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第10話 ジェラルド。

借りていた上司の別荘から帰って…仕事先にはお土産も配って、僕と入れ違いに夏季休暇に入る先輩方から仕事の引継ぎを受けて…。


家に帰るとジェラルドはジルと外を見ながらぼーっとしていた。残業してきてからさっき散歩に出かけたので、もう薄暗くなってしまった。

「仕事している時はいいんだけどな?な?ジル?」

借家の小さい中庭に面した、小さいテラス。大きなもみの木が一本だけ植えてあって、夏になると暑さから逃れるためにジルが掘った穴があちこちにある。ジル用に柵をつくった。家の勝手口はいつも開けてあるから、ジルは僕がいなくても中庭には出入り自由だ。取られて困る物もないし。


自分の前足に顎を乗せて、ジルもため息をついている。


「美人さんだったな、エーヴちゃん。」

ぽんぽんっとジルの頭を撫でながら、エーヴちゃんを思い浮かべると、いつの間にかお姉さん…アリスさんと言う名なのは、別れ際に交換した連絡先の住所と一緒に書いてあって知った。

「…アリスさん、か。…可愛らしい名前だな。綺麗な人だったな、ジル?」

綺麗な金髪と、アンバーの瞳…コラリー伯爵家のお嬢様だった。

僕も住所を書いて渡したが…ジェラルドとだけ書いて…家名は書かなかった。そういう立場にもいないから…。


ジェラルドはジルと外を眺めながら…今日も二人で(一人と1頭で)ため息をつく。








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