16 新参二名~コグマとキツネさん~
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「……と、いうわけで今日から準パーティメンバーとして顔を出していただけることになりました、熊系獣人種のパルテ・S・フォレストさんと、同じく狐系獣人種のフェルシャ・ヘッケルトさんです……はい、拍手ー」
「どもどもー♪」「……よろしく。」
お気楽に片腕を斜め前方に突き出してのご挨拶をかます、身長百四十ぐらいのコグマな女子の方が、熊系獣人種-熊人族のパルテ・S・フォレストさん。
ロッテちゃん以上ゼル以下の遺伝子指数なのか、腕と脚の肘、膝関節までが毛皮に覆われている。 茶色い髪のボブカットとクマな丸耳で、ちょっとだけ短足さん。着ているのは学園支給の制服にレザー系装備。
レニさんがシャツ一枚の上に胸当てを装備しているの比べ、こちらはシャツの上に同じく魔物素材のベストを羽織り、その上に胸当てをしている。
一方、そのとなりは身長百六十ほどの雪国系キツネさんな女子。
こちらは犬系獣人種-狐人族のフェルシャ・ヘッケルトさん。
銀ぎつねよろしく、な、白銀の髪をサイドテールにまとめ、てっぺんにはミミ。
首から下の全身を白いマントで覆い隠して大っぴらに自分の戦闘スタイルを見せびらかさずにいるようだが、コグマのパルさんに訊いてみたところ、なんと中身は二刀流の盗賊らしい。
そんな二人にぱちぱちぱちと乾いた手拍子を鳴らしている俺だが、実際のところ、俺の頭はゼルのヘッドロックによってギリギリと締められ、のど元にはロッテちゃんのメス。締めくくりに背後でレニさんはオロオロしていたりする。
「『と、いうわけで』じゃねっつの! キッチリ説明しやがれ!」
「バカなんですか? バカなんですね? 説明責任はしっかり果たしていただかないと大変困るんですよね」
「……あの、その……これ、私、どうしたら……」
うむ。めんどいからってテキトーぶっこいてると、うっかり治療が必要な身体になっちゃいそうだな。……ごふ。
(回想たーん)
あれは今から十四年前――という冗談はさておき(語り出しだけシリアスにやって殺されかけました)、まあ、昨日のことだ。
購買の隅に居座って仮面のカタログをピラピラと捲りながら、不思議と興味を惹かれた『邪神の仮面』とかいうアイテム(この辺の説明で五人全員が一斉にズザザッと距離を取った。大丈夫だってまだ買ってないから)とかをいろいろ物色していた時だった。
「すいませーん。依頼お願いしまーす」
と、そんな感じでギルドの方にお客さんがいらっしゃったわけだが、それが彼女たちだったわけだな。
「鎖鎌がなかなか手に入らなくってー」
とか、確かそんな感じだったっけ?
鎖鎌ならたしかザックの奥にあったはずだよなー、とゴソゴソ漁って紙片状態で保存してた鎖鎌を引っ張り出したわけですよ。
で、ちょろっと顔出してみたら、ちっこいクマさん(この辺りで拳を一発ごちそうになりました――ぐふっ)……と、白マントのキツネさんがそこに居たわけだ。
「鎖鎌ならあるぞ?」
……で、つい話しかけた。……その結果、
「鎖鎌っ! ちょうだい! ちょうだいっ!!」
「――ちょ、おい、待てってコラ!」
と、まあ、そんな感じで体当たりくらって押し倒された。
……地味にショックだったな。こんなチビ相手にパワー負けたぁ……。
俺にだって男のプライドのひとつやふたつはあるってなもんよ。まあ、ティル姉ぇは例外だが。ぶっちゃけ人外だありゃ。(この発言で死亡フラグ入りました。ロッテ様から伝言していただけるそうです。――ヤメテ!)
で、暴走したクマ公に襲われているところに、ようやく連れが首根っこ引っつかんでネコ掴みにブラ下げてくれてなー。
「……落ち着く。」
「……はーい」
んで、メルグリッタさん。購買のおば(――ゾクゥ)……お、おねーさんな。
メルグリッタさんに鎖鎌の店売り価格を聞かせてもらって、そっから取引内容の交渉に入ったわけだ。
結論としては相方のキツネさんの方も刀を欲しがってたらしくて、「脇差といっしょに手に入れた」ってとこに食いついてきてな。結局、鎖鎌と脇差の両方を進呈する代わりに準パーティメンバー扱いで、時間に空きがあったら顔を出してもらえればいいか、とそんな感じになったわけなのだ。
……ですので、そろそろ刃物をしまっていただけると大変嬉しいのですが……、ダメですかそうですか。わかりましたもうしばらくガマンします。
「改めまして! 2nd Bクラス、パルテ・S・フォレストでっす! 鎖鎌を譲ってもらう前は前衛で斧を使ってました! どうぞよろしくお願いします!」
「……2nd Bクラス、フェルシャ・ヘッケルト。……斥候役。よろしく。」
重戦士と盗賊のコンビが片方は元気いっぱいに、片方は要点だけ掻い摘んでのご挨拶。
それに対してまず真っ先に応じたのは、やはり安定のリーゼロッテ嬢。俺の首に突きつけていたメスを手の中で回転させてポーチに収め、
「2nd Aクラスのリーゼロッテと申します。この度はわたしの兄弟子が大変ご迷惑をおかけしましたようで……」
……なにはともあれ謝罪から会話に入った。
「いやいやいや、お世話したの俺の方だからね、ロッテちゃん!」
「いやー、モテル女はつらいよねー、フェル?」「……ん。」
てか、なにを勘違いしていらっしゃいますか、この娘さんたちは!?
「オイコラそこぉ! ナンパした覚えなんざまったくねぇぞ! 大体俺はお前やティル姉ぇみたいな幼児――ぐほぁ!?」
唐突にどこからともなく飛んで来たパイプ椅子によって、背中を強かに打ち付けられて倒れ付す俺。
「……なにか不手際がございましたら遠慮なくわたしどものお師匠さま、当学園保険医のティルトリーテ・リゼッタ講師にご一報くだされば、このようにしかるべき対処がなされるかと思いますので……」
「……いや、いや、いや、いや、それ、俺が死ぬからね、ロッテちゃん……」
一方、事のついでとばかりに自己紹介にかこつけて、見事なまでに自分に火の粉が飛んでこないように先手を打つ、とってもステキなロッテ嬢でございました!
ちなみにこの状況でだれも騒ぎ立てずに普通に接してるのが、なんとも悲しすぎるところだよな。やっぱ日頃の行いって大事なんだわ。この二人とはほとんど初対面のはずなのに、もはや「大丈夫?」の一言さえありゃしねぇの。
「それと、そちらの狼人族の方が……、」
「2nd Aのゼルキュールだ。ここじゃゼルで通ってる。ま、よろしく頼まァ」
紹介を受けたゼルの挨拶にフェルシャさんが「……よろしく。」と返しつつ、パルさんの方はというと、現在絶賛死亡中の俺のわき腹をしゃがみ込んで突きながら、
(オオカミとひつじが一緒くたって、いいの? このパーティ?)
などと訊いてくるが……、んなもん俺が知るか! てかこのひつじ、ナニゲにメチャクチャ強ぇんだぞ? 最近は気配察知を格闘時に応用するようティル姉ぇに無茶振りされたせいか、護身術の成長速度が半端ないんだ。正直なところ、うちのオオカミなんか一捻りにされる可能性、大だ。
「最後にこちら、後衛銃使いのレヌエットさんです」
「……あ、あの。2nd Cクラスの、レヌエット・フルーテです。よ、よろしく、お願いします……」
「よろしくー♪」「……よろしく。」
まあ、これで一応全員の顔見せは終わったわけだ。
んー。元近接に斥候役かー。
フォーメーション、どーすっかなー。
Name
2nd-B パルテ・S・フォレスト 熊系獣人種-熊人族
Job
Lv9 斧使い(No.-th)
Talent
初級重斧術/C↑ 初級格闘術/D 初級投擲術/E
怪力/A
Possession
『鎖鎌』『初級重斧術』
Skill
超くまパンチLv2
Name
2nd-B フェルシャ・ヘッケルト 犬系獣人種-狐人族
Job
Lv8 盗賊(No.-th)
Talent
初級短剣術/C↑ 初級投擲術/D 初級盗技術/D↑
初級操双術/E 軽業/C 俊足/C
野生の勘/C 嗅覚察知/C
Possession
『初級短剣術』『初級盗技術』
Skill
剥ぎ取り攻撃Lv2 鍵開けLv2
忍び足Lv3 盗賊の鼻Lv1