瓶覗
思い立ち午前3時、家を出ました。
今日は満月でした。空にぽっかりと空いた穴をみつめていると
ふとこの世というものが大きな瓶のような気がしてきました。
あの穴の先で誰かがきっと覗いていて、蓋を開けたり閉じたり
しているのでしょう。
交差点では信号機だけが眼を覚ましていました。
あちらが私に気づくと、急に現れた人間に驚いたのか赤く染まりました。
あたりは相変わらず車一台も音を立てないのでそのままわたることもできたのですが、
私は歩みを止めました。
誰もいない信号機に律義に従うのは実に偽善的なことです。
しかしいま、私は彼の存在意義を認める唯一の存在なのです。
黄ばんだ電灯はか弱くアスファルトを照らしていました。