傍観者とは最もいきやすい人物である
ーーここは異世界。文字通り、現世とは異なる世界である。この世界を過ごして、二ヶ月。私は今訓練場の寮で、拙い文章で小説を書いている。なぜここにいるのか、なぜこんなことをしているのかは随時説明しようと思う。
まず、私はここが死後の世界と知るのは、少々先のことであった。
重い瞼を開けると、周りは定番の中世の建築。冒険者やダンジョンなどという様々なファンタジー設定。なにより、全員に与えられる「能力」というもの。
妄想だけは誰よりもしている自信がある私には、子供が考えたような世界でも、これ以上ない素晴らしい世界と私は考えた。
私に与えられた能力は、空吸。空気を吸い込み、圧縮し、解き放つ力。
この世界でも稀にしか現れない、戦闘向けの能力だ。私は素直に高揚した。
良いところなのか、悪いところなのか、私はよく調子に乗ることが多い。そして、その後はいつも嫌なことが起きる。
自分でも自覚はあった。この18年間で何度も感じた世界の摂理だ。そして、人はなかなか変わらないことも知っている。
俯瞰した視点を持ちながらも、私は選ばれた側なんだ、と主人公になった気分でいた。
ーーこの世界に入ってから二週間と少し。衣食住が安定してきた頃、私に冒険仲間ができた。
仲間は痕記という能力だった。
だが戦闘で頼りになるのは、その能力よりも前々に買った銃だった。
どうやら、戦闘向けでない能力の人達は武器を購入して挑んでいるらしい。
軽口を叩きながら、彼は銃を構える。
「派手にやってこいよ、相棒。どうせお前の力が本命なんだ」
「任せろ」
そう会話したのを覚えている。
最初は順調だった。
私が空を裂き、敵を吹き飛ばす。
彼が銃で牽制し、確実に仕留めていく。
まるで自分たちが最強のコンビに思えた。
だがーー油断は、ほんの一瞬だった。
背後から襲いかかった獣の影。
私の悪いところだ。背中をやられ、思考が停止した。まるで接着剤かなんかで足と地面が合体したように、ただ突っ立ってなにも行動しなかった。
ただ仲間が必死に抗い、みぞおちに攻撃を受け、そのまま倒れてしまったところを見ているだけだった。
そこから私はあまり記憶がない。慌てて、この能力の必殺技「真空裂破」。周囲の空気を一気に吸収し、超衝撃波として放つ技を使用したことは鮮明に覚えている。
ここで補足をするが、必殺技はカッコつけでもなんでもなく、この世界にしっかり組み込まれている。
一定以上の負の感情を持ち、それを自分の能力に流し込むことで使用できる。だがそれは能力を磨き続けたものにのみ使いこなせる技。
そう。まだ未熟な私には至難の業だった。
必殺技による反動をもろに喰らい、右腕を失った。
気絶する寸前、仲間の息の音がだんだんと消えていくのを、仲間の血が自分の服に染みてくるのを、地面に寝転がりながら感じることしかできなかった。
気づけば、私は近くの訓練所の中に設備されている医務室に運ばれていた。そして、仲間の姿はいなかった。
私のせいだ。これは謙虚でもなんでもなく、紛れもない真実である。
それから、私は必殺技を使わないと誓った。使っても仲間1人救えないとわかったからだ。




