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第96話 図書室

 色々と会話を弾ませながら一同は歩き続け、やっと第4図書室についた。


建物はいくつかある校舎の別棟の一つで、予備の教室や会議室、物置等が雑多に詰め込まれていた。


ほとんどの部屋があまり使われていないようで、人通りはほとんどなかった。その建物の2階、廊下の一番奥の突き当たりに、ひっそりとその部屋はあった。


ヨルクが部屋を開けた。そこは教室より一回り大きいくらいの大きさで、入り口側とその正面の壁は一面本棚になっていた。机が部屋中央に二つと、奥の窓際に一つ置かれていた。


カーテンが締め切られているため薄暗く、一見すると陰気な、どこかもの寂しい部屋だった。

しかしそのおかげか、手入れされた古書の一つ一つが(おごそ)かな雰囲気を帯び、独特な魅力を放っていた。


「うお、すげぇ。これも本すか」


サンはある一角を見て、思わず言葉を発した。

普段見る本とは違い、表紙が見事に塗り上げられ、精巧な装飾が散りばめられた美しい装丁の本ばかりだった。


「そのへんが、シエル大帝国時代の本だよ」


ヨルクは近づいて説明を続けた。


「この時代、本を単なる情報源じゃなく、芸術作品として楽しむ余裕があったらしい。

だから一冊一冊信じられないくらい作り上げられている」


「こんな細工、初めて見ました」


隣に立ったジオもその洗練された技巧に目を奪われた。

高貴な人々の邸宅でそれなりに芸術作品に触れてきていたジオですら、目を見張るものがあった。


「この装飾技術も、今じゃ再現できないかもな」


ヨルクは静かに呟いた。少し目を伏せたように見えた。



彼らがシエル大帝国の蔵書に集まっている間、ランスは別の方に目を向けていた。

図書室の奥へと進んで行き、窓際の机に視線を落とした。


おそらく、ヨルクの定位置なのだろうと思われた。

他の机の上には何も置かれていないのに、その場所だけ本を手入れする道具類や筆記具、軽いメモ書きに、数冊の本が置かれている。

いくつかの本は読みかけなのだろうか、ページに栞が挟んである。

しかし中には、ただ置かれているものもあった。ヨルクが気に入っている本なのかもしれない。だから手元に置いている。


「……ランス? どうした?」


ジオはランスが一冊の本に目を奪われているのに気づいた。

数々の美しい本の中でも、一際異彩を放っている、エメラルドグリーンの装丁。


「これだ……」


ランスは誰にも聞こえないくらいの小さな声で言った。

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