第五話、「理想郷へ」
ども、るどです。
やっと、この物語の本筋が書けました。まだまだ、途中ですがお楽しみ下さい。
それでは、始まります。第五話、「理想郷へ」 はじまり、はじまりー。
《三国 真》
寝不足だ。完全に寝不足だ。
昨日は一晩中、あのゲームをプレイしていた。
単純に面白かった。面白いが故に、止められなかった。
あの店員には良い物を紹介して貰った。学校帰りに「世界」に寄って、礼を言わないとな。
寝ぼけながら、自転車を漕ぐ。途中、ポールにぶつかりそうになり、危なかったが、無事に登校する事が出来た。
ここまで寝不足だと、流石に授業中に寝てしまうかもしれない。
教室に着き、いつものように席に着く。と、同時に死んだ様に突っ伏せる。
ホームルームが始まり、担任の教師が連絡事を言う。
「今日は、内のクラスに転校生が来ている。紹介するから、皆、注目するように」
転校生なんて、珍しい。本当にいるんだな。
寝ぼけ眼で視界が霞むが、どうやら男子生徒の様だ。
自己紹介で名前の紹介もあった筈だが、聞き取れなかった。
そして、そこから夢の中に入ったので、先の記憶は無い。
長い夢から覚めた。
周りを見る限り、たった今ホームルームが終わり、放課後になったみたいだ。
途中、移動教室等で起きたが、そこからまた、夢の中に入っていた。
自分でも、ここまで寝てしまった事に驚いている。
でも、過ぎた事は仕方ない。早く「世界」に行こう。
昨日に続いて、今日も「世界」に来た。
相変わらず、切れかけの電灯を換えておらず、薄暗い、不気味な店内。
「おぉ、三国か。昨日はすまんかったな」
店に入ると、人相の悪い、大男が俺を迎える。
大男の正体はこの店の店長だ。
俺も、身体つきは大きい方だが、それを一回り上回る巨体。初めて会った時は、この迫力に圧倒された。
「いえいえ。それより、バイトの人はいないんですか?」
「あいつなら、此処にはいない」
どうやら、あの店員はいつも居る訳では無い様だ。
「そうですか。お礼を言いたかったんですけど……」
「あいつから、話は聞いてるよ。悪かったな、内の者が余計な事をして」
「あの時は、びっくりしました。でも、良い物と出会えたので、感謝してます」
「そうか。そう言って貰えると、こちらも助かるよ」
「そうそう、お代がまだでした。幾らですか?」
昨日は、強引に押し付けられた後、直ぐに追い出されたんだ。
「いや、いいよ。それはあいつがお前に渡した物だ。それに元々、お前に渡す積もりだった物だ。だから、貰っておいてくれ」
「そうですか。そう言う事なら、有難く貰っておきます」
「一応、言っておくが、あのゲームは俺が作った物だ」
「店長が作ったんですか? 凄いですね。とても、面白かったです。今迄で一番」
あのクオリティのゲームが作れるのに、どうして売り出さないんだろうか。この人の考えている事は、よくわからない。
「そうか。最近作ったゲーム何だが、喜んで貰えて良かったよ」
「それにしても、ヒロインの物部奈子ちゃん。あの子、凄く可愛いですね。俺、奈子ちゃんの為なら何でも出来ますよ」
奈子ちゃんは可愛かった。でも、それは画面の中の話。現実に、奈子ちゃんは存在しない。
「後、不登校の生徒が居ましたけど、どの話にも全く絡んできませんでした。あれは、ミスですか?」
一人居たんだ。物語に全く関わりの無い人間が。
「あー、あれか。あれは今の段階では関係無いな。でも、時期にわかるかもな」
店長は俺の問いに対して、言葉を濁した様な、知ってはいるが敢えて教えてくれない様だ。
しかし、おかしい。全ての物語で確かに、あの不登校の生徒は出てこなかった。ただの一度も。それを時期にわかるとは、どうゆう事なんだ?
「そんなに気にする必要は無いさ。それにしても、よく短期間で全部プレイしたな」
「いや、本当に面白かったですから。でも、どうして俺は、三次元(現実)で生まれたんでしょう? 二次元(理想)で生まれていたなら、奈子ちゃんを守ってあげられるのに」
「おいおい、そんな事言うなよ。この世界にも捨てたものじゃないよ。お前が知らないだけで、素敵な事が沢山あるよ」
「要らないですよ。二次元の世界があるのなら、それだけで満足です。三次元、現実世界がどうであろうと、関係無いです」
この世界に価値は無い。こんな変わらない世界に何の価値があるんだ?
「じゃあさ、お前の人生。お前の物語は、お前が主人公なのか?」
「それは……」
店長の問いに思わず、口篭る。
俺の人生。俺の物語は、俺が主人公なのか?
「それとも、誰かの物語のエキストラか?」
店長が続けて、俺に問う。
俺の人生。俺の物語は、他の誰かの物なのか? どうなんだ?
これだけは言える。俺は主人公じゃない。物語の主人公が何の変哲も無い、繰り返しの日々を送る訳が無い。
価値が無いのはこの世界じゃない。この俺自身か?
「そんな深く考えんなよ。悪かったな、難しい事訊いて」
店長が笑ってみせる。
「じゃあ、話を変えよう。三国、二次元の世界、ゲームの世界に行けるとしたら、行きたいか?」
「それは行きたいです。行きたいに決まってます! でも、そんな事絶対に無理ですよ」
さっきの問いとは全く違う問いに困惑する。
行けるものなら、とっくに行ってる筈だ。そんな事訊いて、店長はどうする積もりだ?
「そうか。やっぱり、行きたいか。よし、連れて行ってやるよ」
「店長? 何言ってるんですか? 意味わからないんですけど」
俺の頭上には、疑問符が浮かび上がる。
「だから、ゲームの世界に連れて行ってやるって、言ってんの。一回でわかれ」
「わかる訳無いですよ。店長、頭おかしくなったのかと、思いましたよ」
「そうか。お前は知らないだろうが、俺、こう見えても神様なんだよ。人、一人、別世界に転送するくらい造作も無いわ!」
「店長? 本当に何言ってるんですか? 大丈夫ですか? その顔で、不思議ちゃんって、大笑いですよ」
駄目だ、笑いを堪えられない。店長にこんな一面があったとは。
「黙れ、いいからどっちだ? 行きたいのか、行きたくないのか?」
「い、行きたいです!」
店長の圧力を感じながら、ビビりつつ答える。
「素直に、そう言えば良いんだよ。じゃあ、付いて来い」
言われるがまま、バックヤードの方に連れられる。
そこは照明に電球が一つだけで売り場よりも、更に薄暗く、入口から見て左手に椅子が置かれており、部屋の中央には黒い布で覆われた何かがあった。それ以外は何も無い、殺風景な部屋だ。
「そこの椅子に座ってくれ」
店長(神様)の指示で椅子に座る。
「転送する前に幾つか訊いておく。一度、向こうに行ってしまえば、こちらの世界には戻って来れないかもしれない。それでも、構わないか?」
この世界に未練は無い。ずっと、求めてきた事が叶うのなら、そんな事は構わない。
「はい、大丈夫です」
「そうか、わかった。次に、向こうの世界に転送出来るのは、お前の精神のみだが構わないか?」
「どういうととです?」
「向こうの世界の人間にお前の精神を転送する。よって、向こうの世界では三国真としては、存在出来ないが構わないか?」
「大丈夫です」
この世界で俺は主人公じゃない。だから、俺はあの世界で主人公になる。そして、奈子ちゃんと……。
「そうか、わかった。では、転送してやる。この薬を飲め。目が覚めたら、お前の求めた世界だ」
睡眠薬の様な物と水を渡される。
「これを飲んだら、「Another Story」の世界へ行ける」
「そうだ。お前には昔から贔屓にして貰ったが、向こうでも元気にやれよ」
「はい、店長もお元気で」
薬を一気に飲み干す。
すると、意識が段々途絶えてきた。
――賽は投げられた――
もう、元には戻れない。
俺はあの世界で主人公になるんだ。
恐らく、今迄書いてきた中で一番おかしい話だと思います。すいません、実力不足です。
それでも、読んで頂いて有難う御座います。感謝、感謝です。
私自身は面白い物語になると思っています。しかし、明らかに実力不足です。皆様、どうか最後までお付き合い下さい。絶対に、面白い物に仕上げて見せます。
次話の話を少々、新たな登場人物が登場する予定です。
後、連載の頻度の話ですが、これからは週一連載に出来ればと思います。土日のどちらかに更新予定です。
出来ない時は、本当にすいません。出来る限り早く更新出来るように勤めます。
以上、るどでした。