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第90話 対処

「……なんというか、本当にすごいんだな。

持っている目が違う。全部お見通しみたいだ」


観念したようにヨルクは言った。そして笑った。

そしてやっと、もうしばらくの間ずっと、身体の様子がおかしかったことを白状した。


ここ最近は倦怠感と手足の痺れ、吐き気、頭痛に襲われ、日を追うごとに症状は悪化した。咳き込んだ拍子に、赤い塊を吐いた。

生徒相手だったからか、随分言葉を選んでいたが、隠しきれない生々しさがあった。


「えぇ、それ、普通に只事(ただごと)じゃなくないすか?」


後方で聞いていたサンが驚いて言葉を発した。


「まあ、動けないほどじゃなかったしな」


そこには少し嘘があるとランスは思った。今日の講義を思い返してみると、ふらついたように見えた場面が数度あった。


「あの、先生、私、治します……!」


ミオンはそう言うと返事も待たずにヨルクの左腕に手を掲げ、オレンジ色の魔法で包んだ。

痛々しく赤く(えぐ)れたヨルクの腕は、瞬く間に生来の形を取り戻した。


ヨルクはこんなにすぐ治ると思っていなかったのか、純粋に驚いて手を上に掲げた。そして「ありがとう」と呟いた。

しかしミオンは喜ぶ素振りを見せず、まだ悲しそうな顔をしている。


「私の魔法は、怪我とか、こういう傷なら治すことができるんです。

でも、頭痛とか手足の痺れとか、病気みたいなのは、あんまり治せないんです……」


「いや、十分本当に楽になったよ。ほんとありがとう」


ミオンの心配に随分恐縮したようで、ヨルクは重ねて礼を言った。

横から見ていたジオが、ランスに尋ねた。


「頭痛とか、そういう症状は治す方法あるのか?」


ランスは少し考えたが、言いづらそうに首を振って答えた。


「頭痛を抑えるとかはできるかもしれないけど、根本的な治療は思いつかない。

時間をかけて身体から毒が抜けるのを待つことになると思う。けど……」


そこにいた全員が、ランスの続く言葉を待った。


「もし本当に慢性ヒ素中毒だとしたら、どこかで日常的にヒ素を摂取しているということになる。

それがどこかを特定して、これ以上、摂らないようにしないと」

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