第134話 異変
ランスがグレンから言葉遣いを逆向きに直された直後、不意に、ポンとランスの肩を叩く手があった。
振り返ってみると、馴染み深い声に話しかけられた。そこにいたのはミオンだった。
「あ、やっぱりランス君だ。みんなもいる。と、あれ、グレンさん?」
こんなところで会うとは思わなかった上に、そもそも学校が今閉鎖されているはずだった。
ランスが驚いた表情をしているので、ミオンは首を傾げながら「どうしたの?」と聞いた。
「何でここにいるんだ?」
「えっとね、シグリアちゃんの代わりに、シグリアちゃんのおばあちゃんに会いに行ってたの。
本当は今日、買い物とか手伝う日だったみたいなんだけど、シグちゃん、風邪ひいちゃったみたいで。
用事はもう終わったけど、色んなお店が出てて楽しくて散歩してたら、ちょっと迷子っちゃった」
迷っていたというわりには全く悲観していなかった。もしかしたら慣れているのかもしれない。
それはそうと、閉鎖されている学校からなぜ出られたのかまだ不明だったので、ランスは尋ねた。
「今朝、学校閉鎖されてただろ。何で出られたんだ?」
「え? 学校また閉鎖されているの? 私、普通に出れちゃった」
「何時頃に出たんだ?」
「……8時半くらい?」
確かにその時間なら、まだ学校が閉鎖される前だった。
ランスは合点がいった後、ミオンに学校が閉鎖されていることと、修正者集団から犯行声明が出たことを説明した。
ミオンは口元を隠しながら「そんなことになってたんだ」と驚いた。
「こっから1人で帰るのも危ないだろうし、俺らと一緒に帰った方がいいんじゃね? グレン先輩もいるし」
サンが提案すると、ミオンはチラッとグレンを見上げた。そして何かを思い出したようにあっと言った。
「えっと、あの、昨日もらった生徒会の推薦、あれ、私、その……」
昨日ジオがもらった生徒会役員の推薦状を、1年次席であるミオンも受け取ったみたいだった。
ただミオン自身は生徒会役員の選任について全く知らず、寝耳に水な話だったようで、承諾するべきかどうかもわからない様子だった。
グレンは思い出したように「あぁ」と言ってから、
「やりたくなければ無理しなくていいし、今すぐ答えを決めなくてもいい。
来週の生徒会員の集会に参加した後で断っても問題無いから、迷っているなら、その集まりだけでも一回来ると良い」
と続けた。
それを聞いてミオンは少し安心したような様子で、わかりましたと頷いてから、心配が晴れたように
「じゃあ、私も一緒に帰ろうかな」
と答えた。
そしてランスたちが歩き出そうとした時、ミオンはまたあっと声を出して、付け足すように質問した。
「そういえば、さっきノア君を抱っこしていた女の人、ランス君の知り合い?」
ミオンの言葉に、ランスはパッと周りを見回した。ノアがいない。




