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第60話 到着

「学長か!? どうしてここに……!」


驚き困惑しているシークは、学長とその後ろに立っている生徒を見やった。

棍棒で殴られたかのような衝撃が走った。


「なんでお前が! そこにいるんだよ!!」


ユートリアの後ろにいたのは、今まであの鉄のドームの下に隠れ、交渉材料として売られかけていたはずのシグリアだった。


何が何だかわからないといった様子の男を見ながら、ランスは小声で言った。


「シグリアの声、相当似てたな。あいつ何も疑ってなかったよ」


「な。いけるもんだな」


サンは気の抜けた返事をした。



ノアはシグリアを鉄のドームに隠した後、シークの攻撃が止んだ隙をついて、影になる所に隙間を開けた。

シグリアは魔法と障害物の合間を縫って、早々に非常口から外へ飛び出し、そのまま正門に周って看守経由でユートリアを呼び出した。


ランスがその役目をシグリアに頼んだ理由は色々あったが、

まず第一に狙われているシグリアをここから離れさせたほうが安全であること、第二にサンに声の偽装を頼むにあたり、あの男が執着している〈琥珀〉の女の声なら容易に認識してくれるであろうと考えたからだ。


なるべく彼女の声を印象付けさせるため、シグリアに注意を向けさせる際、わざと大袈裟に叫んで魔法をぶつけてもらった。

シグリアを脱出させることに成功した後は、空になった鉄のドームの後方から、うまく口元を隠したサンが、シグリアの代わりにランスと会話をするだけでよかった。声音も音量も魔法で問題なく調整してくれた。


そんなことが起こっていたとは夢にも思わず、シークはただただ困惑を表に出しながら、魔法の巨兵をまた作り上げた。

ランスのクラスメイトの近くにまだ半数近い巨人を残したまま、もう半分を全力の力でユートリアにぶつけた。後方のシグリアも巻き込んでしまうつもりだった。


「舐めやがって!! お前らもろともぶっ殺してやる!!」




ランスが印象的だったのは、幾多の巨兵に囲まれ、叩き潰されようとしているユートリアを、

教員も、ジオも、他のクラスメイトも誰1人、心配そうに見ていないことだった。


ユートリアは一体一体の巨兵を下から睨みつけるように眺めると、手を前に掲げ、〈火〉の魔法を放った。



燃え盛る炎は瞬く間にユートリアの前方に広がり、シークの魔法はあっという間に飲み込まれ、触れた側から霧散していった。


「……は?」


あまりに一瞬で魔法がかき消され、シークは自分の魔法が消滅した感覚すらなかった。

いつの間にか手から離れ、消えていた。


魔法の特性に疎いランスから見ても明らかなくらい、シークの魔法は拮抗どころか、抵抗すらしていなかった。

ただそこにあるだけのユートリアの魔法が、敵の魔法の存在を否定していったように見えた。


突然サンが口を開いた。


「この前さ、魔力測定で学長俺の部屋来たじゃん?

その時、測定器が壊れてないか調べるために、学長も魔力測ってて、俺その数値見えたんだよ。いくつだったと思う?」


ランスは首を横に振った。


「8459。俺、あんな魔力初めて見た」


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