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初めて投稿します。
不慣れですが読んでいってもらえると嬉しいです。
40話ほどで完結させる予定です。
R-15は保険です。
僕は転生したらしい。
よくわからないが現状そう考えるしかなかった。
今世の両親に連れられて隣町まで森の中を馬車で行く途中に事件は起きた。
いや事件といっていいのかわからない。事故とも考えられる。
今世の僕はちょっとお金のある貴族か何かだったらしく、なんだか目立つ服を着た成金みたいな母とどう見ても食べ過ぎな上に煙草か何かの匂いのする父が喋っていた。
記憶が戻っていなかった純粋な僕はどこに行くのかなとガタガタ揺れる馬車の中で考えていた。
性格がかなり捻くれている兄をてきとーに煽てながら。
僕の今世の兄はヒョロくて強がりでどこにいいところがあるのか褒めるところも思いつかない男だ。僕はそれに対して毎日めんどくさいながらも丁寧に接していた。
何故かって? 彼が兄だからだ。
貴族というのは気品が必要で綺麗事で塗り固めた性格をしていないと馬鹿にされてしまうらしい、とメイドのおねーさんに聞いた。
だから仕方なく僕は綺麗事で自分を塗り固めて息のしずらい生活をしていた。
メイドのおねーさんが美人だったから…ではない。
馬鹿にされたくないからである。
僕は真面目な性格なのだ。
突然、ガタンと音がした。
それとともに馬車が大きく揺れた。
何事かと…豚と成金が騒いで捻くれ者が怖がり始めた。
あ…心の声がつい。
まあ声に出していないし考えているだけなのだからいいだろう。
僕も何事だろうと馬車の中から外を見ると、
ゾンビの大群がいた。
うじゃうじゃしている腐ってボロボロの動く死体。
ちょっとしたホラーだった。
それをみた今世の家族は大騒ぎ。
でも気がつくのが遅かったらしく、逃げられそうにもない。
しかも従者のおじさんは死んでいる。
殺されてしまったらしい。
あ、中に一体入ってきた。
あ、捻くれ者が頭からボリボリ食べられている。
そこで僕は前世の存在を思い出した。
前世の僕は高校生でゾンビを倒したりPKをするようなVRゲームの廃人だった。無論、ゲームの中に入れるタイプのVRだ。コントローラーで動かすタイプのものではない。
いや、そういうゲームも好きだけど、僕のお気に入りのゲームはそれじゃなかった。
僕は楽しくゲームをして過ごす生活を続けていた。
もちろん勉強もしっかりしていたけれど、当然、頭は良くなかった。
そして今こうして冷静というか落ち着いているのは、
きっと前世の影響だ。
ゲーム廃人は咄嗟に現実とゲームをごちゃ混ぜにしてしまうらしい。
この状況、ゲーム内ではよくあったのだ。
とあるダンジョンにチームメンバーと向かう最中に、魔物の群れとエンカウント。
しかも強い。
僕らはそのとき同乗していた他チームをおとりにするという暴挙に出た。
そして生き残った。
その後そのチームから奇襲されて全滅に追い込んだこともある。
僕らは所詮そんな非道な人間だ。
なのでちょっと兄がゾンビに食われていようと両親が気絶していまにも喰われそうだろうと興味がない。
そもそも僕の家族は優しくて穏やかな母としっかり者で無口な父、元気の有り余る妹しかいない。
よし、今回も彼らがいるし逃げてしまおう。
幸いなことに僕は魔法が使える。
近所にいた老人に教えてもらって、天才だといわれるくらいだ。
きっと逃げ切れる。
まずは速度上昇の魔法を使う。これで足の速さはチーター並みだ。
ゾンビにぶち破られた窓から飛び出て外の群れと対面する。
わぉ、ゲームより迫力があるね。
でも今の身体じゃ勝機はない。逃げよう。
あぁそうだ。彼らにお礼を言わないと
「僕を自由にしてくれてありがとうございます、貴方たちのエサなら中にいますからゆっくりお食事を楽しんで下さい」
ゾンビは足が遅い。
さらにエサも置いてあるのだ。
僕は簡単にその場から離脱できた。
でも所詮僕はただの子供だったのだ。
森を抜ける前に、僕は誰かに見つかった。