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第31話 開始前

ランス達が自然公園区の第二エリアに来た時には、もうほとんどの班が集まっていた。


パッと見たところ「小さな林」のような印象を抱くその訓練場は、全体でサッカーコート四面分くらいの広さになる。

木々に囲まれ、丘や岩山などでちょっとした地形を形成していた。


「今日はここで訓練を行うよ。最初だし、時間が限られているからね」


ユートリアに言わせれば、この訓練場も小規模なものらしかった。こういう話を聞くと、この学校の敷地の広さに驚かされる。


「戦闘訓練のルールは一般的なものを採用するよ。魔法を当てられたら脱落で、試合から抜けてもらう。

当てられたかどうかは、さっき配った上着を見て判断するよ」


ランスは腕に抱えた白い上着をじっと見た。ユートリアの手にも同じものが握られており、彼はそれを広げて前に掲げた。


「ジオ君」


そう呼びかけて、協力を仰いだ。


ジオは鉄魔法の剣を握り、刀身を伸ばして白い上着を貫いた。

上着は傷ひとつつかなかったが、魔法の当たった部分が青く変色した。


「この上着は魔法道具で、魔法が触れると色が変わるんだ。

この色で魔法が命中したかわかる仕組みになっているから、色が変わっちゃった人は抜けてね」


ユートリアは上着をたたみ直して続けた。


「今回試合時間は30分にしようと思うよ。少し短いけれど、まぁ最初だからね

終了時間の時点で、脱落した人が一番少ないチームが勝ち。同点の場合は、その班の魔力の合計値が低い班が勝ちになるよ」


つまり、魔力の合計値が低い班の方が守りに入れるということだろう。バランス調整としては妥当だった。


「この班は魔力が高いの2人もいるから、わりと攻めにいかないといけないのか。ジオの荷が重いな」


サンは他人事のように呟いた。


「……いや、お前も魔法を使えよな」


ジオが念を押すように口を開くと、サンは難しそうな顔をした。


一通り説明が終わったのでユートリアはそれぞれの班にスタート位置を決めるよう呼びかけた。

ランスはユートリアに近づいて尋ねた。


「なぁ、俺抜けていいか?」


「え? どうして? 参加しない理由なんてあったっけ」


ユートリアは当然の疑問のように聞き返した。


ランスは科学は魔法と違って、敵意の有無で相手を傷つけるか選べるものではないことを説明した。


「そうなんだ。確かに、模擬戦で怪我をさせられると困るな……君のその不思議な力は、控えてもらうことになるかも」


ユートリアは少し考え込んでから続けた。


「まず、前提として参加するかは君が決めていいよ。

でも、僕としては参加してほしいな。魔法がどんなふうに使われるかも学んで欲しいから。いざという時のためにね」


「いざって時が来るとも思わないけど、貴族でもあるまいし」


ランスがそういうと、ユートリアは少し真剣な面持ちで言った。


「そんなことないよ。この学校の学生を狙う事件だってあるんだ」


その声はかけらもふざけていなかったので、ランスが少しの間言葉を継げないでいると、


「……まぁ初回だし、今日のところは参加してみたら?」


とにこやかに返された。


ユートリアとの一連の会話を班員に伝えると、


「じゃあ参加できるな。よかった」


とサンが当然のように参加する解釈をした。


「ね」


とミオンも同意するように頷いた。


「いや、普通に戦力にならないから、参加しない方がいいと思うんだけど。俺やることないだろ」


「大丈夫だって。多分この班ジオが無双するだけだから」


「そんなわけないだろ」


ランスはともかく、サンのやる気のなさにジオは当惑していた。

とりあえず全員で訓練場に入った。

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