七 さらば灰かぶり!マスター・デレラ、暁に死す
城下、王城続く道、溢れかえった人だかり。彼ら王子の真の妃と、騙り押しかけ無象なり。デレラはかき分け道を行き、たどり着いたは門前に、順番待ちにて並びたり、周り六寸平等に。
やがて彼女の番は来て、兵士伝えて言いしには、「はい次の方、はいあなた、あなたは勝ったる人ですか、いいや恐らく別人だ、騙りばかりで困ってしまう、どいつもこいつも偽物だ、名誉求めて彷徨い歩き、そこのあいつを見たまえよ、彼は見かけは女だが、真の性別男なり。あんな奴まで湧く始末、どうせお前も偽物だ、まあいいだろう、この足袋を、ガラスの足袋をば履いてみろ」
果たして彼女のその足に、足袋はぴったり合いにけり。周囲どよめき常軌を逸し、騒ぎ立てては妬んだり。兵士驚き彼女に向かい、「ぬさもとりあえずこの度は、御足合いたるこの足袋は。さあさ、こちらにいらっしゃい、あなた殿下とご謁見」
広間通され態度変わられ、歩く姿はなろう系、成り上がり主義は極まれり、そして現る王子様。「あなたが大会勝った人、なるほどお顔も似ているな。何故に私を拒んだか、どうか結婚頼みます」「しかしあなたが脆弱ならば、私は結婚いたしません、あなたの実力いかほどか、お手合わせの上検討したい」「あなたのお気持ち重々承知、それでは戦い始めましょう。バトルフィールドまさしく広間、今この場所にて始まりだ」
そして二人はさし向かい、掴みかかって始まった、全てを決めたるこの闘技、これが終われば話もおしまい。王子突然叫びしは、「フルホン朝拳法、奥義、領域展開!」
突如世界は姿を変えて、重力失い皆が浮き、地球太陽はるかに見えて、宇宙空間なりにけり。「ああ王子様、これは何?武道の域すら超越し、宇宙のようでも呼吸はできる、ここにオカルト極まりし」「これは王家に伝わる技で、僕らのみしか使えない、領域展開申すもの、これを使えば幻影や、ないもの他人に見せられる」「さすが王家はレベルが違う、しかし私も負けはできない、灰かぶり神拳、レンズ撃」豆を放ったその途端、突如手近な小惑星、デレラ向かいてぶつかりし、王子手をあげ振り下ろし、それと同時にぶつかりし。「この空間では僕こそ王者、ここの物体全て操り、見てくれ例えばフォースの近親、自由に支配ができるのだ」「ダークサイドに落ちた人、少し常軌を逸しすぎてて、もはや武道は超能力、全知全能危ぶまれ、しかし私は世界最強、どんな相手も負けません」「いつまで軽口叩けるか、私に屈せよお嬢様」「屈してしまうはあなたの方よ、灰かぶり神拳、奥義、レンズ撃Part3!」「こちらは僕の相手です、くらえ!小惑星十字斬!」来たり無数の小惑星、それに向かってレンズ豆、しかし力はどちらも同等、互いにぶつかり光を放ち、壮絶なりしは戦いぶりで、ラッシュの域さえ超えたるような、頂上決戦行われ。
小惑星帯ありし星、やがて全てが王子に使われ、全てが豆との対消滅、策にこまって王子様、「もはや手段は選べない、ゆけ!我らが太陽系」あろうことかは常識家の言、なんと太陽、水星や、その他諸々惑星と、冥王星らの準惑星、彗星衛星その全て、ボイジャー1号2号まで、全てデレラに向って来、超速力にて接近し。空の上からそれを見た、嘉納治五郎困惑し、下界へ降って現れて、王子に向かって言いしには、「流石にこいつはやりすぎだ、いくら架空の宇宙とて、これだけの星がぶつかれば、シンデレラだって死んでしまうぞ」「あなたが嘉納の治五郎か、しかし私も負けはできない、ただの娘に負けたとあっては、王家の名前に泥がつく、結婚することそれよりも、王家を守るが私の責務、勝つこと第一最優先、あなたは引っ込みいただこう」「いいえ、私は負けません。ここで負ければ一生の傷、父の拳法一子相伝、敵はどこにもあらずして、たとえ星でも打ち倒す。どんな技でも受けて見せます」そんな間も星々は、デレラに向かって接近し、はるか遠くの太陽も、今では30メートルか。しかし何故だか太陽を見て、目は潰れないし体も溶けず、多少暑さは感じられても、これは偽物世界なり、現実よりかは型が落ち、実際ぶつかりしないことには効力発揮もしないものなり。デレラはしばらく星々見つめ、やがて目を閉じ考えた、急にくわっと目を開けて、叫びし声には透き通り、「ああ王子様、王子様。あなたのこの技見切ったわ。もはや太陽敵でない、いかな星でも倒してあげる。それを超えたる力を得たわ」「私の王家のこの技を、いとも簡単見切るとは、そんな者など見たことがない、お前はまさしく武神の化身か」「ああお母様、お父様、そして嘉納の治五郎さん、私にお加護をくださいな。たとえ相手が王子でも、誰であっても打ち勝つ力、この体内より引き出して、灰かぶり神拳、最終奥義、ベテルギウス弾!」虚空の中から現れた、シンデレラさんが呼び出した、そこに顕現ベテルギウスを、デレラはその手で持ち上げて、そこで叫んだ例の声、「みんな、私に力を分けてくれ!」その姿まるで元気玉、なんと銀河の星々が、ベテルギウスへ向かってきては、それに同化し大きくなって、ついには巨大な星となり、直径超えたる100億光年、太陽系など目ではなく、満を持してはシンデレラ、向かって来たりし太陽系へ、無数の星々集合体を、掛け声と共に投げつけた。
途端閃光巻き起こり、しばらく全ては光に包まれ、それから1分程後に、宇宙の星々影もなく、ただの虚空に二人きり、明かりの見えない暗闇に、取り残されしは二人きり。「ああ娘さん、この僕は、あなたの力を誤っていた、とても僕などかないはしない、僕はあなたに負けたのだ、いいやこの世の誰しもが、あなたに勝つことできぬだろう、あなたはまさしく武神の化身、この世の武道を統べる人」「戦いは未だ終わってないわ、どちらか片方倒るまで、決着つけたりできない定め、かくなる上では一騎討ち、私の全力あなたの全力、それを互いにぶつけます」「しかしこないな暗闇で、一騎討ちとは言うけどね、見えぬ相手に技をかけても、それが当たりし保障なく」「見えざる敵をば見ることが、それが武道の真髄よ、あなたも武道家なりしなら、きっとわかってくれるはず、私はあなたのいる場所が、どこであるのかわかっているわ」「そうか、それならこの僕も、君の気配を察知して、それと思った方面へ、我が渾身なる技をかけよう」「それじゃ早速やりましょう、正真正銘最後の一撃、これで全てが決するわ」そして両者は歩み寄り、互いにかけたる最終奥義、長く続いた戦いも、これで完全決着し、「灰かぶり神拳、最終奥義、両足硝子の靴打撃!」「フルホン朝拳法、最終奥義、敵の汚れし血潮持て我が田の畝を潤さん!」王子もデレラも寸分違わず、互いの打撃をぶつかり合わせ、それで起こった火花と共に、暗闇若干明るくなりて、互いの姿も現れた。「暗闇のような世の中だけれど、私は武道の力でもって、こんな感じで世界を照らし、人を明瞭、映したい」「僕も同じさ、シンデレラ。僕たちの道を僕たちの手で、光で照らして歩んでいこう」「あなたの道は照らしたい、あなた以外の誰かのも。私は世界のどんな人でも、この手で照らしてあげたいの。例えば私の継母さん、彼女は可哀想なお方、その他いろいろ今回の、武闘に負けてしまった人たち。頂点の人は忘れがち、だけど私は知っている、下にいる人の苦しみを、強くない人の苦しみを。私はそれらを救いたい、あなたのおかげでそう思えたわ」そして再び閃光広がり、爆発起こって風も吹き荒れ、やがて宇宙が消え去って、王子の能力失効し、いつもの広間に逆戻り。
王子、しばらくその気を失い、数分後には起き上がったが、見るとデレラが半透明、今にも消え去る途中なり。「待ってください、シンデレラ、あなたはどうして消えているんだ、どこへ向かってしまうんだ」「あなたは私を武神と言った、まさに私は武神となるの。人間を超えたその先で、武道を守護する神となり、父親、母親、嘉納と共に、世界の武道を守ります」「それなら僕はどうなるのだね、僕はあなたに惚れているんだ、あなた以外のどんな誰とも、結婚したくはないんだよ」「しかし一時の恋ですわ、いずれあなたも諦めはつき、きっと素敵なお妃を、娶って幸せ暮らすでしょう」「いいや、とても容認できない、そんな勝手な行動は、あなたがここから消え去って、僕はどうして生きればいいんだ」「私は消え去りしませんわ、私は世界のどこにでもいて、いつもあなたを見守って、陰で助けていますから。それに私のその足袋は、ずっと姿が残ります。その足袋を保管なさっていれば、いつでも私を思い出せます」そしてデレラは今にも消える、最後に残した言葉には、「母親、姉へと伝えてください、辛い仕打ちもなさったけれど、今日まで生きたはあなたのおかげ、本当にどうもありがとう。それから大事な王子様、あなたに言いたいこともある、私の形見はもう一つ、家の前にある例の木よ。あれは私が植えたもの、父親、母親眠ってる、墓の下植えた例の木よ。あそこにあなたが向かってみれば、再び私に会えるかも、しかしすぐとは行きません。10年後か20年後に、あなたが立派な陛下になって、見事この国治めてみれば、その時私と会えるでしょう。それまでしばしの別れです。あなたの達者を祈っています、ああさようなら、王子様」ついにデレラは消滅し、再び残った硝子足袋、最後の形見の硝子足袋、二つのみにて残りけり。王子は足袋をば腕に抱えて、初めて味わう失恋苦しみ、彼の心に耐えがたく、しばらく泣いてなさったと。