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第34話 特別寮

模擬戦が終わり、この日の講義も終わった。


ランス達はサンの寮を見にいくことになっていたので、そこに向かって歩いていた。


整備された道はあったが、学校周りとは全く違った自然あふれる場所だった。


公園というよりは森と呼んで差し支えないほど木々が生え揃っており、学校の敷地内とはいえ、この辺りに生徒はほとんど来なかった。

それでも道中、ポツポツと大小様々な家があった。物置なのか何かの施設なのか、外から見ただけでは判別つかなかった。


「ほら、あれが俺の住んでいる寮。あの小屋一軒使ってんだ」


歩き出して20分ほど経った時、やっと木々の間にポツンと建っているサンの寮が目に入った。コテージのような一軒家だった。


「すごいな。こんなところにも学生が住める場所があるなんて気づかなかった。何でここに住もうと思ったんだ?」


ランスがそう聞くと、サンは笑いながら


「入ってみたらわかるよ」


と答えた。


ランスたちは家に入ると、思わず息を呑んだ。

そこにあったのは、部屋を埋め尽くすほどの楽器だった。


バイオリン、オルガン、トランペット、フルート、木琴、シンバル、小太鼓、ギター、トライアングル、カスタネット等、一般的に知られている楽器はほとんど見つけられた。

その全てが綺麗に手入れされており、まるでオーケストラの控え室みたいだった。


ジオもミオンも部屋の光景に圧倒されているようだった。

サンは手元にあったギターを持ち、弦を弾きながら言った。


「俺、いつでも楽器が弾ける部屋に住みたくてさ。

早朝でも真夜中でも音出せるところありますかって聞いたら、ここ勧められて、即決した」


サンは思いつくままに曲を弾き始めた。素人目から見ても弾き慣れているのがわかった。


「すごいな、ここにある楽器全部弾けるのか?」


ジオがそう聞くと、サンは音を奏でながら答えた。


「ある程度は弾けるよ。俺、楽器職人の町で生まれたから」


「楽器職人の町?」


チェロの光沢に見惚れながらミオンが聞いた。


「うん、楽器って作るのに色々な工程があるから、それぞれの工程で向いている魔法の人が分担するんだ。

それで一つの町に職人が集まって、みんな切磋琢磨するから質がどんどん上がっていって、評判が広がってまた集まって。


そうやって今では、俺の町では買えない楽器はないってくらい、いろんな楽器が作られているんだ。


だいぶ田舎なんだけど、ちょっと名の知れた演奏家が、わざわざ楽器を買いに来るほどだよ」


へえ、と感心したようにミオンは答えた。


「俺の家ではギターを作っているんだけど、隣の家はトランペット作っているし向かいの家は木琴作ってる。

んで、町の人みんな仲良いんだけど、自分の楽器が1番だって思っているから、遊びに行くと大抵楽器の弾き方叩き込まれるんだよ。


『これが弾けないなんて何事か!』ってさ。


それで俺の町で育った奴らは、楽器ほとんど弾けるようになるんだ」


「随分と面白い町だな」


ランスがそういうと、サンは頷いた。


「楽しい町だよ。どこに行っても何かを演奏している音が聞こえるんだ。

機会があったら遊びに来いよ」


サンは会話の邪魔をしない程度にずっとギターを弾いていた。

自然の静寂と相まってとても綺麗に部屋に響いた。

ランス達が一通り室内を物色し終えるのを見ると、サンはギターを置いて言った。


「じゃあ、飯にするか」 

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