木枯らし一番
「今から美緒のあんまようないとこ百個言うてくわ」
「百個て多すぎやろ。昼休み終わってまうわ。十個にしとき、つーか十個も言える?お前」
「いくらでも言えるわ。あいつ顔以外ええとこないやんけ」
「じゃあ、まあ、言うてみいや」
「俺とオトンと兄貴以外の男の連絡先を知っとるとこ」
「そんなんしゃーないやん、どうせ同じ部の子とかちゃうの」
「正解や」
「じゃあええやん」
「俺いややもん」
「佐藤さんはお前のためだけに生きとるんちゃうで」
「オトンと兄貴と彼氏だけでええやろ」
「三人しかあかんてことやん」
「三人で十分やろ、同じ部の人間なんて緊急性ないやん」
「まあ、ええわ、二個目は?」
「頭が悪いとこ」
「お前この間はちょっと頭が足らんところが可愛いんよって言うてたやないか」
「だって美緒がもうちょっと頭良かったら特進クラスで三年間一緒やったのに、あいつほんまアホやねん。
木枯らし一号のこと木枯らし一番言いよるんやで、春一番だから木枯らし一番だと思ってたって、くるくるパーやん」
「可愛らしい間違いやんか」
「こんなにカッコええ、近畿一イケメンな彼氏おんのにあいつちっとも大事にせぇへん」
「近畿一て、規模でかいんか小さいんかイマイチわからんわ、三つ目は?」
「三つ目」
目の前の男が黙り込む。
確かに近畿一と豪語してもおかしくないくらい整った顔をしている。
悩む姿は物憂げで、本屋に並ぶ男性アイドルが表紙を飾る雑誌に紛れ込んでも問題なさそうだ。
「三つ目」
「思いつかんのか?」
「うん」
「要はお前が佐藤さんに持ってる不満は同じ部の男子と仲良うしてほしないのと、同じクラスになりたかったってだけやん」
「ちゃうわ、今は思いつかんけど、あいつようないとこいっぱいあるわ」
「ええとこならめっちゃ思いつくんちゃうの?」
「ええとこか、顔」
「まぁ、めっちゃかわいもんなぁ」
「顔だけなら世界一可愛いな」
大きく出おったな。
自分は近畿一やのに。
「声も可愛いわ」
「あ、そう」
「字綺麗やねん」
「うん」
「しっかり朝ごはん食べるねん」
「へー」
「いつもニコニコしてるのも偉い思うねん」
「おう」
「あとすぐ頬っぺた触ってくるとこめっちゃ可愛い」
「もうええわ。なんの話やねん」
「お前が聞いたんやないか、俺多分美緒のええとこなら百個言えるで」
「嫌、もうええわ。腹いっぱい」
「ほうか、じゃあまぁ明日にしよか」




