第2話 乙女と裸エプロン
誤字脱字・文章が下手・稚拙等至らない点ばかりだとは思いますが…、どうぞ宜しく御願いします。
「フィディア様、一体どうなされたのです?!それはなんでありますか?!」
私の幼馴染兼私付きの侍従のロアは、円らな深い焦げ茶色の目を零れ落ちそうなほど大きく見開かせると、顔を青くして悲鳴一歩手前の声でそう叫びながら、私の方に一目散に駆け寄って来た。
「やぁ、ロア。大丈夫。そんなに興奮するな。落ち着け」
「大丈夫。じゃないでありますよ!お屋敷にいらっしゃらないと思ったら…そのようなものを拾って来て…本当に一体、何をしたでありますか?!!」
…うぅむ。さてはて、何をしたと聞かれても…どこから話そうか。
逃げずに木桶で無抵抗の狼を殴って木桶壊したとか、無意識に裏拳きめた、石投げたとか知ったら、絶対に怒られるな。
どう説明しようか思案しながらも、言葉を紡いでいく。
「うぬ、皆を手伝おうと水汲みに行っていたら、巨大狼に遭ってだね。そうしたら何故か木桶がばーんと壊れてしまって。何だかんだしているうちに狼が気絶してしまってな?うち、貧乏で新しい木桶買えないし。だからこいつの毛皮、剥いで売ったら良いかなと思った訳なのだよ。あと、肉は食糧にもなるし。剥ごうとした所で、いつも持っている小刀を部屋に忘れてきてしまった事に気付いてだね。止めを刺そうにも何もなくて、だから取り敢えず、狼の口と両手両足を縛ろうとしたら…こう、ね。人に変身してね。おお、これは獣人だったのか。何たることだ。人間と獣人、唯でさえ険悪なのに…これは不味い。うむ。獣人は全生物の中で最強の存在だと謳われていることだし、このままここに放置しても大丈夫だろう。よし、放置だ。と私の中の善良白私がそう囁いたのだ…。でもだね。はて、意識がない者を森に置き去りにするだなんて、人としてどうだろう?と思ってしまったのだよ。だから彼の両足を持ってここまで引き摺って来たのだ」
徐に言葉を切り、私の足元で伸びている濃い深紅の髪をした、巨体全裸男に目を遣った。
いやしかし、本当に大変だった。意識はないし、無駄に上背があって…細身だが筋肉、しっかりと付いているから、重いのなんのって。何度そこら辺に捨てようかと思ったか。私基本、筋力体力のないもやしっ娘だから、明日絶対に酷い筋肉痛に苦しめられるな。
「いえ、あの…。そのような、もう全て言い切った的な満足げな顔をするのはお止め下さい。重要な部分、全部端折っておられますよね!大体由緒正しい伯爵令嬢が水汲み?手伝おうと言う御心は嬉しいのでありますが、貴女様がそのような事をしてはいけません。本当にもうフィデイア様は…」
眉間に皺を寄せてうんうんと頷いていると、ロアが渋い顔で小言を言い始めた。おや、流石ロア。勢いに流されなかったか。うぅむ、果てしなく長くてくどいロアの小言が始まってしまった。ふむ、今日も長そうだな。いつ終わる事やら。したい事もあるし…よし、聞き流そう。
ロアが聞いたら無言で荷物を纏めて出家しそうな事を考えつつ、今一番したい事である全裸男の観察を始めた。
…しかし、類稀なる美しさの持ち主だな。こんなエイゼルと張り合える位の美貌の持ち主、始めて見た。
うぅむ。羨ましい程に長くて引き締った逞しい足。アノ部分はうん、まあ、あれだ。本で見るより実物は…ふむ…皆このような造りなのか?うむ、これ以上ココを観察するのは止めよう。何となく…。
まぁ、全体的に贅肉など一切無駄が感じられない、鍛え抜かれた戦士の体だな。
顔も…どこか酷薄そうな、引き締った薄い唇に、すっと鼻筋が通った上品な形の鼻。意思が強そうな太い眉に、理知的だがどこか野生味溢れる強い光を宿した金色の目。それを縁取るくるんとカールした長くてみっちりと濃い睫。それらが、よく日に焼けた小麦色をした形の良い卵型の顔に、完璧なバランスで納まっている。それを今は色々あってボサボサだが、艶やかな深紅の髪が縁取っている。
それにしても、美しくも印象的な目だな。まるで真昼の太陽を溶かしたような…ん?金色の目?あれ?先程まで目を瞑っていたから、目の色なんて分からなかったはず…。んむぅ?
………うむ、目覚めている。
……………………………………………。
「…………お前は…何者だ?」
お見合い状態のまま、約一分。あっ、しゃべった。うむ、予想に違わず、ハスキーで艶のある、良い声だな。と言うか、何かエロいな。ふうむ、耳元で囁かれたら、瞬時に腰砕けになるだろうな。まぁ、私はならないが。
「やぁ、君、大丈夫かい?森に水汲みに行っていたら、叢に君が倒れていてね。心配だったから、私の家まで引き摺って来たんだ」
警戒したように身体を強張らせ、訝しげな顔でキョロキョロと辺りを見渡しながら起き上がる男に、酷く心配しているんですよ私、的な口調でそう捲くし立てつつ、いつの間にか口を閉じて、男を凝視しているロアにちらりと目配せをした。
ロアは目の端で私の視線を捕らえると、逡巡したのち小さく頷き、そっと静かにその場を離れた。
よし、これで助けが来るだろう。それまで無理しない程度に頑張ろう。
…でも、あぁ、本当に面倒臭い事になったなぁ。
頭を打った衝撃で、記憶喪失になっていたりしないだろうか。私が一方的に暴力を振るった訳だから、さきほどの暴挙を覚えられていたら…かなり不味…気がする。
「水汲み、あぁ…。それで木桶。それにしても…」
「裸、寒くないか?否、寒いよな。幾ら夏だからとはいえ、全裸では風邪を引いてしまう。夏風は治りが悪いと言うし…ほら、エプロン」
男の言葉に言葉を重ねながら自分のエプロンを外し、満面の笑みで男の手に押し付ける。
…うむ、記憶、ばっちりあるな。困った。さて、どうやってこの危機を掻い潜り抜けようか?
曖昧な笑みを浮かべで思案していると、男は目をパチクリさせながらエプロンを受け取り…なんと躊躇いもせずに身に着けた。
おぉ、男が身に付けると、私の継接ぎだらけの元は白だったけど今は灰色のシンプルな安物エプロンが、男が醸し出す気品のお陰で、少しだけ高級品に見え…る分けがない。誰が着けようとも、襤褸は襤褸だ。しかもこの男、身長が私の2倍はありそうだから、私のロングで大き過ぎるエプロンが…この男が着ると何かすごく小さくてぴちぴちで…裾が、股間を隠すか隠さないかのギリギリラインにきているし…うむぅ。
と言うかこれ、もしかしなくても裸エプロン。
うぅむ、女性か美少年がしたら見応えあっただろうが…幾ら顔は思わず息を呑むほど綺麗でも、視界に入れたくないくらいドきついな。
最後まで読んで下さった、とても優しい方へ
最後までお付き合いをしてくださり、ありがとうございました。
つづき頑張りますので、宜しければ次回も読んでやってください。
一体どうなることやら…。この人達。
と言うか主人公…なんて粗忽な子なんでしょう…。
末恐ろしい…。