イルカの家出2
さてはて、無断外泊に近い状態で出てきてしまった、僕ことイルカ。
まずはイタズラの基本、計画を練ることから始めようと思う。
面白い計画を立てるには、面白い考え方をする人を探し学ぶのが一番手っ取り早い。
というわけで今、僕は面白い人を探しに人間の国の方にきている。
近くの村や町で歩き回る。
え? 一日じゃ移動できないだろうって?
そこはイタズラ仲間の足の速い子に送迎してもらってるから問題ないよ。
面白い人は未だ見つからない。
僕としては、社会の歯車みたく働くただの人間には興味が持てない。もっと逸脱した行動をとる殺人犯みたいな思考の人はいないものか。
いや、物騒だな。
せめてマッドサイエンティストがいい。
僕がマッドサイエンティストを探しに街をうろついていると、何かワイワイやっていることに気がついた。
大広場の方だ、僕は何してんだと首を傾げつつ楽しそうなそっちにフラフラ行って見ることにした。
明るい洋風な街並みを忙しく人間たちが走っていく。
なんだかあの襲撃(偽)情報の時みたいだなんて思いつつも大勢がなだれ込む広場に進む。
……都会の大きい交差点みたいに規則正しく歩いていたらまだ良かったのに。
思いやりのかけらもない押せ押せな状態、品がないなと思わず呟く。
今は青く見せている僕の目も黒く淀んでいるのではなかろうか。だんだん機嫌が悪くなる。楽しそうだななんて思ったけどそうでもなかったし、ここはやめにして別のとこに行こうかな。
考えながらのんびり歩く。
すると、むぎゅう、っと何か踏んだ。
「う゛ぅ……」
「おっと失礼」
子供だった。
年は幾つだろう。少なくとも魔物だったコバくんよりは下。つまり、幼児といって、差し支えない。
少年…いや少女?
特徴的なのはそのとんがり耳。
これが……エルフ?
僕の知識の中のエルフっていうと、もっとこう神聖な美しいなんかすごい神に仕えていますって感じの種族だと思っていた。あ、今の僕すごい語彙量がない…いや、元からか。
この少女は、怪我にまみれていて泥だらけで、せっかくの美人顔が台無しだ。
服もボロボロ。布切れ体に巻いてますと言う感じで、アニメのスラム街の皆さんのような服の形すら保っていない。でも、痩せすぎで、せくすぃーな感じすらしない。
首、手首、足首に黒くて頑丈そうな鎖。
ほうほう、これが噂の奴隷かな?服と比べて鎖はお金がかかっていそうだね。
銀髪青目の少女は、あちこちを広場に向かう人間に踏まれつつ、なんとか立ち上がろうとする。
しかし、その度に別の輩に踏みつけられて結局地面と同化している。
ご主人様はどうしているのかと辺りを見渡すと、鎖が切れている。
頑張って逃げて、この有様らしい。
なんだか必死でかわいそうで。
何より人間でないことに好感度が上昇した。
どれくらいかというと、そこらの虫から、綺麗な蝶くらい。
新しい玩具を見つけたみたいにワクワクする。
マッドサイエンティストでも殺人鬼でもなさそうだが、面白そうだから拾ってみよーっと。
きっとクジラもこんな感じで僕を拾ったのかななんて考えつつ生き絶えかけた少女の腕を掴む。
ぐっと持ち上げプリンセスホールドをかます。
「やあ、君。意識ある?」
声をかけるが反応はない。
黒ずんだ痣が体を満たしていて痛そうを通り越してこれ生き物?と誰かに聴きたくなった。
僕はコバくんも昔は弱ってたよなぁなんて思い出した。
今ではあんなに元気だけど。
「あぁ…死んじゃった? いや、息はあるよなぁ」
仕方がない。宿にでも泊まって、様子見しつつ、イタズラ案を進めよう。
この子はどんな考え方を持っているのだろうかと少量の期待を寄せた目で、僕はその少女をみていた。
僕は知らない。
魔王城で、あいつマジでどこに行った、と呟くクジラや、お前が無闇に挑発するから人間(の皮を被った悪魔)が目覚めちゃったじゃないかと幹部連中から責められているシャチのことを。




