07 筆記試験~座学は苦手です~
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さて、そんなこんなで試験一日目が終了し、武器の回収と防具の注文、それとまだまだ不確定ですがパーティメンバーの仮登録も完了いたしました。
まあ、仮とはいえ、初日に友軍誤射で試験を辞退していたレヌエット嬢を、なんとかパーティに引き込めたことで二日目には余裕が生まれ、今現在は彼女とともに静かな教室にカリカリと鉛の筆を躍らせている最中だったりします。
ええ。アレです。
みなさん、お好きでしょうか?
俺は苦手ですね。
ええ、そうです。テストでございますよ、テスト。
おっと、いけない。集中集中。
Q.人一人の所有できる武具や能力の数の基本数と、その理由を答えよ。
えーと。
A.基本数/二つまで
理由/武具や能力は情報状態のそれを手の甲に入れる形で収納されるため、基本的に腕の数までしか所有できない。
ただし、武具に関しては物質化させた状態で持ち主とのリンクを切ると、そのまま物質化状態で確定されるため新たに別の武具、もしくは能力を所有することができる。
……だったかな? 逆に物質化状態から情報状態に戻して手の甲に封印するのが『リセット』だったよな。
これはわざわざ書く必要なし、と。次。
Q.基本として認識されている探索者の職業を最低九つ答えよ。
九つか。えー……。
A.・格闘家 ・剣使い ・槍使い
・銃使い ・弓使い ・魔術師
・治療術士 ・錬金術師 ・魔獣使い
……っと。索敵士や地図作成士はサポート職だったかな?
あ。例外書き忘れた。自分のことだっつのに。
(注:『基本』ではないので書いていたら当然バツ)
Q.主に魔法系能力者によって使用される魔術属性、四系十二属の内、九つまでを答えよ。
んげ。七つまでなら覚えてんだけどな。
A.・暗闇 ・旋風 ・炎熱 ・迅雷 ・光波
・大地 ・水流 ・樹木 ・生命
……四大エレメントとか六大・七大属性とかで、火・水・地・風・雷・光・闇はパッと出るんだよな……。
陰系の闇と風に、陽系の火・雷・光。物系から地・水・木。最後に理系の命、と。
てかあとの三つ、なんだったっけ? まあ、後でいいか。
Q.迷宮内にて活動するモンスターたちは大別して三種類に分類される。
その三種類の名称と、それぞれの特性を答えよ。
……また厄介な問題が来たな。
A.・通常モンスター
迷宮内にて大量に出てくる敵性モンスター。
条件を満たすことで使い魔にすることができる。
・主モンスター
迷宮最下層にて宝物庫を護っている敵性モンスター。
魔法の威力がやたらと高いのが特徴。
・友好モンスター
上記二種とは違い、最初から探索者に協力的なモンスター。
挑戦することができるがその迷宮のボスモンスターより強い。
出逢えるかどうかは運。
……ってな感じだったかな?
学園迷宮のは英雄骸骨と液体掃除生物だったっけ? うっかり挑まないように注意しないとな。
Q.迷宮内にて倒したモンスター、もしくは死亡した探索者に関し、その処理方法と目されているものを答えよ。
……またイヤな問題が来たな。
A.基本的に魔力の喪失によって肉体の分解および回収が行われ、人間、モンスターを問わず装備品・アイテム以外が残ることはない。
ただし、遺体の回収者が、その維持に必要なマナを死亡者の代わりに支払うことで、魔物素材の迷宮外回収や遺体そのものの回収もまた可能である。
……あんまり書きたいことでもないし、このぐらいでいいか。
Q.迷宮内における財宝獲得のプロセスを答えよ。
……これはさすがに基本すぎだな。知らずになにしに迷宮に入るってのか。
A.迷宮内にて発見した、トレジャーボックスの宝玉にマナを注ぐことにより、そのボックスにあらかじめ刻まれている財宝の種類からランダムでひとつが精製され、回収することができる。
最深部の宝物庫では、このマナ注入を中央にあるクリスタルに触れて行うことにより、周囲のトレジャーボックスにマナの消費量に応じて財宝があふれる仕組みとなっている。
……この理由で、マナ保有量の多いヤツって優遇されんだよなー。あー、うらやましぃ。
Q.スキルの習熟と未習熟の違いについて説明せよ。
うぁ、やば、うろ覚えだ、コレ。……ん~~。
A.未習熟状態は、主に魔法技能や戦技技能を自分の力だけでは発動できない状態を指し、これを完全に習熟するまでは、常に所有できる基本数を未習熟の情報の数だけ専有し続ける。(不正解)
(正)未習熟状態ではスキルの発動確率が極端に低下し、発生したとしてもその命中率及び安定度は極めて低くなる。能力向上系の紙片の有無により発生確率は上昇するが、命中率及び安定度は使用者の技量に比例することとなるため、その結果に大差はない。
習熟状態ではスキルの発動確率も安定し、命中率及び安定度もそれなりのものとなるが、さらに研鑽を続けることでその技能を向上させることができる。
……ゼルはたしか、大剣とその戦技スキルで二つとも使い切ってるんだったっけ。なんかいいのが手に入ったら、大剣の方を固定化して鞘に入れときゃいいとかなんとか言ってたっけな……。
………………。
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「ふぃー、終わった終わったー」
「……ん。……んー……」
この試験独特の雰囲気がなんとも言えず肩がこるんだよなぁ。
文章からマップを作成する問題は、距離感間違えてかなーり壊滅的だったが、まあ、他はなんとかなるんじゃないかなぁ……、なるといいなぁ。
つーか、保有マナからの探索可能時間の割り出し計算とか、さすがに無理だって。
「……後は実技かー」
……と、そんな試験が終わった後の開放感に身を委ねて羽を伸ばしつつ、とりあえず一緒に追試を受けてくれていたレヌエットさんのところへと足を向けようとした、その時!
「ちょぉ~っとお話があるんだけどなぁ。リーぃちゃぁ~~~~~ん♪」
実に理不尽にエンカウントした力技系の悪魔。
試験の終わりに気を抜いた俺の首根っこをつかみ、お部屋の隅までズルズルと強制的に連行していく暴力保険医ティル姉ぇさま。
そうして俺は、昨日一日のVS.レヌエットさん鬼ごっこ騒ぎの追及を彼女の手による「肉体言語」によって根掘り葉掘り聞き出され、レヌエット嬢の前だと言うのにさんざんボコにされて、心神喪失によりいつも通りベッドの上でその後一日を棒に振る羽目に陥ったのだった。
ちくしょう。明日はどっちだ!?
……ちなみに以下の魔法関係のデータは、試験が終わった後に念のため再確認しておきました。現在この世界で活用されている属性は数にして十二項。
第一種・陽系
・光波(light)・炎熱(fire)・迅雷(thunder)属性
主に電撃戦や正面突破を得意とする高エネルギー属性。
それぞれ同種の別属性に流動・転化することが可能な特性を持っており、光を極めることで火を発生させるなどの「エネルギー転換」が使役可能となっているところが最大の特徴である。
第二種・陰系
・暗闇(dark)・旋風(wind)・冷気(cold)属性
主に奇襲や闇討ちに用いることで高い成果を発揮する非物質属性。
不可視の攻撃や特殊な加速移動、遠距離精密射撃などの特性を持つ。
例として水素を用いず物質属性には適応しない純粋な「冷気」に関しては、マイナス方向のエネルギー属性として分類されている。
第三種・物系
・大地(earth)・水流(water)・樹木(wood)属性
主に圧倒的物量で敵対勢力を押し潰すことを得意とする可触の物質属性。
文字通り「さわる」ことが可能な属性カテゴリであり、その場に対応するなにかを作成することにより、移動範囲拡張や危機回避に高い能力を発揮する。
ただし、ある程度の構造知識を取得しなければ脆い建造物しか造れないという難を併せ持っている。
第四種・理系
・時関(time)・生命(life)・空間(space)属性
主に世界の理に干渉する希少属性。
全存在に対して「平等」に作用するという特性を持ち、世界の条理を使役するためかなりのレア属性となっている。
以上四系統の上位属性を総じて『陰陽物理の四系十二属』と呼称する。
以下は追記。
合成例
・水+冷=氷雪 ・風+雷=豪雷
・火+地=溶岩 ・火+樹=森禍
・冷+光=極光 ・冷+地=凍土
・冷+樹=凍森など
風の属性と空間の属性が似て非なる別物であるのと同様に、水の属性と冷気、もしくは命と樹木の属性もまた事象的に連接した似て非なる別物である。
理解しやすい例がやはり水で、陽系炎熱属性、つまりプラスと評されるエネルギーと組み合わせると「水蒸気」へと変化し、逆に陰系冷気属性、つまりマイナスと評されるエネルギーと組み合わせることで「氷」へと変化する。
これら属性の研究と編纂ははるか昔から継続して行われており、光と闇の「二極」や、火・風・水・土の「四大エレメント」、木・火・土・金・水の「五行思想」などが特に有名どころとなっている。
その後、二極に四大エレメントを統合した「六大属性」やこれに雷を加えた「七属性」などが派生し、永く定着されることとなったが、近代とある悪魔族の研究者が各種属性の根源や類似性を考察し再編纂。
「四系十二属」としてこの世界に定着したが、この研究者は後に第十三番目の属性、理無視の「夢幻属性」が存在する可能性を示唆。
現在も研究が進められており、未だ完成には至っていないとの見解を示している。
+(Item Get!)+
・重要アイテム『のっぺら仮面』