第5話 エマ。
二人が(2頭)落ち着くまで茂みに隠れて様子を見がてら待って、顔がまだ真っ赤なジル君のお兄さんを引きずって、昼食場所まで戻る。
侍女のエマが退屈して待っていた。お昼の続きを何食わぬ顔で食べだす。
「まあ、そんなに気にしないで良いから。ね?こういうことは、両性の合意の元、って感じだし。」
「…はあ…でも…僕にも責任がありますから」
「大丈夫よ。ちゃんと私が責任もって育てるから。子供に会いたかったら、うちの領地まで会いに来てくれてもいいから、ね?」
「え、でも…」
もじもじしていたジル君のお兄さんが、ついッと手を伸ばして、私の髪に絡まっていた葉っぱを取ってくれた。
「あら、ありがとう。あの林で付いたのね。うふふっ。どちらの毛色に似るかしらね?金色かしら?銀色も綺麗よね。あなたの銀髪も綺麗だわ。」
「……はあ。」
ジル君のお兄さんも、さっきの食べかけのバゲットサンドを食べ始めたが、まだ耳が真っ赤だ。
「あなた…責任感が強いのね?」
「え?だって…ことがことですから…伯爵家のお嬢さま(犬)なのに」
「大丈夫よ。心配しないで。私は楽しみだわ!」
会話を続ける二人の後ろで…侍女のエマが凍り付いているのに…私たちはまるで気が付かなかった。




