瞑と舞
悲しいときは、いつもこの部屋に来る。
クラスの友だちと口げんかになって。
「メイは一人っ子だから、甘やかされてんのよ」
って言われて。
ついカッとなってその子のこと、たたいちゃった。
「つらかったね。ホントはお姉ちゃんがいるのにね。でもその子、私のこと知らないんだから、ゆるしてあげようよ。いやー、きのうはわるかったねー、アハハとか」
わたしも、お姉ちゃんみたいに明るく、強かったらよかったのに。
「そんなことないよ。メイはじゅうぶん強いよ。こないだも、いじめられていた一年生の男の子、かばってあげて、おうちまで送ってあげたじゃない」
そうかな。強いかな。このまんまでいいのかな。
「そう。それでいいんだよ」
くやしいときは、いつもこの部屋に来る。
お姉ちゃんのベッドで寝てもいい?
「どーぞどーぞ。……で、何があったの?」
作文コンクールで、学校代表に選ばれなかった。
「高学年ともなると、急に開眼するやつとかいるからねえ。
マイのも読ませてもらったけど、担任の先生をしっかり観察して書いてて、思わず吹き出しちゃった。あ、先生をネタにしたのがまずかった? というのは冗談で……もっと思い切り自由に表現してもよかったかも」
うん、いいアイデアはあったんだけど。それは次の時に使おうと思って。
「だーめだめ。出し惜しみしたら負けだよ。メイなら、こないだよりも次が、次よりもその次が、きっと上手に書けてるよ」
できるかな? わたしに。
「もちのロン!」
やってみる。
「そう。それでいいんだよ」
泣きたい時は、いつもこの部屋に来る。
「残念だったね。せっかく勇気を持って告白したのにね。あいつ、人を見る目がねーやつだな!」
タカヒロ君の悪口言わないで。
「あー、わりいーわりいー。……そんだけ本気だったんだね。……お姉ちゃんもそんな恋、してみたかったな」
お姉ちゃんも恋ができるように、私がしてみせる。
「あ、ごめん。今は、ボクのことはどうでもいいからさ。そこのぬいぐるみ、貸してあげっから、抱っこして思い切り泣きな。
うん。……ぐすん……ううう……えーん、え―――ん
「そう。それでいいんだよ」
途方に暮れたときは、いつもこの部屋に来る。
ごめん、お姉ちゃんを生き返らせることができないかも知れない。
「なーに言ってんのよ。ボクは今もこうやってメイと話してるし」
そうだけど……お姉ちゃんと手をつないでみたい。ハグして欲しい。
「はいはいはい、ハグしてあげるから、頭の中で想像してみて」
……
「どう?」
うん、少し元気になったかも。
「そう。それでいいんだよ」
「メイは、いつも自分で考えて、道を切り開いている。ほんとうにすごいよ。だから、今回もうまくいくよ」
ありがとう。
私は、LINEで、今度ペアを組む湯沢誠にメッセージを送った。




