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±Days 四馬鹿な幼馴染みと巻き込まれ相談役の平凡ではない日常  作者: 空月
第1章 無理やり転校編

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12/24

12.時間は有効的に



「ところで浅見さん」

「? なーに? 女神」


 明日にでも行くと約束してからご機嫌な様子の浅見さんに声をかけると、こてんと首を傾げられた。

 あざとい。実年齢を考えてはいけないレベルであざとい。

 しかし浅見さんのこういった言動はいつものことだし限りなく素なので流すしかない。

 公害の域で似合わないとかじゃなく、とりあえず似合ってるから、まあ、うん。


「授業内容って、何する予定だったんですか?」


「んー? なんか適当に作品選んで作り方とかコンセプトとか説明すればいいのかなーって。そんなようなことパトロンも言ってたし」


 浅見さんもパトロンの人も適当すぎない? そんなふわっとした外部講師招いちゃうこの学園も大丈夫?

 ……と、不安というかつっこみどころも浮上したけれど、切り出したい話的には都合がいい。


「それ、時間いっぱいやるつもりでした?」


 訊ねると、浅見さんはふるふると首を横に振った。


「んーん。なんか聞いた感じだと生徒さんもアク強かったりするんだろうなーって思ってたから、様子見て早めに切り上げるつもりだったよ? だって作品に思い入れがあるとかじゃないとつまんないよね?」


 勉学、というより芸術的感性を養うとかそんな感じの目的の授業だろうし、きっちりした内容じゃなくてもいいから浅見さんみたいな人にも声がかかってるんだろうと考えると、浅見さんの割り切りは理に適ってるといえばそうなんだろうけど……いろいろとどうかと思う。


「それは人それぞれかと思いますけど……それならちょうど良かった。早めに切り上げるつもりだった分の時間、ちょっと私にくれませんか?」


 それはともかく、授業をサボらせずに時間を取れそうでよかった。

 これ以上サボらせたくはないけど、悠長に授業を受けるのも受けられるのも話が進められないので悩ましいところだったのだ。

 ここに来た経緯が経緯なので、ある程度行動はさっさと済ませておきたいし。


「いいよー。女神が望むなら担当の時間丸ごとあげちゃってもいいくらいだし!」

「そんなには要りません。というか一応これお仕事でしょう」


 授業丸ごと放棄はさすがにちょっと……。

 知り合いがそんな社会的信用を失墜させるような行動をする原因になるのはごめんだ。


「あ、視線が冷たいよ女神っ! 呆れ通り越して軽蔑しちゃった的な? でもそんな目もいいね! なんか創作意欲がムクムクと、」

「湧かせないでください」

「もうわいちゃったし! ……あれ、もしかして頭の話?」


 理解しがたい方向に話がぶっとんだ。でもまぁ浅見さん相手だとわりとよくあることではある。

 よくあると言っても慣れはしない類の言動だけど。


「……さすがに頭を指したつもりはありません。さんずいに勇気の勇の『湧く』です。沸騰の『沸く』じゃありません」


 丁寧に訂正したら、浅見さんは「そっかー。ほら、たまに言われるから頭の方かなって!」とかにこにこしながら言った。そんな明るく言う内容じゃないと思う。

 ちょっとばかり遠くを見て現実逃避を試みていると、三笠さんに同情じみた視線を向けられてしまった。


「……嬢さん、いっつもこんな会話してるワケ?」

「……。大体は」

「なんつーか、――……大変そうだな、嬢さん」

「ええ、もう本当に……」



 これでも浅見さんはまだ疲れない方の知り合いだというのが大変に残念なところだ。

 ここに『みっちゃん』こと巳津(ミツ)さんが加わると疲れるどころの話じゃなくなる。いなくてよかった。神出鬼没だから湧いて出るんじゃないかと思ったけど出てこなくて本当によかった。

 浅見さんとの会話が一区切りついたのを察したのだろう、三笠さんに引き続いてミスミも疑問を口にしてきた。


「時間もらって何するつもりなんです?」

「ここに連れてこられた大本の理由、どうにかしようと思って」

「理由?」


 ユズが「え、何それ?」みたいな顔をして単語を繰り返した。ちょっと待て。忘れてそう、とは思っていたけど、マジで忘れてるのか。


「まさかすっかり忘れてんじゃないだろうなユズ」

「え。えーっとぉ……」


 しどろもどろな上、あからさまに目線がさまよっている。

 忘れてること自体がまずいのは察せたのなら、そのまま理由まで思い至ってほしかった。……まぁ、ユズだしな……。


「忘れてるに決まってるでしょう、ユズなんですから」


 思ったのと同じようなことをミスミが言った。それはフォローになってない、というかフォローする気もなさそうだ。

 幼馴染間の共通認識がちょっとアレなことに、いい加減ユズは危機感を覚えるべきだと思う。


「ひどいよミスミ⁉」

「事実なんだから酷くないと思うよ? ……『彼女』のことだね?」


 ちょっと涙目になったユズに追い打ちをかけたカンナが、確認するように『理由』を口にする。

 レンリもミスミも様子を見るに忘れてはいなかったようで何よりだ。ユズはもっと目先以外のことも頭に留められるように頑張れ。


「そ。そもそもお前らそれがあったからこんな無茶苦茶なことやりやがったわけだし? だったらそれに関して無駄な時間を過ごすよりは多少のアクションを起こそうかと思ってね」


 やらかされたことはもう仕方ない。だから、こうなったら状況を有効活用する方向で動く方が有意義だろうという思考に至ったわけだ。


「とは言うけど、何をどうするの?」

「とりあえず情報収集かな。私その子のことほとんど何も知らないし。あんたらのその子に対する非常識な行動についてなら知ってるけど」


 電話口で聞かされたあれこれだけでも頭が痛いんだけど、多分それ以上にやらかしてそうだからな……。本当に馬鹿どもが申し訳ない初恋の君(仮)。

 まぁ直接接触する気は今のところないのでお詫びは言えなさそうだが。というか言う道理もないな、よく考えたら。


「非常識ってひどくない!?」

「ひどくないひどくないむしろこれ以上ないほどぴったり」


 むしろ非常識以外のなんだと思ってたんだ。多少おざなりだったかもしれないけど嗜めたのにもう頭から抜け落ちたんじゃないだろうな。


「確かになー。俺が知ってる限りでもちょっとどうかと思うとこあったし」


 この場における学園内の赤の他人代表(一応)な三笠さんがそう言うってことは、相当あからさまにやらかしたと見た。

 その子大丈夫? 心労で健康損なってない? と心配になってくる。


「君は黙っててくれないかな?」

「それはお断りだなー。ンな楽しそうなこと見過ごすわけにはいかないって」

「事態引っ掻き回すつもりならお引き取りくださいね三笠さん?」


 よろしくなさそうな性格と趣味を肯定するような三笠さんの台詞に、釘を刺す。こういう手合いには直接的に言っておかないとろくなことにならない。経験則だ。


「いやいやそんなつもりはないですよ嬢さん? ンな怖い顔するなって」

「そのなんか企んでそうな笑顔引っ込めてから言ってくださいそういうことは。引っ込めても引っ込めなくても信じるつもりはありませんが」


 口にした言葉に返されたのは、とても魅力的で、とても性質(タチ)の良くない感じの笑みだった。


「嬢さん辛辣~」


 声が楽しげに笑っているところがもう。こっちの警戒を楽しんでる感がありありと出ている。


「愉快犯っぽい言動がなければもう少し当たり障りない対応したんですけどね。面白半分で事態引っ掻き回されたら被害が来るのはこっちですし」


 幼馴染たちの所業に呆れかえっているとはいえ、初恋が無惨に玉砕すればいいとは思ってないので、面白半分に引っ掻き回される可能性は減らしておきたい。


「俺そーいうことしそうに見えんの?」

「見えます」

「清々しいほどの即答をアリガトウ」


 さすがにちょっと顔が引きつった三笠さんを見つめていた浅見さんが、「誰かを思い出すな~って思ったら……」とぽやんとした顔と声で口を開いた。


「そこの『ついさっき知り合った人』、みっちゃんに似てるねぇ」

「……そうですね。だから警戒してしまうんでしょう」


 そう。そうなのだ。だからこそ対応が辛くなっている自覚はある。

 でも不本意ながら培った勘が間違った対応じゃないと訴えてるので、改める気はあまりない。


「『みっちゃん』?」

「奏兄さんの知り合い。快楽主義の刹那主義の愉快犯で変態な変人」


 こうして説明すると、ほんとロクでもない人だなあの人……。

 しかもこの形容が間違ってはないけど合ってもないかもしれないと思わせるところがこわい。もちろん悪い意味で。


「……俺、その人に似てんの? スゲー嬉しくないんだけど」

「喜ばれても困ります。ああいう人は一人で十分――いや、できるだけ身近に居ない方がいいですし」


 もしくは同類とだけで固まっていてほしい。

 ……いや、でもああいう系統の人が同時に複数いるとか想像するだけで恐ろしいな。指向性を持ったら局地的大災害になりかねない。


「女神女神、それはヒドイと思うよ?」

「いいんですよここに居ませんし。居たとしても別にあの人気にしませんし」

「まあそうだけど~。むしろ面と向かって言ったら喜ぶかもだしねぇ」

「いやホントそんな人と似てるとか言われるのは心外なんだけど」


 うん、まぁ変態のレッテルを貼ってるようなものなのでその感覚は正しい。むしろそう訴えてくれることに安心する。

 そんな気持ちをこめて、心なし目つきを和らげて告げた。


「是非ともそう思ったままでいてください」

「いやだから、」


 言いかけた三笠さんが突然視界から外れた。と思ったら。


「――それで情報収集って何をするつもりなのかな?」

「オレたちからも話聞くー?」

「協力は惜しみませんから遠慮せずどうぞ」

「…………」


 何か言い募ろうとしていた三笠さんを押しのけ強引に話題を戻してきたカンナと、間に割り込み協力的な姿勢を見せてきたユズとミスミと、同調するようにこくこく頷くレンリを見て。


「――私がちょっと脱線してたのは確かだけど、三笠さん押し退ける必要あった?」


 呆れが目と声に出てしまったのは、仕方ないことだと思う、うん。


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