第5話 乙女と国王
誤字脱字・文章が下手・稚拙等至らない点ばかりだとは思いますが…、どうぞ宜しく御願いします。
「フィディア・アーデル。お前一体、何をした?!」
「さぁ?何をしたと聞かれましても、さっぱり」
私は全く訳が分からないんです私、的な表情を心掛けながら、国王の眉間に視線を固定させ、小首を傾げた。
一体全体何なのだ?突然、家に王宮からの遣いだと言う男達が押し掛けてきて、問答無用で王宮に連行されたかと思ったら、謁見室に放り込まれて、般若のような顔をした国王陛下に詰問されるだなんて。
このような事をされる覚えは………ふぅむ…。全くないと言いたい所だが…ある。それも約2週間前に…。こう某、獣と人の2つの姿を持つ一族喧嘩を売るような事をしでかしたような…してないような。
でもだ、もしかしたらあの事ではないかもしれないし…。
「何をしらばっくれているのだ、盗人の娘!!」
いや、だから…事情を説明して貰わないと、答えようがない。
「そうは言われても、心当たりが全く無いのです。どうか説明しては頂けないでしょうか?」
そう大袈裟な身振り交じりで懇願すると、国王は怪訝そうな顔でふんと大きく鼻を鳴らした。
うぅむ。本当に感じが悪いな。
本当に本当にあのいつも優しくて常に穏やかな微笑みを絶やさなかった父上の、血を分けた弟か?
と言うか国王、国王の癖に小さいな。…盗人の娘って。国王の最愛の兄だった父上を、母上が駆け落ち同然で自分の領地に連れ去った事を、まだ根に持っているのか。この執念深いドブラコン王め。いいかげん、父上の事はきっぱりさっぱりと諦めろ。
「本当に知らないのだな?」
「はい」
しおらしい態度を装って出来るだけ弱々しく首肯する。
だから知らないと何度も訴えているだろう。
ふぅむ。この国王、耳が腐っているのだろうか。…可哀想に。それなら仕方がない。
まじまじと国王の耳を見つめていると、国王は目を眇め、盛大な舌打ちをした。
「我が国が、高慢・且つ野蛮で原始的な獣人の国に税を納めているのは…幾らド田舎貧乏ほぼ没落伯爵であるお前でも、知っているな?」
国王は手に握り締めていた安っぽいド派手な金の扇を手の中で弄びながら、尊大な口調でそう問い掛けてきた。
「はい、存じております」
国王の目を見つめながら、しっかりと頷く。そうしながらも、昔、父上から受けた講義を頭の中から引っ張り出す。
獣人に税金…ふんぬぅう。もしかしなくても、100年前に起こった人獣大戦でのあれね…。
確かその争いって、基本獣人至上主義で、獣の姿にもなれなければ、力も知能も全てが自分達に劣る人間を蔑視して鼻も引っ掛けていなかった獣人に対して人間が、“何だお前ら、たかが獣になれて力が強いと言うぐらいで威張りくさりやがって、何様のつもりだ?!駆逐してやる”と、癇癪起こして、3つの大国除く全ての国々が手を結んで、獣人の国リヴァリス帝国に戦争を仕掛けて…。で、大敗して、獣人側が、“ふぅむ。折角、無視していたのに…同じような事を繰り返されても面倒臭いし、征服しよう”となってしまい、戦争に参戦しなかった3つの大国除く全ての国々が支配下に置かれてしまったと言うあれか。それで属国となった敗戦国は、年に1度、多大なる税を納めないといけないとか…。
その戦争のせいで、二種族間の関係は微妙になったと。
しかし、どうして今この話題を?
「ふむ。余は獣人が心の底から嫌いだ」
ん?突然、何暴露しているんだ?…この王様。
「はい」
頭の中に疑問符を浮かべつつ、取り敢えず相槌を打つ。
「だから、もう10年間、税を納めていない」
「はい…?!税を10年も…」
何を考えているのか。国王は突然真顔になったかと思ったら、ビシッと扇の先を私に向けて、国家機密レベルの重大な事を誇らしげに決め台詞かのように宣告してきた。
って、10年と言ったら…即位してから一度も払っていないと言う事ではないか…。
この国王…国を滅ぼしたいのか?
愕然と国王の顔を凝視する。
国王は平然とした顔で、ぱらりと扇を開いて気怠げな仕種で顔を仰ぎ始めた。
「うむ、そうだ。で、約2週間前、憎き獣帝が何とも野蛮で恐ろしげな部下沢山引き連れて余の城に取り立てに来てだな。だが余は払いたくないし、そのような大金、払う余裕もない。だって国庫、ほぼ空っぽだもん」
いや、胸を張って誇らしげに言われても…。それに…だもんって、可愛らしい口調で言われても、口にしているのが40代後半のいい年したおっさんだから、ちっとも可愛くない。
事の重大さに、虚ろな目をして明後日の方向に目を向けていると、国王は物憂げな顔でまた扇を閉じたり開いたりと弄び始めた。
「だが、払わないとこの国潰す、と脅されてな。どうしようかと涙目で固まっていたら、獣帝がお前をくれ。そうしたら今迄の分を帳消しにしてやると、提案してきた。即断即決した。余は大満足だった。国は守れたし、国庫からは一銭も出さなくてよい。なにより余から我が最愛の兄上を完全に奪い去った、憎き野蛮猿の娘が我が国からいなくなると言うのが、一番嬉しいかった!!余は本当にうはうはだった…ある事に気が付く前迄は…」
国王は言葉を途切らすと、パンと音を立てて扇を閉じ、悲壮感たっぷりの眼差しを向けてきた。そして重い溜息を吐き、再び口を開いた。
「…手続きしている最中、ふと思ったのだ。お前ができちんとした教育を受けているのか…と。幾らド田舎貧乏ほぼ没落伯爵家でも…それにあの美しくて全てが素晴らしいスーパーハイパー超優秀な兄上がいらっしゃるし大丈夫かなと思った…数秒は。しかし、直ぐに思い直した。だってあの憎き野蛮雌猿の娘だ…!絶対に何の教育も受けていない!と…。無教養の…獣人よりも劣る野蛮な野猿娘を我が国の姫として送る?幾ら蛮国に…でもあれが我が国の全てだと思われたら…あぁ!我が国の沽券に関わる!!と言う訳で…獣帝に泣き付いて、6ヶ月の猶予を貰った。余、偉い!!と言う訳で、今から6ヶ月みっちり教育してやるから、覚悟しておけ。解ったな!野猿娘!!」
いや、さっぱり解らない。
否、解りたくない。
絶対に。
最後まで読んで下さった、とても優しい方へ
最後までお付き合いをしてくださり、ありがとうございました。
つづき頑張りますので、宜しければ次回も読んでやってください。
フィディアの両親の馴れ初めは結構ドラマチックです。(多分)
しかし国王様、予想以上に幼稚で馬鹿な人になった…。
と言うか、設定ではドブラコンとしかなかったはずなのに…。
こんな人が王様で、この国は大丈夫なのか?!この国の行く末が心配です。(嘘です。全く興味がありません)