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第48話 襲撃

シグリアがこっそり学校から抜け出して、祖母の家へ着くと、祖母はすでに学校閉鎖の連絡を受けており、大変驚いた様子だった。

多少の誤魔化しを織り交ぜつつなんとか訪問できたことを伝え、祖母に顔を見せることができて満足し、早々に帰路についた。


帰り道、いつの間にか雨が本降りになっていた。

ふと道の脇に目をやると、ゴミ箱の陰でフードを被り、びしょ濡れになりながら具合が悪そうに座り込んだ男の人を見かけた。


行き交う人の多い道だったが、雨に視界が遮られたからか、あるいは自分の仕事に手一杯なのか、誰も気づいていない様子だった。


「あの、大丈夫ですか?」


シグリアが声をかけると、男の人は顔を上げることもままならない様子で


「すみません、大丈夫っす。少し持病の発作が出ただけなんで……」


と消え入りそうな声で言った。

シグリアは医者を呼ぼうとしたが、頑なに断られてしまった。それでも放っては置けなかったので、何かできないか尋ねると、


「悪いんですけど、この荷物を、書いてある住所に、届けていただけないすか……? 昼のうちに届けたいんすが、すぐに行けそうになくて……」


その住所は路地裏の一角になっていた。特にこの場所から遠くもなかったので、シグリアは快く引き受けた。

今思い返せば、あまりに軽率な行動だった。


シグリアが路地裏を進んでいくと、市街地の喧騒からはどんどん遠ざかっていった。

届け先の住所は空き家に見えた。ドアを何度ノックしても返事がなかったので、仕方なく玄関先に荷物を置いて立ち去ろうとした。


そのとき偶然、浮いた瓦礫を踏んづけてよろけた。

それと同時に誰かの魔法が、自分の身体を(かす)めたのを感じた。


シグリアが振り返ると、今まで誰もいなかったところに誰か立っていた。フードに全身を隠し、右手だけこちらに差し出している。


「国立魔法学校の生徒か?」


男の声が響いた。


シグリアはそこで、脅迫文のこと、閉鎖中の学校を抜け出した身であることが、ある種の現実感を伴い思い出された。

それまでも念頭には置いていたつもりだったが、鍵を開けてくれた教師の口ぶりも相まって、冗談めいた話としてしか受け止めていなかった。


自分の警戒心のなさに呆れ、それと同時に今やらなければならないことをはっきりと感じた。この場をすぐに立ち去らなければいけない。

この男が「J・シーク」なのかも知れない。


シグリアは目線をフードの男に向けたまま、一歩後ろに踏み出した。

それと同時にフードの男は、魔法をシグリアに放った。


「〈水〉の魔法だ」とシグリアは思った。


シグリアは〈琥珀〉の魔法を展開した。

国立魔法学校に入っただけあって、魔力は3200程ある。弱い魔力ではないと思っていた。


しかし右手で展開した琥珀の盾に、フードの男の魔法がぶつかると、シグリアは思わず後ずさった。

相手の魔法に()り負けているのがわかった。琥珀はみるみる侵食され、〈水〉のような魔法がシグリアに届いた。


ジュッと右手の甲が焼ける感覚を覚えた。

思わず「あぁっ!」と悲鳴をあげ、膝をついた。咄嗟に左手から琥珀の太刀を作り、相手の魔法を断ち切って離した。


見ると、手の甲から腕にかけて、相手の魔法が触れた部分が赤く焼け(ただ)れていた。


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