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第8話 次男坊ディオン。

「でかしたぞ!ディオン!お前はぷらぷらしてどうしようもない奴かと思っていたが…やる時はやるなあ。さすが、我が息子だ!見直したぞ!」


昨日も遅かった。というか、仲間内の飲み会から帰ってきたのは今朝方だ。俺が自分の部屋でくつろいでいると、いきなり入ってきた親父からわけわかんないことを言われて、ハグされて、引く。


「突然、な、なんですか?父上?」

「いやあ!コラリー伯爵家の跡取り娘の婿に是非にと申し出があった!どこで知り合った?」

「コラリー伯爵家?」


ディオンは満面の笑みを浮かべる父親を眺めながら、今までかかわった女を思い浮かべる。


…コラリー伯爵家、ねえ…


確かに舞踏会で会ったことはある。あそこの姉妹は綺麗処だが、ガードが堅いので有名だ。それぞれ婚約者がいて、片時も離れなかったはず。まだ独身のいい歳の長姉がいるが、あまり舞踏会には出てこない。領地に引きこもって、領地運営に精を出していて…そんな噂だった。


「おまえより、2つ3つ年上だろうが、まあ、そんなことはどうでもいい。おまえがふらふらして落ち着かないのが心配だったんだが…あそこは手堅い運営をしていると聞くし、なにより穀物の生産量は半端ない。いいところと縁づいたなあ」

父親は、もう縁談が決まったような話し方だ。先方からの申し出、と言うからにはそうなんだろう。


2つ3つ、年上ねえ…。

そう言えばこの前悪友たちに誘われて仮面舞踏会に出かけて…やたら言い寄ってくる金持ちそうな年上の女と一晩過ごした。お小遣いも貰った。もちろん、おたがいに名乗らなかったが。


…あれか?


ディオンは心当たりが付いたので、もう、余裕だ。どんとこい。

顔はいまいちだった気がしたが、金払いの良い、俺にぞっこんの女なんて理想じゃないか…。しかも、領地経営はお任せみたいだし。俺は遊んで暮らせるな。


にやりっと笑って…父親に向き合う。


「分かりました。それで?顔合わせがあるんですか?」

「ああ。明後日だ。先方さんがお越しになる。粗相のないようにな。」


明後日?随分急ぐな…まあ、それだけ本気ってことか。


ディオンはとりあえず、もう一度寝直すことにした。








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