10.sideアヴィスト
コトリという小さな音でさえも立てずに、目の前に高級そうな…否、高級であろう容れ物に入った紅茶が出された。鼻孔を擽るほんわりとした香りを作り出した侍女は無言のまま一礼して、足音一つ立てずに扉まで下がり、再び一礼してその向こうに姿を隠した。無意識にその姿を目で追っていた俺は、扉が閉まるのを見届けると、視線を目の前のカップに移す。ユラリ、ユラリと揺蕩う湯気と透き通った飴色の液体に、自然と喉の渇きが引き出される。己の姿を映し出す水面から、スッと視線を今度は目の前に座る方へと移す。
俺の視線の先に座るのは、ここ最近ではすっかり見慣れてしまった黄金の髪をたっぷりと揺らめかせた王女様。自分用に出されたカップを、細く白い綺麗な指で持ち上げて口許へと運ぶ。香りを堪能してからそっと口を付け、音を立てることなくひと口飲む。所作の一つ一つに美しさと高貴さが表れ、よく教育されているのが解る。コクリと香ばしい飴色を飲み込んだエナーシャ様は、俺の視線に気づくとニコリと微笑む。
「どうぞ、アヴィスト様も召し上がって?」
「……では、お言葉に甘えて」
促されて、カップの取っ手に指を差し込み、ほどよく温められている紅茶をいただく。エナーシャ様のように音一つなく飲むことは難しいが、なるべく音を立てないようにして喉に流し込む。湯を煮立たせ過ぎによる渋味もなく、茶葉と湯の割合が釣り合わず薄味にもなっていない紅茶は、スルリと違和感なく喉を通り過ぎる。その後から仄かな香りが口の中に広がった。さすがは、王宮に勤める者の入れたお茶だ。素人ではこんなに絶妙な味は引き出せない。これをいただける機会があるのは、ある意味では幸運なことだ。本音を言えば、こんな状況下でなければ尚更良かった。
優雅な仕草でカップをソーサーに戻したエナーシャ様は、俺と視線が合わさるとニコリと微笑まれた。その様は正しく天使。不意をつかれるその純心さには、一瞬ドキリと心臓が跳ねるから止めていただきたい。
ほんのりと薄桃色に色付く形の整った唇から紡ぎ出される言葉は、ここ最近ではもう聞き慣れてしまった決まり文句。
「それで、アヴィスト様。最近の彼女は、どんな様子でしょうか?」
「……はあ」
何故かこの王女様は、彼女──リランのことを聞きたがる。最初の接触時から、第一声はコレだ。
初めはエナーシャ様のただの興味からくる質問だと思っていた。リランは魔女に乗っ取られた国の最重要参考人だから、どんな恐ろしい人物なのかと勘違いしているのだと考えたから、どれだけ無害な人物であるかを伝えた。天真爛漫という言葉がしっくりくる性格で、世間を騒がせた残虐非道なことなど本来なら一つもできはしないのだと、解ってもらいたい一心だった。俺の言葉を聞くエナーシャ様は、相槌を打ちながら微笑ましげに、だけど食い入るように耳を傾けてくださった。振り返れば無礼な態度だったなと反省する俺の一方的な話を最後までお聞きになった王女様は、「とても明るく優しい方なのですね」と言ってフワリと天使の微笑みを浮かべた。俺はその笑みにホッと息を吐いた。理解していただけたのだと、そう思った。
だけどエナーシャ様は、それ以降もリランの様子を毎回お尋ねになる。今日はどんな様子だったのか、誰と話していたのか、どうでもよさそうな些細なことも全て聞いてこられる。初めは、まだリランを信用しきっていないのだろうと思い、真面目に熱心に話していたが、これが会うたびに毎度毎度同じことを聞いてくるとなると、さすがに疲れてくるし疑問にも感じる。一体何が知りたいのか、と。
「そうですね……まぁ、今日も相変わらず騎士や魔術士たちを相手に、加減知らずに魔術をぶっ放していましたね」
「まあ! 元気な方ね」
「元気、と言われますと少しニュアンスが違うような気がしますが…。相手がフラフラになるまで扱き倒す姿は、鬼を連想させましたね」
「あらあら、本当に凄いのね」
口元に手を添えて、クスクスと可愛らしく笑うエナーシャ様。
「他には? 何をなさっていらしたの?」
「そう…ですね。訓練の合間に、サネルガと何か話していました。距離があったので何を話していたのかは分からないのですが、楽しそうでしたよ」
「………そう。仲がよろしいのね」
話題を探すために記憶を遡ると、とある場面を思い出す。リランの保証人兼監視役のサネルガとリランは、同じ魔術士同士だからか、一緒に何か話しているのをよく見かける。共通の話で盛り上がっているのだろう。王都には知り合いが俺以外いないから、リランにとってサネルガは王都で初めてできた友人なのかもしれない。
リランの性格上、村にいる時も誰かしらと一緒にいるところは何度も見ていたが、特定の誰かと長期間一緒にいるところは見たことがなかった。だからなのか、妙に気に掛かる。無意識に二人の姿を目で追ってしまう。
リランの本質を理解してくれる人が増えるのは嬉しい。リランが元気に過ごしているのも、笑顔を見せてくれるのも、本来の明るさを取り戻してくれたのも嬉しい。だけど、時折ふと心の中に浮かび上がるモヤモヤしたものが引っ掛かる。何故だろう。何がそんなに気に掛かっているのだろうか。自分のことなのに、よく分からない。
「私も、リランさんとお話ししてみたいわ」
俺をぐるぐると回る思考の海から引っ張り上げてくれたのは、この発言だった。突然のことに思わず動揺した。言葉を紡げない俺は、ただ目の前の王女様を見つめることしかできなかった。見つめられた本人は、俺の視線に気づくとニッコリと微笑み、片手を頬に添えて軽く首を傾げた。
「前にお誘いしたのだけれど、タイミングが悪くて結局お話できなかったの」
ほぅ…と小さな溜め息も合わせて告げられた内容に、いつの間に、という驚きが勝った。意外と行動力のある御方なのだと場違いにも思ってしまった。固まり絶句する俺を置き去りにして、エナーシャ様は次々と言葉を並べられる。
「この国を脅かす存在だと聞いていたから、どんなに怖い方なのかと最初は思っていたのだけれど、実際に対面したお父様も悪い印象は抱かなかったようだし、訓練に参加している騎士や魔術士の方たちにも好評のようだから。それに貴方のお話を聞いている限り、とても快活で面白い方みたいだから更に興味が出たわ」
綺麗な瞳をキラキラさせながら語る姿は、年相応の少女のようだった。
「いつなら都合がつくのかしら。訓練はほぼ毎日しているのよね? それなら訓練の時間を調べてそこを避けるべきね。あ、でも、私もお勉強とかお稽古とかで空いている時間は限られてくるし…。私の空き時間とリランさんの空き時間がピッタリ合う時があればいいのだけれど。それも調べれば分かるかしら。後で騎士団長様にも聞いてみましょう」
軽快にペラペラと言葉を連ねる王女様を見て、よく喋る御方なのだなぁと場違いにも思ってしまう。まぁ、所謂現実逃避というものであろう。ポカン…と呆けた顔をしているであろう俺に気づくことなく、一人計画を立てていくエナーシャ様。あーでもない、こーでもない、とブツブツ呟く御方に挟む言葉などあるはずもなく、俺はそっと自分用に用意された紅茶をひと口飲んだ。うん、少し冷めてしまったがそれでも美味い。俺は取り敢えず、王女様の計画が立て終わるまでゆっくりとお茶の味を楽しんだ。──いや、楽しもうとした。
「そうだわ!」
ポンッ!と両手を鳴らした王女様の思考回路は、俺の予想以上に早く回っていた。ニコニコと笑みを浮かべる御方のその表情を見て、一瞬だけ嫌な予感が過ぎった。俺の予感は案外よく当たってしまうのだ、悲しいことに。
「アヴィスト様、よろしければ紹介してくださらない?」
ほら来た。“よろしければ”なんて言葉が入っているが、これは“お願い”の形を被った“ご命令”だ。視界に入らないどこかでこちらを窺っている護衛騎士から、針のような視線を浴びせられている気がする。断るなんて言わないよな?、的な意味合いの。
相手が王族でなければ速攻断っているこの“お願い”を、俺は頭が痛くなるほど考えた。国の最重要人物とされているリランと引き会わせても良いものなのか…。天使と讃えられるエナーシャ様のことだから、リランに危害を加えることはないとは思うが、王女付護衛騎士がリランを警戒し近づかせたくないと判断して刃を向ける状況になってしまったとしたら…。
何が最適解なのか分からず、うんうんと頭を悩ませていると、そっと俺の様子を窺うようにエナーシャ様が恐る恐る声を掛けてきた。
「……やっぱり、難しいかしら?」
「いえ、あの、難しいというか……私には可不可の権限がないと言いますか…」
「英雄騎士でもダメなの…?」
「…“英雄”はただの称号なので、私の立場は一介の騎士と変わりありませんから」
「あら、そうなの? 初耳だわ…」
満月のような瞳を更に丸くして、疑う余地もなくビックリした表情をした後、「どうして誰も教えてくれないのかしら…」とボソリと不満の言葉を発したエナーシャ様は、細い指を顎に当てて再び考え出した。
「本当に、どうしたらお話できるのかしら? 前にお話しようとしたら断られてしまったし…」
「……リランが、断ったのですか?」
王族の誘いを断る? さっきも「誘ったけどタイミングが悪かった」とはおっしゃっていらしたが、まさか断っていただなんて。そんな命知らずなことをするとは、リランの肝はどれだけ据わっているのか。もしかして自暴自棄になっているのか?
恐らく俺の顔色が若干悪くなったのを認めたのか、エナーシャ様は慌てて手を振って「違う、違うわ。彼女が言ったのではないの!」とおっしゃった。
「お誘いした時に、ちょうど魔術士副団長様がいらして、彼に断られてしまったの。訓練の途中だったっていうのもあったし、そこは私も悪かったのだけれど、それに彼も同席した場でないとお話できないって言われてしまって…」
「そうですか…」
良かった、リランが断ったのではなかった。さすがのリランもそこまで馬鹿ではなかったということだ。本物の命知らずの馬鹿は別にいた。相手がエナーシャ様でなかったならば、今頃生きてはいまい。まぁ奴がどうなろうが俺には知ったこっちゃないが。
「私は女の子同士、リランさんと仲良くなりたいだけなのに、なかなか上手くいかないわ…。同じ王宮にいるのに、会話をするどころか顔を合わせることすらできないなんて、誰かの陰謀を疑ってしまうわ」
「………はぁ」
「もう、本当にどうなっているのかしら」
頬を膨らませて怒っている風な御方を見て、それはきっとリランと会わせたくない人たちの陰謀が働いているのだと思いますよ、と心の中でそっと語り掛けてみる。特にエナーシャ様第一主義の護衛騎士とか、想像に難くない。断固反対している姿が目に浮かぶ。
「……こうなったら、王族の権限を使ってしまおうかしら?」
「は、いや、それは……」
「だって全然会えないのだもの。使えるものは使ってしまった方が簡単じゃなくて?」
だんだんと目が据わっていく王女様を見て、思わず焦る。待ってくれ、貴女はそんな好戦的で権限を振りかざす方ではないはずだ。天使や女神と言われている優しい御方のはずだ。イメージがガラガラと音を立てて崩れていってしまいそうだ。今もうすでに俺の中のエナーシャ様イメージ像にヒビが入っている。こんな姿、他の者に見せられない。顎を外した阿呆な表情を晒したまま、頭の先から砂となってサラサラと消えていく大勢の信者たちの姿が頭に浮かんだ。
「あの………エナーシャ様…?」
恐恐といった様子で、話し掛けてみる。どうか落ち着いてほしい。憧れの王女様のままでいてほしい。見なかったことにするから、どうか。
俺の念が伝わったのか、声掛けにハッとなったエナーシャ様は、顔を真っ赤にさせて恥ずかしそうに身体を縮こませた。そして赤く染まった頬を両手で隠し、目を伏せる。
「あの……ごめんなさい。つい感情的になってしまって…」
「いえ………」
「私ったら、ちょっと思い通りにいかないことが続くと何故か攻撃的な思考にいってしまう癖があるのよ…。気をつけてはいるのだけれど、たまに無意識に言葉とか態度に出てしまうことがあって。ダメね…感情をコントロールできないなんて、王族失格だわ」
はぁ…と大きな溜め息を吐きながらシュンと萎れるエナーシャ様に、俺はなんと声を掛けていいのか迷ってしまった。こんな状況に遭った時、リランなら明るく笑い飛ばして励ましているだろう。サネルガなら共感し、言葉巧みに卒なく切り抜けるだろう。口下手で、励ましも切り抜け方も思いつかない俺は、どうすればいいのだろうか。意味なく口を開閉させた俺は、グッと一度唇を引き結び、唾をひと飲みしてから意を決して口を開く。
「私は…、こんなことを思ってしまうのはとても失礼だと思いますが、本音を言ってしまえば、エナーシャ様の別の面…というのですかね? それが見られて良かったです」
俺の言葉に、伏せられていた満月が上がる。キョトリと小首を傾げる尊き方に、纏まらない言葉を連ねる。
「この国の人たちの間では、リランは殺人者で悪者という認識が広がっています。俺はそれが許せないというか、違うんだと大声で叫びたい。本当のリランを知ってもらいたい。本当は、優しくて明るい子なんだと、笑顔が良く似合う子なんだと、知ってもらいたい」
リランの身体を乗っ取り、様々な悪事を働いた“魔女”のせいで、この国は甚大な被害を被った。大勢の死者が出て、大勢の者が傷ついた。だけど、リランも被害者の一人なんだ。己を殺せと願ってしまうほどの被害を受けた、一番の被害者なんだ。きっとそれを言ったところで、信じてくれる者は殆どいないのだとしても、一人でも多くリランの味方がほしい。リランを理解してくれる人がほしい。だから。
「エナーシャ様が、リランのことを知ろうとしてくださったことが、人となりを知った上で素直に会いたいとおっしゃってくださったことが、私は嬉しく思います。批難するためでなく、仲良くなるために会いたいとおっしゃってくださったことが、とても嬉しいです」
噂による先入観を捨てて、いろいろな人からリランのことを聞き、それらを踏まえて、それでも会いたいと思ってくださるエナーシャ様は本当に救いだ。ただただ仲良くなりたい一心で、どうにか会える機会を作り出そうとするそのお姿は、人として尊敬するに値するだろう。
俺の口角は自然と笑みを作り出していた。
「まさか目的のために王族の権限を使おうとなさるとは、思いもしませんでしたが。その目的が、友好のものであるのならば、使っても良いのではないかと思わず賛成してしまいそうでした」
「………使っても良くて?」
「実行するのは止めた方が良いかと存じます」
期待を込めた視線で訴えてくるエナーシャ様に、神妙な顔付きでそう返す。天使も自分の欲のためには権力行使も辞さないと捉え、王族に対して悪い印象を持つ輩もいるかもしれない。
“魔女”騒動が落ち着いたとはいえ、それは一時的なことであり、またいつ出てくるか予想がつかない状況で王権制度反対運動なんてものが勃発したら、正直に言って手が回らなくなる。しかも最悪な場合、その運動に乗じて“魔女”が再び襲ってきたら、この国は終わりも同然。だから王女様には自重していただかなくては。
俺の返答を聞いたエナーシャ様は、傍目から見ても判るほどヘナヘナと崩れ落ちた。とても落ち込んでいる。
「本当に、どうすればいいのかしら…」
「エナーシャ様」
「他に何か良いアイディアはないの? 権力行使は最終手段に取っておくとしても、リランさんと会う機会なんて待っていても訪れる気がしないわ…。無理矢理作らないと……あ、夜這い?」
「エナーシャ様」
「いいこと思いついた!」といった表情をなさっているが、それはちょっとどうかと思う。誰だ王女様に“夜這い”なんて言葉を教えたのは。それに権力行使が選択肢から外されていない。女神・エナーシャ像がガラガラと音を立てて崩れ落ちていく。……こんなキャラだったか?
「夜這いもダメなの? うーん……あ! 分かったわ! 私も訓練に参加すればいいのね?」
いや、分かっておりません。そんなの絶対、国王がお許しになられる訳がない。そもそも戦闘術なんて習っていないだろう。やっていても護身術程度か。それに本当に奇跡的に許可が降りて訓練に参加なさったとしても、騎士や魔術士たちが恐れ慄いて訓練にならないだろう。
「……………………お手上げよぉ…」
二つの満月を潤ませて不貞腐れたようにテーブルに突っ伏したエナーシャ様は、どんよりとしたオーラを背中に背負い幻のキノコを身体中に生やしていた。これだけあからさまに落ち込まれると、逆に手助けしてあげなければならない気がしてくる。俺は困惑しつつも、エナーシャ様の“お願い”を叶えるべく思考を働かせた。
わざとらしくなく、自然にエナーシャ様とリランを立ち会わせるためには…。
「あの……稚拙な案かもしれませんが、」
「何? どんなアイディア?」
失礼を承知でそっと声を掛けると、食い気味に聞き返された。その反応速度に驚きつつも、藁にも縋る思いで見つめてくるお姿に、咄嗟の思いつきを口にせずにいることもできず。俺は頬を引き攣らせながら、なんとか自分の考えを言う。
「訓練に参加することは不可能であると思いますが、見学なら少しは可能性があるのではないでしょうか? 騎士や魔術士たちの武運を祈りにきた、というような体でいらっしゃるのであれば、彼らも良い緊張感を持って訓練に取り組めると思います。もちろん、エナーシャ様は危害の及ばない場所からの見学になりますが…。休憩時間とかであればリランとも接触できるかと」
俺が言葉を連ねれば連ねるほど、それに比例してエナーシャ様の表情がだんだんと明るくなっていく。キラキラ光る瞳を見て、俺はこの考えを伝えたことを後悔し始めた。
「それは良い考えね! 採用しましょう!」
「えっと、時間が合えばの話なんですけど…」
「それは調整させるから大丈夫よ!」
「一応、誰かに相談した方が良いかと…」
「これはもう決定事項よ! 相談の必要なし!」
「あの、前提条件として、国王様と騎士団長と魔術士団長の許可が必要なのですが…」
「そんなの、もぎ取ってくればいいだけの話よ!」
もう言葉も出ない。無意味に口を開閉し、結局閉じることを選択した俺は、一人さっさと計画を立て始めた王女様から視線を逸らした。なんとなく嫌な予感がした。俺の本能が、これ以上関わるなと警鐘を鳴らしている。今視線を合わせたら、きっと何か面倒なことが起こるに違いない。
極力、エナーシャ様の方を見ないようにしながら、空気に紛れるよう努力した。だけど俺の努力も虚しく、ひと通り計画を立てたエナーシャ様は、天使の微笑みを浮かべて俺の名を呼んだ。
「アヴィスト様、協力よろしくお願いしますね?」
頭痛がしてきたのは気のせいではないはずだ。




