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±Days 四馬鹿な幼馴染みと巻き込まれ相談役の平凡ではない日常  作者: 空月
第1章 無理やり転校編

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6.とりあえずお試し期間



 そして翌朝。マジで強制転校の手続きをとられたわけだが。世の中、金と権力でゴリ押せることが多すぎる。

 幼馴染みズの通っている、なんかめちゃめちゃな金持ち学校への道行き(in デカ長い黒塗りの車)で、私は不機嫌を隠さず無言を貫いていた。


「お、怒ってる、よね?」

「一体何が不満なのかな? ウチの学校、お金積んで土下座してでも入れて欲しいっていう人もいるのに」

「まあ仕方ないですよ。少々強引に事を運んだのは私たちですし」

「…………」


 各々の感情を映した四対の瞳が見つめてくるのに、特大の溜息をついた。特に開き直り組二名の台詞がひどい。


「……オーケイわかった理解した。あんたらが馬鹿で阿呆でどうしようもなく自分勝手だっていうのはよく知ってたつもりだったが、どうやら幼馴染みフィルター的なものがかかってたらしいな。これからは頭に『心底』ってつけることにするよこの真性馬鹿ども。っつーかユズ、いちいち聞くな見て分かれ神経逆撫ですんじゃねーよ。カンナ、そういう問題じゃないって何度言わせる気だその耳は飾りかそれとも脳味噌入ってねぇのかその頭。ミスミ、わかってんならすんなよってか少々どこじゃねーだろうが過小評価にもほどがあるっつーの。レンリ、言いたいことがあるなら口で言え目で訴えるな今回ばかりは甘やかさないからな?」


 理性をかき集めてかろうじて怒鳴ることはしなかったものの、ぶっちゃけそうしても許される仕打ちを受けている。なにせ意思を無視して転校させられたのだ。こいつらのことだから保護者の許可はとってるだろうことがまた苛立ちに拍車をかける。


「……これは怒ってますねぇ」

「だから言ったじゃん! せめて初登校は明日にした方がいいってー!」

「ユズ、多分問題はそこじゃないと思うよ?」


 いつも通りなのがまた苛立たしい長閑とも言えるやりとりに苦虫を噛み潰したような心地でいると、控えめに腕を引かれた。誰がと考えるまでもない。レンリだ。


「…………」

「なに、レンリ」

「………………」

「言いたいことがあるなら口で言えって言ったのが理解できなかった? その耳と口は飾りなのかそれともコミュニケーションをとろうっつー気さえないのかどっちだ?」


 目で訴えかけてくるのにそう返すと、外野が騒ぎ始めた。少しくらい殊勝な態度を見せようという気はないらしい。


「うわ怖っ! 笑ってるけど目ェ笑ってないよねあれ!」

「レンリにはいつも甘いですから、ああいうのを見るとなんというか、むしろこちらが居た堪れないですね」

「っていうか口調が荒れすぎて怖いんだけど。いつもはあそこまでないよね?」


 ここまで人の余裕を奪った原因たる自覚がないのかこいつら。一度殴りでもしないと自分を顧みもしないんじゃないかと思えてくる。


「そこの三馬鹿聞こえてんだけど。それとも聞かせてんの?」

「すみませんごめんなさい許してくださいー!」

「聞こえることを前提に言ったのは否定しませんよ」

「距離的に聞こえないように喋るのは無理そうだしね」


 そういうやつだと知ってはいたけどここでも開き直る二人はちょっと真面目に教育的指導が必要だと思う。ユズの潔さを見習えマジで。

 そんなやりとりの中でうろうろと彷徨わせていたレンリが、視線を定めて真っ直ぐ見返してきた。話す気があるなら聞いてやる気はあるのでとりあえず向き直る。


「…………その、」

「ん?」

「…………ごめんなさい」

「おおっ、レンリが喋った!」

「なに、そのクララが立った的な言い方。レンリだって全く喋らないわけじゃないって知ってるよね、ユズ」

「まあまあカンナ。確かに言葉を口に出すのは稀といえば稀ですし」

「……それは何に対しての謝罪なのかなレンリ。その返答によっては窓叩き割ってでもこの車から降りるよ?」


 こっちが反応を示す前にまた騒ぎ出した外野は無視してそう言う。普段比較的甘やかしてる自覚はあるので、こういうときに手を緩める気はない。

 小さく肩を震わせたものの、目は逸らさずに、再びレンリが口を開いた。


「……意見聞かずに、勝手なことして、ごめん。……でも、来て欲しかった、から」

「だったら何をしても良いって?」

「そうじゃ、ないけど」

「散々あんたらに言ってるけど、権力とか財力とか、何かを成し遂げるのに必要なものを持ってるからって、それをしていいってわけじゃないっつーのはわかってる? 特にあんたらは人権無視しすぎ。こういうことされてどう思うかってくらい考えろ。想像するくらいの頭はあるだろうと思ってたんだけど?」


 曲がりなりにもこれまで付き合いがあったのだ。一般常識から若干外れはしても、もうちょっとまともな感性があると思っていたからこそ、こっちの都合丸無視でやらかしてくれたことに腹が立っているわけで。


「それは、……怒るかな、とか、嫌だろうな、とか。わかってる、けど……」

「けど何?」

「…………」

「そこまでにしてあげてください。レンリ一人を苛めたって仕方ないでしょう」


 ついに黙り込んだレンリに、横から助け舟が入った。

 容赦しなかった自覚はあるが、苛めたとは人聞きの悪い。というかこの状況を作った原因の一人がいけしゃあしゃあと何を。


「あんたが言うかその台詞」

「言いますよ、見ていてレンリが可哀相なので。……私の意見を言わせてもらえば、あなたがどう思うのか想像した上で、それでも自分の欲望を優先した結果が今の状況ですから。今あなたに糾弾されたところで意見を翻したり、全部なかったことにしてこのままUターンなんてする気は全くないですが」

「そうそう。君だってわかってるんじゃないの?」


 見事なまでの開き直り理論を展開されて、さすがに頭が痛くなってきた。

 無論わかってはいた。伊達に幼馴染みやってるわけじゃない。だがそれとこれとは別である。


「理性と感情は別っつー言葉知ってるかこの野郎」

「と、とりあえずさ、ちょっとでいいから通ってみてよ! 案外良いかなって思えるかもだし!」


 ユズがとりなすように言ってきたが、どんだけポジティブ思考なんだ。むしろ脳内お花畑か。


「そこに至るまでの過程のせいで悪印象しか抱けないんだけど」

「そうこう言ってるうちに着いたよ? まあお試し期間みたいなものだと思って」

「カンナの家が経営してますから、至れり尽くせりですしね」

「……同じクラス、だし……不便はない、と思う……」

「とりあえず、俺たちの学園にようこそっ!」


 畳みかけるように言ってくる内容には全く心が踊らないが、転校手続きを取られた上に、着いてしまったものは仕方ない。ここでごねても時間の無駄だ。

 せめてもの意思表示に力いっぱい溜息をついた。肩を震わせた二人はともかく、平然としてる残り二人はもうちょっと負い目を持てと言いたい。


「……わかったお試し期間なお試し期間。面倒だと思ったらソッコー帰るから。そこんとこ肝に銘じとけよこの馬鹿ども」


 ……ここで目を輝かせたり表情を明るくするのはある意味すごいと思う。空気は全く読めてないが。



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