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±Days 四馬鹿な幼馴染みと巻き込まれ相談役の平凡ではない日常  作者: 空月
第0章 幼馴染みたちの電話相談

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5.全員集合(もちろん収拾はつかない)


「金の無駄遣い以外の何物でもないよね馬鹿じゃないのあんたら」


 言った通りに迎えをよこしてきたので、焚き付けた手前一応招きに応じてやったわけだけど、馬鹿はやっぱり馬鹿だった。というか恋による色ボケでいつもより大分馬鹿になってる気がする。そういうことにしておきたい。素でこれだと思うとそんなのと幼馴染みな現実が辛すぎる。


「いきなりどうしたんです?」


 首を傾げて訊ねてきたのは幼馴染みその2こと仁賀ニカミスミだ。物腰柔らかでフェミニストな音楽家一家のご長男サマである。しかしこっちの苛立ちの理由に微塵も気付いてなさそうなのが残念どころじゃない。培ったはずの察しスキルが泣いてるぞ。


「どうしたもこうしたもないっての。確かにどっか場所設けて全員集めろとは言ったけど、わざわざこんな馬鹿高そうな料亭の一室貸し切らなくてもいいだろうが」


 普通に誰かの家にしろよ。どいつの家でも十分広さはあるはずだろうに。


「え、違うよ?」

「何が違うんだユズ」


 ユズ、もとい清和セイワユズは電話ラッシュのトップバッターだった幼馴染みその1である。こんなでも武道の名家の跡取りだ。馬鹿だけど。脳筋っていうか馬鹿だけど。


「一室なんてケチなことしてないよ。店ごと借りたんだよねカンナ?」

「もちろん。一室しか貸し切れないような男だと思われていたなら心外だな」

「ああごめん、やっぱり見誤ってたよ。馬鹿じゃないね大馬鹿だねもう救いようがないね」


 当たり前だと言わんばかりの顔で言う台詞じゃないし、そんな言動するのが曲がりなりにも幼馴染みだと思うと目頭が熱くなる。悪い意味で。

 しかし幼馴染みその4たる遠上トオガミカンナはこの中でも特上の常識外れなのでこんな言動も予想の範囲内なのがかなしい。

 こいつはコンツェルンだかなんだかの次期後継だからか金銭感覚がとんでもなくずれているのだ。金に物を言わせる率は幼馴染みの中でもダントツである。というか人間的に結構歪んでないかこいつ。今更だけど。


「…………」

「あっ、レンリがまた隅っこに寄ってってる⁉ よくわかんないけど落ち込まないでレンリ!」


 遠慮なくこき下ろしてたら、馬鹿をやった主犯格には響かなかったのに、流れ弾が当たった奴が落ち込んだ。足して二で割れおまえら。


「待てレンリ。あんたは違うから安心しろ。どうせ他の馬鹿どもが勝手に場所決めて貸し切ったんだろうし? それとユズ、声量落とせ。うるさい」


 そんな足して二で割りたいうちのマシな方である幼馴染みその3は、名前を西条サイジョウレンリという。比較的常識人枠なのでこういうことは少なくない。あくまで『比較的』というところが切ない。


「――私たちが場所を決めたのも貸し切ったのも間違いではないですが。どうしてあなたはそう、レンリにだけ甘いんです? 同じ幼馴染みなのに随分と扱いに差があると思うんですが」

「自分の胸に手を当てて考えろ。日頃の行いの差だっての」

「日頃の行い、と言ってもレンリもさほど私たちと違うとは思えませんね。今回だって、電話をしたことには変わりないでしょう?」

「うっさい。心労の度合いが違うんだよストレス値とか」

「ひどいですね。傷つくじゃないですか」


 とか言ってるけど、ミスミの声には苦笑が滲んでいる。こいつの口先がよく回るのは知っているのでこっちも本気にはしない。


「心にも思ってないことを言うな。ぶっちゃけウザい」

「私はユズじゃないので、罵られて喜ぶ趣味はないんですが」


 なんか飛び火した。さすがにマゾのレッテルを貼られるのは許容できなかったらしいユズが慌てて会話に割り込んでくる。


「ちょっ、ミスミ! オレだってそんな趣味ないよ⁉」 

「え、ないの? 僕もユズはそうだと思ってたんだけど」

「カンナも⁉」

「だって僕たちと未だに付き合ってる時点で、そう考えるのが自然だと思うんだけど」


 幼馴染み間のユズの印象と扱いについて一考すべき気がしないでもない流れである。

 がーん、と聞こえてきそうなほどわかりやすくショックを受けたユズが、沈黙を守っていたレンリに縋るような目を向けた。


「れ、レンリは⁉ レンリは違うよね? オレのことマゾだとか思ってないよね⁉」

「…………」

「なんで無言⁉ 目を逸らすのっ⁉ レンリだけはそんなことないって信じてたのにー!」

「…………」


 あ、駄目だこれ。普段は雀の涙程度はあるユズの冷静さが吹っ飛んでるから話が進まない。

 放置してても仕方ないので仲立ちしてやることにする。そもそも本題が一ミリも進んでないし。


「それ困ってんだよ。幼馴染みなら気づいてやれ。レンリもそんな途方に暮れた顔しない。っつーかさっさと本題行こう本題。時間の無駄だ」

「久しぶりに会った幼馴染みに冷たくないかな?」

「久しぶり? 家も近所とは言えない学校も違う他の接点もないのにしょっちゅう出没する奴らが言えた台詞じゃないね」

「幼馴染みという接点があるじゃないですか」

「昔の話だろーが。マジでさっさと縁切っときゃ良かった」


 っていうかこんな住んでる世界が違うようなやつらと幼馴染みになってる現実がおかしい。偶然と不可抗力こわい。


「…………」

「――わかった。前言撤回するからその目はやめろレンリ」


 めちゃめちゃに物言いたそうな、それでいて縋るような目に、降参する。

 目は口程に物を言う、を体現されてしまった。レンリはもともと他のやつらに比べて無下にしづらいのでこっちが降参するしかない。多少甘いのは自覚している。


「っていうか本題って何のこと?」


 本気でわからない顔でユズが言った。

 ……知ってたけど、わかってたけど、本当にこいつ馬鹿だよな……。


「ほんっとーに鳥頭だなおまえ。何すっぱり忘れてんだよ。こっちには全然関係ないってのにあんたら全員揃って恋愛相談なんかしてくるからこうなったんだっての」

「でも、私たちがそんなこと相談できるのはあなたくらいですし」

「何でわざわざ相談なんかするわけ。好きにすりゃいいじゃん」

「だってこういうの初めてだし。色々不安なんだよー聞いてよー!」

「正直ウザい。あんたらの恋路とかどうでもいいし」

「彼女、電話でも言ったけど一般人なんだよ。どう接するのがいいか勝手がわからなくてね」

「だったら関わるなよ。それができないならせめて巻き込むな」

「…………」

「んな顔しても駄目なもんは駄目。面倒ごとには関わらないのが信条なんで。特に今回は関わったらろくなことにならないってわかりきってるし」


 ここで甘い顔をしたらつけこまれるのは目に見えてるのでさくさく切り捨てる。

 と、なんか約一名が不穏なことを言い出した。


「いっそ強行手段に出てもいいんだけど?」

「……それはどういう意味か聞きたくないが聞かせてもらおうか」

「具体的には君に僕たちの学校に転入してもらうとか」


 何さらっと言ってんだこいつ。


「人権はどこいった。世の中金でどうとでもなると思うなよ。んなことやったらマジで縁切るから」

「それは困るな。でも悪い話じゃないと思うんだけど」

「学費その他諸々は私たちが持ちますし、家を離れたくないなら迎えだって寄越します」

「寮もあるよ! 好みに合わないなら新しく建てさせるし!」

「…………」

「そんな期待に満ちた目で見られても。っつーかさ、そういう問題じゃないっての」


 他のやつらまで乗り出してきたのでさすがに溜息をつく。

 こういうとき、こいつらと培ってきた常識が違うんだよなというのを実感する。実感するようなことが起こる現実にも遠い目になる。


「じゃあどういう問題なのかな」

「そもそも恋愛相談してきたってことはアドバイスが欲しいっつーことだよな」

「まあ、そういうことになりますね。話を聞いて欲しかったのもありますが」

「よしわかった。アドバイスしてやる。ただしこれ一回きりだから。金輪際この話題持ち込むなよ。アドバイスも求めるなよ」

「え、それはオーボーじゃ……」

「うっさいヘタレ。っつーわけでアドバイスだけど」

「…………」


 息を吸い込む。これ以上なく真剣に、心からのアドバイスを口にした。


「押してもダメなら引いてみろ。相手も大喜びだ」


 沈黙が落ちる。最初に言葉を発したのはカンナだった。


「……何ていうか、君が僕たちの恋路を心底どうでもよく思ってるのだけは伝わってきたよ」

「それアドバイスなの⁈ っていうか『相手も大喜びだ』ってヒドくない⁉」

「あなたらしいといえばあなたらしいですけどね……」

「…………」


 うん、まあ予想の範囲内の反応だ。しかし撤回する気はない。


「『一般人』からの意見だ。気に食わないならそれで結構。んじゃ。……なに、レンリ。さっさと帰って課題終わらせたいんだけど」


 くい、と袖を引っ張られてそちらを見遣ると、物言いたげなレンリの目にぶつかった。


「…………」

「あー、そか。あんたは別に押しまくってたわけじゃなかったねそういや。まあ基本は同じで。逆に押してみればいいんじゃない?」

「そんな投げやりなアドバイスで私たちが納得するとでも?」


 納得できなくても納得しろと言いたい。完全無欠に無関係な一般人巻き込んどいて高望みしすぎだ。


「だってこれ以外アドバイスないし。っておい、何してんだおまえ」

「いや、ちょっと腰を落ち着けて話し合いをしようかとね?」

「言い方は穏便だが明らかに監禁する気満々だろおまえ」

「やだなぁ監禁だなんて。せいぜい軟禁だよ」

「ごめんオレにカンナは止められないよ……っ!」

「とか言いながら加担してんじゃねぇよこの馬鹿。今どこに連絡とった」

「安心してください。明日の朝には転入手続きも済みますから」

「どさくさに紛れて聞き捨てならないこと言ったなミスミ。おまえら覚悟は出来てんだろうな?」


 本気で強硬手段取ってきやがったこいつら。いつもはここまで阿呆をやらかさないっていうのにどんだけ色ボケしてるんだ。


「………………」

「今回ばかりはあんたも同罪だからなレンリ? 申し訳なさそうな顔してもさすがに許せないから。フツーに無理。許容量オーバーだから」

「まあまあ。じっっっくり話し合おうよ、ね? 幼馴染みのたまのワガママくらい聞いてくれたっていいと思うんだ」


 カンナがにっこり人好きのする笑みを向けてくるが、本性が駄々漏れている。暴走するにも程がある。

 これは長期戦の構えが必要だな、と心中で独り言ちた。



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