する必要があるんだ」

「言語…つまりのところ詠唱ね」

「いかにも。術者だしそれぐらいはわかるか」

「まあね。でも、その作業は誰しもができるわけではないわよね。魔法は想像力。想像力の糧は知識」

「頭がいい魔法使いしか、魔法は作れない。賢者なら知力を試験で証明されているわけだし、もれなく作れる…わけよね?」


頭によぎるのはカンニングの事実。

ノワはカンニングで試験に通った「不正賢者」なのだ。

その悪知恵も認められたものなんだろうけど、魔法を作れるほどに賢いのだろうか。


「カンニングはしたけど…アリアも知っての通り、私の師匠はとんでもない力量を持った存在だよ。魔法の作り方は涙が出るほど仕込まれたし、こうして難しそうな師匠の魔法を完コピする程度の実力はあると自負している」

「知識量は横に置いておくとして、魔法の創造は問題なくできるというわけね」

「そういうこと」


ノワは固有の瑠璃色魔方陣を足下に展開し、それを私の方へ近づけてくる。


「魔方陣に刻まれているこの特有の文字は私と師匠の間では「星涯文字ステラアーツ」と呼んでいる。この地域では「魔法文字ルーン」と言えば馴染みがあるかな」


このうねうねした文字が星涯文字または魔法文字というわけか。

でも、本当になんなのだろうか。

星涯文字…その呼び方は前世での当たり前だ。

やっぱりこの人というか、この人の師匠は…前世で住んでいた場所。鈴海の関係者だ。


けれど、ここは知らないふりをしておかないといけない。

この状況で話をややこしくするのは得策ではない。

せめて揉めるならば…二人きりの時だけだ。


「魔法文字は私にも馴染みがあるけれど、星涯文字という呼び方には馴染みがないわね」

「んー…師匠たちがいた場所では「魔法は星の恵み」という考え方が深いんだよ。現にこの国でも魔石は空から飛来するでしょう?」

「そうね…だから星が関係しているのね」

「そういうこと。で、この文字、アリアは読める?」

「…全くよ。一文字も読めやしない」

「ミリアは読めるよね」

「ええっと…これは回復魔法の魔方陣ね」

「正解」

「二人は読めるの?このぐちゃぐちゃ…」

「読める。魔法に通じる人間なら少なからず読めるようになっているよ」


魔法に必要なのは詠唱。

魔法を使うためには、特有の文字で記された詠唱文を解読しなければならないらしい。

その解読は、魔法の力量でできる範囲が決まるそうだ。

口頭で詠唱文を伝える行為も可能ではあるが、力量不足であれば聞き取ることができないらしい。

ミリアの話だと力量不足で使えない魔法の詠唱は、暗号のように聞こえるそうだ、

またその力ある言葉は魔法文字または星涯文字でしか記すことができないらしい。


「まあ、そんな感じで思い浮かんだ言葉を詠唱文に。そして言葉を魔方陣の中に刻み込む」

「それで魔法が完成というわけね」

「そういうこと。今回私は「透明化魔法」を作りました」

「暗視どこ行ったのよ」

「いやぁ。暗視なんてわざわざやる必要は無いかなって。私達も夜目に慣れてきた頃だと思うしさ。だからこっちにしておいた」


「なるほどね。で、それで何をする気?」

「透明化で潜入って、わりかし基本じゃない?」

「そういうことにしておくわ。これで魔法の作り方はわかったし、必要な魔法も完成したわね。じゃあ、教会の中に入ってみましょうか」

「あの、勇者様。一つお願いが」

「何かしら、ミリア」

「…」


彼女の提案に、私とノワは驚きを隠せなかった。

けれど、彼女が帰ってこないのも神父的にはよくて不安を、悪い場合だと不審を与えてしまうかもしれない。


リスクがあることを承知した上で、謎の空間魔法を解除し、元の時間に戻った私たち。

透明化した私とノワは、何も知らず教会に戻った風を装ったミリアの後ろに張り付き、真夜中の教会へと足を踏み入れた。

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