4.幼馴染みたちの電話相談④
携帯が震えた。この流れならあり得ると思ってたけどあってほしくなかった着信。そして表示されてるのは幼馴染みその4の名前である。
ものすごく残念ながら予想が大当たりしてしまった。ついでに言えばタイミングが良すぎる……。
もう無心の域で画面を操作して通話を始めた。
「はーいもしもしー」
『うん、元気?』
「これが元気な声に聞こえるわけ?」
『連続で電話相談に乗って、疲れ果てた声に聞こえるかな』
やっぱこいつ全部聞いてやがったな……。
どういう手段で、というのは考えても無駄だ。ついでに追求しても時間の無駄だ。なのでさっさと話を進める。
「……それで? どういうご用件でしょーか」
『もちろん、恋愛相談だよ』
恥ずかしげもなく言っている様が目に浮かぶようだ。少しは恥じらえ。
「……ほんとさー。人選が謎過ぎるんだけど。どんなアドバイス求めてんのあんたら」
『君という、僕たちの周りでは貴重な一般人からのアドバイスかな』
「あのさ、ぶっちゃけ関係ないんだよ私は。ていうか関わりたくないんだよ。なのになんで巻き込むわけ」
『冷たいな。幼馴染みの恋の成就に協力はしてくれないんだ?』
「だってメンドいし。……まあ他の奴らも話だけは聞いたから、あんたも話くらいは聞いてやるけど」
他の奴らは一応話聞いてやったのに、こいつだけ門前払いというわけにはいかないだろうと思った……のが間違いだった。
『やっぱりこのご時世、知らない番号から電話がかかってきても出ないよね? どうやったら自然に電話番号交換できると思う?』
「……それは、あんたは一方的にその子の電話番号を知ってる前提だな?」
『察しがいいね。そのとおりだよ。知ってはいるけど、それで電話をかけても出てもらえないと思って』
思わず特大のため息が出た。……こいつは本当に、本当に……! 幼馴染みの中でも特等、常識がない!
なまじ「普通はこうだろう」という思考をシミュレートできるからタチが悪い。常識はないのに、ボロを出さないという意味で。
「まず、教えてないはずの自分の電話番号を知られてたら、めちゃめちゃこわいから。あんたがしてるのはそういう、相手に恐怖を与えかねないことだって自覚しろ」
『うん。だから、それをなかったことにするために、電話番号交換という手順を踏もうとしてるんだよ』
……だめだ、全然悪びれない。
こいつ自身がプライバシー何それ美味しいの? の環境下にあるせいで、感覚がぶっとんでる。知ってはいた、知ってはいたのに放置していたせいでこんなことに……ということは私のせい……?
いやいやいや、血迷うな、そうじゃない。そうだとしてもそれは今考えることじゃない。
「……いろいろ、いろいろ言いたいことはあるが! とりあえず、真っ当に心理的距離を近づけていくところから始めて――――あ、ごめんキャッチ入った。ちょっと失礼」
電話の最中にまた電話がかかってきたので、一旦切り替えると――。
『さっきの電話からいろいろ考えたんだけど!』
幼馴染みその1からだった。なんか無駄に元気になっていてうるさい。
「おまえまたか! ああもうまだ何かあんの⁉ ……って、あれ、またキャッチ?」
ほぼノータイムでまた着信を知らせる音が鳴ったので、『話聞いてくれないの⁉』と喚く馬鹿を一旦放置することにして――。
「うっさい、ちょっと切るよ。……はいもしもし?」
『何度もすみません、やっぱりもう少し相談したくて――』
「うわ、おまえもか」
『も?』
「……いやこっちの話。今忙しいんでまたあとで――ってまたキャッチか。超やな予感」
ここまで来ると呪いの電話だ。いやマジで。
「はいもしもーし? ……予感的中……嬉しくねぇ」
予想的中。幼馴染みその3からの電話だった。
『ごめん……タイミング、悪かった?』
「そうだな……タイミングが悪いというか、よすぎというか。もうちょっと時間空けてほしかったのが正直なところ――ああまたキャッチが」
当然のように、ぐるりと回って幼馴染みその4からである。
「あんた五分も待てないわけ――ああもうほんと面倒だなあんたら! どうせ他の奴らのとの電話も盗聴してやがんだろこの犯罪者。まとめて話聞いてやるからどっか場所設けて全員集めて迎えよこせ! でなきゃ金輪際電話出てやんねーから!」
――そう、さすがにキレてしまったのは、仕方ないと思う。




