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109. 城2階の戦い ー忠義の魔法騎士 1ー 

「来たか。我が王に仇なす者どもめ」


 魔王城2階。

 貴族達が集う会議室であった『星読みの間』と呼ばれる部屋で、レオナルドは侵入者に向かって剣を構えた。


 レオナルド・モンタギューは、旧アルバトロス王国の名家の次男坊として生まれた。

 かつてアルバトロスに侵略された亡国の王女が祖母であり、幼い頃から、人一倍、王家への忠誠心を叩き込まれて育った。

 祖母も父も王家を恐れていた。少しでも逆らえば「反逆の意思有り」と疑われ、一族郎党が首を曝されることになるからだ。

 とは言え、生まれも育ちもアルバトロスであり、第三王子の乳母を母に持つレオナルドにとって、王家に忠誠を尽くすことは極自然なことであった。

 それ故、愛する妹が第三王子の婚約者に決まった時は誰よりも喜び、魔術師として約束された未来を捨て、より近くで護衛が出来る「魔法騎士」になるべく一から剣術を学び始めたほどだった。

 元々、王子の遊び相手として剣術をかじっていたレオナルドは瞬く間に頭角を現し、第三王子が王となり、妹が正式に王妃となった頃には、魔法騎士団長として誰もが一目を置く存在となっていた。


 しかし、レオナルドが活躍すればするほど、快く思わない者達からのやっかみが酷くなり、レオナルドの一族は窮地に立たされることになった。

 王の計らいにより一族の危機は乗り越えることが出来たものの、ほとぼりが冷めるまでの間、余計な反感を買うことを避けるためレオナルドは遠方へ出兵することになった。

 レオナルドは信じていた。

 すぐに戻ってくると。

 戻ってきたら、真っ先に王の下へ馳せ参じ、この剣を振るうのだと。


 だが、謀反が起きた。


 第一王子と第二王子が手を組み、王の留守に王妃と王女を殺害したのだ。


 そうして、他国へ出兵中であった王は強い怒りと深い悲しみで魔族となり、一夜にしてアルバトロスを滅ぼした。

 遠く離れた戦場から転移で戻ったレオナルドは、奮戦するも力を使い果たし、母や部下達の目の前で魔族となった。


 レオナルドが護るべきアルバトロスは滅んだ。最愛の妹と、その子も死んだ。

 だが、忠誠を誓った王は生きている。

 たとえ、アルバトロスを滅ぼした張本人だとしても、レオナルドの王への忠誠心は変わらなかった。

 むしろレオナルド自身も魔族となったことで、いっそう王への忠義が増したとも言えよう。


 だからこそ、我が王と、王が『魔王』と認めた者を弱くするソフィアの存在が許せなかった。


 ソフィアが只のか弱い少女のまま、あるいは魔王軍の戦士として共に戦える存在であれば、レオナルドはソフィアを守っただろう。

 ……母や家族を殺すことも、なかったに違いない。


 だが、レオナルドは実行した。

 かつての親友と憧れの女性との子供ではあったが、ソフィアを殺したことに後悔はない。


 全ては、我が王のため。


 そして、これからも戦い続ける。

 ソフィアを、母を、殺した十字架を背負いながら。



「来たか。我が王に仇なす者どもめ」


 敵を前に、レオナルドの端正な顔に笑みはない。

 目の前に現れたのは、聖女ではなく、黒髪の精霊と数人のバンパイアだ。

 一切、手加減をするつもりはない。


「消えろ。王のために」


 忠義の魔法騎士は、床を蹴った。


ブックマーク、評価、感想等、いつもありがとうございます。


今回は短いお話でした。

最後の高位魔族、レオナルドさんの過去に触れてみました。

ああ、ついにレオさんのとこまで来たんだなーと、感慨深いです。


ところで!

昨日からローファンタジーで「教会の狩人」という別の連載を始めました。

江戸時代の山村での「ヴァンパイアと姫、ヴァンパイアを慕う少女とヴァンパイアハンター」のお話です。

10話くらいで終わる予定ですが、連載2本同時進行できるかの実験も兼ねてます。

サラ様達の方がメインなので、こちらが滞るようであれば、向こうはノロノロ更新にします!

ではでは。今後ともよろしくお願いいたします。

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