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第57話 墓穴

「〈琥珀〉の魔法の女を差し出して、俺の仲間になれ。そうすれば見逃してやる」


シグリアは驚き固まった。あの男が探しているのは自分だ。あの日、逃げられたことが相当気に入らなかったのか。

シークが襲来する直前、鉄扉の様子を見に行ったシグリアはクラスメイトの集団から少し離れる形になったため、まだ気づかれていない様子だった。


ジオは当然そんな要求飲むつもりなかったが、時間を稼ぐつもりで沈黙し、考え込む素振りをした。

突然誰かが叫んだ。


「あの! お、俺は! あなたに着いて行きます! 着いて行きますから、俺だけでも見逃してください!!」


ジオの後ろからそう声を上げたのは、ノートンだった。

入学初日からランスに喧嘩を売り、決闘でジオが負けた後は売った喧嘩の清算もせず息を潜め、最近はおとなしかったと思われていたが、教員もジオも魔法が押されているのを見て、すぐさま2人を見かぎった様子だった。

ランスは久しぶりにその姿を見たような気がした。相変わらず元気そうで何よりだった。


「あいつ……!」


ジオは即座に保身に走ったノートンに苛立ちを隠せていなかった。


「おぉ、いい子だな。名前は何て言う? 魔力は?」


「はい! ノートンって言います! 魔力は3452です!」


「なんだよ雑魚、ゴミじゃねぇか。一興に免じて自殺の許可をやるよ。死ね」


一応魔法学校に合格した者として、魔力が低いと言われたことのなかったノートンは、こんな反応になるとは夢にも思っていなかった。

えっと、その、と困惑を隠せず、歯切れの悪い返事を繰り返した。


「どうした? 自殺の許可をやるって言ってんだ、嬉しいだろ? 俺の魔法で死ぬのは、苦しいなんてもんじゃねぇんだぞ?」


そういうと男はジオに向いていた水の巨人をノートンの方に向けた。

ノートンは恐怖で腰を抜かし、立ってもいられなくなった。




「やばいじゃん、どうするよあいつ。このままじゃジオも危ないんじゃねぇの」


偶然ランスに絡みに行っていたサンは、同級生の集団から少し離れてランスのそばにいた。


「……とりあえずどうにかして、ユートリアに状況伝えるのが先決だろうな」


ランスはシークから目を離さないまま冷静に言った。

こんな時、スマホがあれば便利なのかと、まんまと考えてしまった。


拳銃は持っていたが、襲撃者の男を止めるには今いる場所が悪かった。

男との間に何人ものクラスメイトがいて、少しずれただけで別の生徒に当たってしまう。


やはりできることなら誰かがここを離れて、他の誰かに状況を伝えにいったほうがいいと思った。

さすがに国1番の魔法学校なのだから、あれに勝てる教員もいるだろう。


ランスは自分たちのすぐ近くに、シグリアがいることに気づいた。


「シグリア」


ランスが呼びかけると、シグリアは目線で返事をした。



魔法の巨人に圧倒され、動けなくなったノートンにシークは言った。


「時間切れだ。とっとと死んでおけばよかったのにな」


(あざけ)り交えて言いながら、魔法の巨人をノートンに近づけた。

それでも周りへの警戒も怠っていない様子で、他の生徒は逃げ出す隙がなかった。


「やめろ!! お前の狙いは私だろ! 襲うならこっちにしろ!!!」


シグリアの叫び声が空間に響いた。と同時に彼女は右手に琥珀の()を握り、前に突き出した。

琥珀の槍は瞬時に数メートル先までのび、穂先が男に向かった。男は自分の左手から魔法を展開し相殺した。


「〈琥珀〉の女……!!」


睨みつけるような、不敵に笑うような表情で八重歯を曝け出し、男は右手の水の鎖をグンと引いた。

魔法の巨兵のうちの一匹がシグリアに近づきながら、一歩、また一歩と歩みを進めるごとに大きくなっていくようだった。


シグリアの前に来た時は、もう防壁から頭ひとつ飛び出るくらいに成長した水の巨人が大きく手を振りかぶっていた。

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