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ファンタジー

幸せと言うもの

作者: 花染

 ただ見ただけで、幸せたとか、不幸せとか決め付けるような世の中で、私は、自ら死を決めた。


 自殺。自分を殺すこと。その方法は、色々ある。そのなかで、私は、飛び下り自殺を選んだ。


 誰も悲しまない世界で生きてきた私に泣いてくれる人は、いるのだろうか?


 そもそも幸せとは、なんだろうか?そんなことを考えて、学校の屋上へと上がった。


「幸せになりたかった」


 目を閉じ体を傾けた。その瞬間に何故か、違和感を感じた。違和感。それは、綿のようなマシュマロのようなフワフワした食間が体全体に感じたからだ。目を開けると、金髪の綺麗な女性が私の前ににこやかに座っていた。


「こんにちわ」

「…こんにちわ?」


 誰だろ?ここは、何処だろ?


「はじめまして、ワタシは神様です。貴女に最後のチャンスをあげます。貴方がいた世界とは、別の世界を救う」

「あの意味が解らない…です」


 突然現れた彼女は、神と言って突然に言った一言。全く意味が解らない。


「んーじゃあーこう言ったら解るかな?

 貴女は、選ばれた勇者なのでーす!だから世界を救うのでーす!」

「お断りします」

「んな!じゃあーじゃあー!どう言ったら解る!教えろー!」


 やけくそになった彼女は、泣きそうな顔でそう言った。私は、少しだけ考え神と言う女性のところへ向かった。


「どうして私なのですか?どうやって決めたのですか?」

「え?どうしてって…んー…なんとなーくアミダで決めたから理由は、ないよ」


 どうやらこの世の神様は、とても適当みたいだけど、何となく決められた私は、ものすごく迷惑だ。何故なら私には、出来ない。世界に絶望して、死を選んだ私には、世界を救うことなんて、出来っこないのだ。解っている。何も出来ない無力な人間は、世界を救うどころか、何も出来ない役にたたない邪魔者にしかならない存在なのだ。


「あ!でもね、アミダだからって楽をした訳ではないよ。今日、この時、このタイミングに死んだ自殺、病死、事故死…等々のなかで、完璧にあの世界から消えた人から選んだんだよ」

「本当に私は、死んだの…ですか?」


 すると神様は、にっこり微笑みテレビを指した。テレビの映像には、血まみれで倒れている私がそこにいた。どうやら私は、本当に死んでいるみたいだ。


「実のところ自殺者って、死んだこと気づかずに永遠ループで、自殺をするよね。


 ほら、学校の屋上って、自殺に最適でしょ?だから学校って地縛霊がいたり悪霊がいたり…成仏が出来ない幽霊のたまり場なんだよ。神様的には、困った話だけどね」


 ポテチを食べながら神様は、そう言った。死んだことが気づかずに永遠ループ。確かに私は、気づかなかった。痛みも苦しみも無かったからだ。ふと、もう一度テレビを観ると、涙を流しているお父さんとお母さん、妹がいた。“どうして死んだの?”とか“先に死ぬなんて、親不孝ものだ”とか言っている親。初めて、親の涙を見た私は、思わず目をそらした。


「貴女にチャンスを与えるためにワタシは、此処にいるのでーす!チャンス。貴女にとって異世界。その世界の勇者になって世界を救うのでーす。要するに貴女に第2の人生を与えると言う意味なのでーす」

「もしそれを断ったらどうなるの…ですか?」

「簡単なこと。貴女は、未練がたらたらな地縛霊になるよ。それに自殺って天国じゃあなくて地獄。ワタシに会えるってものすごいレア中のレア。スペシャルレアなんだよ」


 私は、もうすでに死んでいる。知らない世界で生きることも出来る。そして、世界を救う勇者にもなれる。そんな、身が重い役割を私が出来る訳がない。身が重い。死んでいるのに心が重い。


 親も妹もワタシのために泣いているのに私は、愛されていたことに気が付かず、勝手に絶望して、勝手に死んだ。


「よし、解った。此処は、神様らしく良いものあげるのでーす」


 その言葉を聞いた私は、神様をみた。神様は、またにっこり微笑み白色の羽を私に渡した。


「これは、何でも願い事を叶えてくれる天使の羽。異世界へと行くと決めたらこれをあげるのでーす」


 この神様は、どれだけ異世界へと連れていきたいのか不思議な事だ。


「解りました」


 私は、そう答えた。すると神様は、私の答えを解っていたかのように微笑んだ。


 そして、私の手を握りこう言った。


「では、目覚めましょう」


 そう言った瞬間に神様は、眩しい光に包まれ私は、目を閉じた。眩しい光。その光は、絶対に忘れたらダメな光。


 次に目を開けると知らない天井と知らないベッドに寝ていることに気が付き辺りをみた。


「良かった!目が覚めたのですね」


 そう言ったのは、頭に角が生えた綺麗な女性。私は、少しだけ考え自分の着ている服を見た。その服は、綺麗なドレス。


「えっと…此処は…?」


 私は、そう答えた。すると女性は、私の手を引き扉を開いた。そこに見えたのは、荒野が広がる大地と青々な空。どうやら私は、塔にいるのか、人々は、小さく見えた。


「魔王の城です」

「魔王の城…ってえ?ええー!?」


 魔王の城。私は、少しだけ考えた。神様は、勇者となり世界を救うと言った。勇者。魔王を倒す者。そんな私が既に魔王の城いると言う訳が解らない。


「貴女は、突然光と共に陛下の膝元に現れたので、驚きました。害がないと思った王は、手厚くもてなせと命令を受けましたので、お洋服を着替えさせベッドに寝かせ医者に病気が無いかと検査もさせて貰いました。三日間眠りになっていたので、陛下も心配になっていた所に目覚めましたので、安心しました」


 手厚。ものすごく手厚くもてなされている。一様といっても良いけれど私は、勇者なのに害がないと言うのは、少しだけ悲しいけれど戦うと言うのは、生まれてこの方やったことがない。スポーツも格闘技も経験がない上に刃物と言うと料理の時に使う包丁、日常道具のハサミ、カッターのみ。


 そして、素早くも魔王様に出会ってしまう私の悪運は、どうやら自殺をしたと言う何だかの理由があるのだろう。取り敢えず私は、こう言わないと事は、進まない。


「こんな私のためにありがとうございます」

「いえ。魔王様のご命令ですから」

「その魔王様にもお礼の言葉を言いたいので、案内してもらいたいのですが…」

「はい」


 そう言って彼女は、案内を始めた。広い城ににては、静かだ。家臣とか少ないのか、それとも兵士が少ないのか解らないが、殺風景で空しいお城だと数分と歩いただけで、解る。


 何故ならすれ違うのは、大きな城をせっせと掃除をするメイドのみ。そして、目の前に歩いている彼女もまたメイドのようだ。どうやらここの魔王様は、女たらしのようだ。モテないだろうなと重いながらも一人だけきらびやかな変な格好をした男性が立っていた。


「お早う。アスカ」

「お早うございます。ジュジュ様」


 この輝いている男性は、ジュジュと言う事とこっちの女性の名前がアスカと言う事は、解った。ジュジュと言う男性が輝いていると言うわけではない。宝石を付けている訳でもない。彼は、鎧を身に纏って腰には、剣がある。どうやら彼は、魔王ではない。やっと会えた一人目の兵士だ。そして、男だ。


「その子は、例の子かい?」

「はい。只今、魔王様に面会になりたいと申し出たので、案内をしているところです」

「そうかい。名は、何と言うんだい?」


 そうだ。この物語が始まって、私は、自己紹介をしていない。と言うよりも元々は、必要が無かったから当たり前だけども。


「私はすずらんです」

「“スズラン”いい名前だね」

「いいえ。私は、少なくとも気に入っていません」


 鈴蘭。その名前の由来は、単なる両親共に好きな花だからだ。花言葉は“再び幸せが訪れる”私には、勿体無い花言葉だ。私には、幸福も幸運も感じたことがない。


 あの世界が嫌いで、全てが嫌いで、皆が嫌いで、憎くて、羨ましかった。そんな世界から逃げてきた。


「そうかい。なら何時か気に入る日がくると良いね」

「…はい」

「あの…そろそろ」


 アスカさんは、申し訳なさそうな顔で、私たちに合図をした。そうだ。私は、魔王に会いに来たのだ。


「これは、失礼。じゃあまた会おう。アスカ、スズラン」


 そう言って、ジュジュさんは、笑顔で立ち去った。


 しかし、良いのだろうか?これをRPGゲームの王道だとすれば、レベル1の状態で、しかも途中イベントも仲間も対魔の剣も無視して最ボスに挑む愚かな勇者になるのでは?そんな最弱な勇者は、ある意味“伝説”になるのでは?そんなことを考えながら私は、大きな扉を見た。大きな扉。大きすぎる扉を何の為に作ったのか解らないが、人が一人入れる扉が開きアスカさんは、其処へ入っていった。


「陛下。例の方が目覚めましたのしで、面会になりたいと申し出たので、連れて参りました」

「そうか。通せ」


 若い声だ。もっと野太い声かと思ったけれど、普通の優しそうな声だ。しかし声だけで、判別はしたらダメだ。


 私は、部屋に入ると、堂々とした立派な玉座に座る黒髪の黒い服を着た私ぐらいの青年が、座っていた。一見すると真っ黒だが、瞳だけ青く綺麗だ。しかし、どこか悲しげで、寂しげで、何処かで見たことがある瞳だ。


「ようやく目覚めたか」


 魔王は、立ち上がり私を見下すように見つめ微笑んだ。さっき見た神様とジュジュさんとは、違う暖かい微笑みではなく、冷たく冷めた微笑み。なにか解りきって、諦めた微笑みだ。



「“勇者様”俺を殺しに来たんだろ?さぁ、俺を殺せよ」


 あ…この人は、始めから解っていたのだろう。私が勇者として魔王を殺すために此処にいることを解っていた。そして、彼は、抵抗も私を殺す事もせず待っていた。


 待っていた。殺されるのを待っていた。


「どうして、そう思うのですか?」

「“天使の羽”神から貰ったんだろ?俺は、それをよく知っている」


 指を指した先にあるのは、私の胸に飾られた白色の羽。神から貰った何でも願い事を叶えてくれる天使の羽。なぜ彼は、その事を知っているのだろ?


 私が言う暇もなく納得したのか、玉座に座り足を組んだ。


「で?どうするんだ?俺を殺しても平和には、ならないのは、外を見たならよく解る事だ。けれど、俺が魔王である以上お前が俺を殺さないと物語は、終わらない。そして、何でも願い事を叶えてくれる物を何でも願い事を叶えてくれると言いながら願い事が決まっている。


 お前は、神様に騙されたんだよ。余所の世界を救えと言われたから来た正義ぶっているお前らが俺は、気に入らない。気に入らない。嫌いだ。大嫌いだ」

「…私は…正義ぶってない…です。私は、神様に無理矢理と言っても良いほど強引に勇者なったわけで、好きでセカンドライフを過ごすことを選んだわけじゃない…っ!」


 生きることも諦めた私は、神様にアミダで決まった。正直に言うと嫌だけれど、断れなかった。断る隙がなかった。私は、魔王の目を見た。あの目。あの瞳をよく知っている。


「私は、勇敢でも勇気がある訳でもない。逞しくもない。優秀でもない。有能でもない。何にも出来ないし役にたたない。存在するだけで、目障りだと言われ続けていた私が勇者とは、程遠い存在なのに私には、身が重い役目なのに神様にあんなにも頼まれたら断れなかった」


 その言葉を聞いて魔王は、再び立ち上がり私の方へ歩いてきた。私の顔を悲しげな目で見た。もしかしたら悲しげな目ではなく愚かな勇者に哀れみの目で、見ていたのかもそれない。


「でも私は、貴方の顔を見たら何も出来ない。元々何も出来ないけれど、そんな目で、見られたら私は、胸が苦しくなる」

「どうしてだ?」


 どうして?その答えは、私は、知っている。私も彼を見てはっきりこう言った。


「貴方は、私に良く似ているから」


 良く似ている。彼は、死にたがっている。世界に絶望して、諦めて、全部嫌いで、憎くて、消えたくて、死ねば皆が幸せになると思っている。悲しむ人なんて居ないと思っている。


 神様は、こう言った“世界を救え”と


 世界を救うと言うのは、魔王を殺せではないとようやく解った。それは、多分きっと私にか出来なくて、私にか解らない事だ。きっと多分“彼を救う事によって世界は、救われる”だろ。


「だから、貴方は、間違わないで欲しい。私と同じ選択をしないで欲しい」


 自殺と言う。間違った選択。間違った考え。誰も悲しむ人が居ないわけがないのを死んで私は、気付いた。泣いてくれる家族がいる。



 私は、願った。天使の羽で、一つだけ願った。


「私は、願う。彼が、幸せになって欲しい」


 私は、願った。世界の平和よりも世界に自然の恵よりも彼の幸せを願った。私が叶わなかった願いを叶えたかった。それが、私の役目だとそう思ったから


 こうして“魔王”と言われた彼は、ただの“国王”となり


 私が自殺をしてやっと解った幸せだと気づいたことにより一人の人間を救う事によって、世界も救った物語。

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