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僕、イルカ。
人生二度目ハードモードを実感しているただの子供だよ。
魔王の腹心に拾われて数年たつ。
僕は強くなった。
他の幹部たちが、なんだかんだ言って構い倒しにくるからだ。
魔王とか言っといてボスはいい人だ。
給料はちゃんとしてて育休も出すし、長期休暇もあるし、何より僕にお菓子をくれる。
手作りらしいクッキーを齧りながら、ボスや他の幹部が会議しているのを眺める。
今では僕も魔王軍の幹部の右腕だ。もちろん誰とは言わずともわかるだろうけど、僕の上司はマモン…クジラだ。
なぜクジラかって?
僕の前世のゲームで入っていたチームの人がみんな水に関するプレイヤー名だったからだ。
彼はクジラさんに似ているからクジラ。
クジラさんは世話焼きな人だった。僕もいっぱいお世話になった。今世のクジラさん…マモンもいい人だ。
いや人間じゃないけどね。
彼は魔族だった。というか本当に魔族いた。
僕、ビックリ。
僕は他の幹部たちも自分の元チームメイトの名前をあてて呼んでいる。
だからチームリーダーのような魔王はボスだ。
普通はリーダーって呼ぶんだけど、ボスだ。
まぁ、悪いことするのが仕事の魔王軍だ。
悪の組織みたいでいいと思う。
「なぁ、イルカー。この前の仕事についてなんだけど」
あ、クラゲが話しかけてきた。この人本名はサタンだ。憤怒の幹部だけど、怒ったところは見たことがない。クジラの親友らしい。
クラゲと仕事について話していると、それぞれ好きに話していた幹部たちがいつの間にか旅行について話していた。
主催はボスだ。
「今度二泊三日で温泉行こ」
「待って魔王。仕事残ってる」
アシカが止める。彼はボスの右腕だ。強いし賢いけど嫉妬深い。ちょっと面倒な人だけど、僕に勉強を教えてくれたのはあの人なので感謝している。
「まぁまぁ、いいじゃないか。ね?」
タツノオトシゴが仲裁する。ナンパが好きなおにーさん。実は僕より後に来た人だ。でも彼は幹部だ。
どういうことかというと、
幹部になれる人は七人いるのだがその補佐に二人の部下がつく、それが僕ともう一人、カルガモだ。
僕は他の幹部数名よりも先に補助についたから、微妙に先輩感のある部下だ。
いや、まあ部下といえば部下なんだけどね。
「まぁ、温泉については置いといて、早く会議を進めましょう」
カルガモは優しくて頼り甲斐のある正真正銘の部下仲間だ。
ちなみに彼女の本名はメランコリー。
やっぱり、いいずらいからカルガモでいいと思っている。
そして彼女はタツノオトシゴと悲しいくらいに仲が悪い。前世の彼らもそうだった。
ウニがみんなの様子を眺めている。彼女はおとなしい。その横でカメが何か書いている。あ、会議の記録かな。真面目な人だ。でも、僕は少し苦手である。いや、彼女が僕を嫌っているのかもしれない。
なんせ、僕は人間だからね。
最後に脳筋なタチウオがみんなをまとめた。
「みんな集中力切れたし、お茶にしようぜ!」
彼はアシカの弟だ。元気が有り余る感じの小学生のような行動をする彼だが、戦場に一度出れば実際に無双できそうなほど強い。
なんだかいっぱい人がいて覚えずらいけれど、要するにこうだ。
今、僕は魔王城で魔王と幹部や同僚たちとともにお茶をするような、立場になった。
職場が魔王城なので、当然、みんな魔族だ。
人間仲間を切実に求めている。
いや、だってね。魔族と人間の壁って少なからずあるんだよね。昔の貴族時代ほどじゃないけど、息苦しくてね。
まあみんな、お前ら本当に悪の組織かって聞きたくなるくらい優しいから、辛くはないよ。うん、楽しい。
「うわっなにこの酸っぱい紅茶?!」
あ、カルガモが何か叫んでる。
もう悪戯がバレたのかな?