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ゴッドシンデレラ大勝利!希望の未来へレディ・ゴー!

時の流れに御簾の隙、走る言葉は銭の種。実らぬ恋へと泣いた王子も、やがて王座を引き継いで、今じゃ齢も50過ぎ、彼らの国家を栄えさせ、名君呼びにて讃えられ。彼は武道を更に広めて、やがて宇宙に進出し、火星に植民、道場開き、ネオ講道館なるものを。そして陛下の政治の真髄、弱者を救ったことにあり、全て救いはできずとも、かつてに比べて見違えるほど、飢えや赤貧あえいだ人も、その数以前の10分の1、それも全ては陛下の方策、彼を誰もが称賛し、しかし陛下はいつでも言った、これは私の功績あらず、全ては35年前、私の目の前消え去った、例のお方のお陰にて、私は今でもあの人忘れず、齢50で独身貫き、二足の足袋をも大事に保管し、ずっと心に想ったと。家臣の誰もはそれを聞くたび、陛下の気持ちがいたたまれずに、いずれ陛下の目の前に、デレラが再び現れん、それを密かに願いてし。

そんなある朝、土曜の日、日課の稽古の最中にて、陛下は突然意識を失い、地面に突っ伏し緊急搬送。医者の見解曰くには、「これは酒呑み脳卒中、さらに日頃の過労にて、蓄積せられし脳への負担、少し遅けりゃ命落とした」聞いて陛下は我が命、もう長からんと悟ったものか、その日の夕方いきなり遁走、宮殿かき消え立ち去った。彼が向かうはシンデレラの木、さらに彼女の生家にて、あの家すでには持ち主なくし、古びて錆びては苔むして、しかし陛下のたっての願い、家はそのまま取り壊されず、かつての風景残したままにて例の大木残ったり。陛下は馬車にてその家向かい、門を開けては庭へ行き、そして木の前しゃがんでは、かくの言葉を述べ立てた。「ここに一つの足袋がある、亡きあなた様の形見です。この度私も命危うく、天上向かえる仕儀となり、さりとて私が持ちうるは、二人の幼い養子のみ、私が消えればこの国揺らぎ、混乱の地へと逆戻り。そこであなたにお願いしたい、あなたも一端神ならば、あなたの力でどうかこの国、乱れぬようにと守ってほしい。30年前あなたは言った、10年のちか20年後に、私が立派な陛下となって、それからこの木へ馳せ参じれば、再びあなたに会えますと。どうかお姿現して、私の頼みを聞き入れほしい、私がこの世で唯一愛した、妻と思えたあの人よ」

突如ガラスが銀色光り、光が木の中照らし出し、そこから現るシンデレラ、神の道着を纏いてし。「ああこの瞬間待ちわびた、再びあなたとお会いでき、昔と変わらぬ姿にて、私の頼みを聞いてほしい」「お久しぶりね、王子様。あなたの気持ちはわかったわ、いくら神でも限度はあるけどあなたのたっての頼みとあらば、仰る通りにこの国守護し、養子が成長なさるまで、平和であるよう試みますわ」「有難きことだ、この私、30年間あなたを思い、ひとときたりとも忘れたことなく、私の治世はあなたのおかげ、この国発展させられた」「私一人の力じゃないわ、全てはあなたの才覚と、武道に対する愛情で、私はあくまでお手伝い、あなたの力量故のこと」「そう褒められては背中が痒い。しかし私は最後まで、君に勝てずに死にそうだ、せめていつかは再戦をしてあの日の再演望んでいたが、しかしお医者の口からは、絶対安静極力静謐、とても以前の私のように、領域展開使うなど、到底不可能、情けない」「それではあなたも神になり、私や嘉納とおんなじように、武道を守護する者として、神格になればいいじゃない。神格になれば衰えず、いつでも私と再戦できるし、それに私とずっと一緒に、世界を見守り過ごせるわ」「願ってもない幸せだ、しかし私に資格があるのか、私は所詮は一端の王、君のようには強くない、精神性とて綺麗にあらず、それでも私は神となれるか」「あなたはあれから30年、民と武道と国家のために、全力挙げては尽くされた、そんなお方に資格がないと、どこの誰ぞが言えるでしょうか」「有難いことだ、シンデレラ、こんなに嬉しいことはない、私は今まで怖かった、君の望んだ王になれたか、君のご意志を継げているかと、それが延々気がかりだった。今まで会いにはこなかったのも、いざ君と会って叱責されたら、とてもではないが生きていけない、そういう恐怖のせいだった。しかしどうやらこの私、理想の王へとなり得たようだ。もはや何にも思い残さず、自分の命も定めと受け入れ、静かに天へと登れる気がする」「それを聞いては安心したわ。だけどあなたはもう少し、まだ下界の中生きなきゃならない、身仕舞いの時間残されて、それがあるうち全力で、あなたは生き抜かなければならない」「それはもちろんわかっているさ。私は国王、国王故の、死に際責務があるだろう。後継者決めは他ならず、私の亡き後この国が、荒れてしまわぬ調整も、遺産分配、その他色々、それらを行わないうちは、私も死んだりできません。それまでしばしの別れです。再び会えては嬉しかったよ。ああさようなら、シンデレラ」「近いうちにまた会いましょう。どうかしばらくお元気で」そう言いデレラは木の中へ、そしてガラスの光も消えて、デレラが完全消え去る同時に片方の足袋が粉々割れた。もう一つの足袋陛下は拾い、しばらく感慨深げに眺め、やがてゆっくり歩き出しては馬車に乗り込み王城戻り。



1年ほど後、宮殿で、とある国家のその王は、いまわの際にて息子に向かい、「愛する我が子、よくお聞き、神はいつでもそばにいる。神を信じて、愛していれば、さすれば幸福訪れん。私は天にて神と一緒に、おまえを見守りつづけます」そう言い残して息絶えた。以降幾年月日は巡り、されども息子の信仰絶えず、義理の息子でありながら、月に一度の墓まいり、常に欠かさず行き帰り。そして国王もう一つ、息子に残した置き土産、それは武道の魂だ。ジャポニズムなどの域すら超えて、全世界にての武道が流行り、嘉納治五郎唯一神と、崇められては奉り。国も繁栄、政治は渡り、まさに国家の黄金時代、ローマやギリシャも凌ぐほど、のどかに栄華を極めたり。そして天にて神様は、彼らの日常優しく眺め、そしてたまには手合わせもして、変わらず毎日過ごされた。

やがて春の日訪れて、苔むした家のその近く、シンデレラさんが植えた木に、大輪の花が咲いたという。


おとぎ話は瑕疵の極、さりとて優美なものなれば、この物語は舞踏にあらず、世界の誰かの武闘伝。今この地にてまた起こる、灰かぶり武闘伝CINDERE-LLA、ひとまず話はこんなところで、また気が向いたら弁じましょう。

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