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第55話 異変

ノアがやってきて2日が経った。

あれ以降特に生徒が被害に遭うことはなく、不気味なほど穏やかな時間が流れた。


その日は講義があったので、ランスは支度をしてからノアと食堂で朝食を食べていた。

通学に時間を費やさない分、朝もゆったりと過ごすことができていた。


「おはよ。ここ良い?」


「良くない」


間髪入れずに断ったのは、ユートリアの声だとわかったからだ。

ユートリアはランスの言葉なんて耳にも入っていないかのように、滑らかに正面の席につき、朝食代わりのココアを飲み始めた。


「ノア君、楽しく過ごせてる?」


ユートリアがノアに問いかけると、ノアは静かに頷いた。

ノアは、科学と魔法を組み合わせて作った擬似人間的な存在だと教えてもらっていたが、この数日間接する限り人間としか思えなかったので、そう解釈することにしていた。


「用件は?」


ランスは朝からユートリアの相手をする気はないとでも言うように、淡々とした口調で尋ねた。

ユートリアは「特にないけど……」と少し考え込んで、


「脅迫文の事件の調査隊からの報告によると、だいぶ犯人の潜伏先が絞り込めているらしいんだ。

もうあと2〜3日で蹴りがつきそうだってさ」


と言った。ランスが思っていたよりも、順調に捜査が進んでいるらしかった。


「だからまぁ、学校閉鎖の解除は少し早まるかも。もう少し待ってて」


別にこの際、ランスに急かすつもりはなかったが、ユートリアは約束の期限が迫っているからか少し落ち着きがないように感じた。

自分のカップが空になると、2人に挨拶をしてすぐどこかへ行ってしまった。


「……何しにきたんだ? あいつ」


そう言ってノアに視線をやっても、答えは返ってこなかった。


――――――――――――――――――――――――――――――――――


その日の講義はほとんどが実技だった。

クラスの生徒は訓練場に集められ、教員の指示のもと魔法の精度を磨いている様子だった。


校外を隔てる防壁が近く、日陰がたくさんあったのでランスは涼みながら見学していた。


何をやっても許されていたので、本を読んだり実験結果を思い出してまとめたり、たまに近寄ってきたサンに絡まれたりしていた。

ノアは講義の邪魔をしないことを条件に、ランスの目の届くところで遊んでいるのを許された。

教員やクラスの生徒からは、緊急事態下で避難しに来た弟だと思われていた。


シグリアはふと、ランスの近くで歩いているノアに目をやった。あの日、自分に巻き込まれなくて本当に良かったと感じた。

そしてタール教員に連れられ、こっそり校外に出た時に使った非常口が、そういえばあのあたりだったなと思い出した。


重い鉄製の扉が出入り口を2重に塞ぎ、それぞれの扉には錠前と鎖が撒かれていた。

開けるのも大変だったそうのに、教員はついて来いと言った手前、後に引けなくなったのか、苦心して解錠していて申し訳なかった。


あの扉はあの後また閉じられ、鍵も複数付けられた。

もうしばらくは開けられないだろうと思われた。


「……あれ?」


良く見ると鉄の扉の間に、微かに隙間があるように感じた。

この間、最初に見た時はピッタリと閉まっていて、隙間なんか寸分たりともなかったのに。


授業中だったが、少し確認したくなって近づいた。

ちょうど実技も自主練のようになっていて、離れても特に目立たなかった。


突然、後方で誰かが驚きの声を上げた。

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