第129話 今朝のこと
「お前らも、不要不急の外出は避けたほうが無難だぞ。用事が終わったら真っ直ぐ帰りな」
オルガにそう声をかけられ、サンはまた小さく言った。
「今朝の学校閉鎖も、これが原因だったんかな。なんで学長言わなかったんだろ」
それはもっともな疑問だった。
危険な内容だから多少の混乱は生まれるかもしれないが、それでも周知したほうが生徒一人一人の警戒を強められたし、学校閉鎖にももう少し正当性を主張できたというのに、ユートリアは何故かそれをしなかった。
その結果、ランスを説得しきれず、学校の外に出してしまっている。
ランスは少し考えた後、ある仮説を立てた。
「やっぱ知ってたんなら、言ってたと思う。言わないメリットがない。あの時、本当に知らなかったんじゃないか?」
「えぇ? でも声明届いたの昨晩なんだろ。脅迫状の時みたいに、すぐ王室から学校に連絡が来て、少なくとも今朝までには知ってたはずなんじゃないか?」
「本来はそうだと思う。だから何か、ヒューマンエラー的なミスがあったんじゃないか。
前回の脅迫状は魔法学校が対象だったけど、今回の犯行声明はどこもターゲットになり得るから、王国の主要部分に余すことなく伝達する必要がある。
さすがにちゃんと伝達経路は設計してたと思うけど、どこかの誰かのちょっとしたミスで遅れたり届かなかったりする可能性はある。
今回は偶然、市街地までは連絡がうまくいったけど、魔法学校への連絡は滞った。
学校閉鎖の判断をした直後はまだ王室の使いからの連絡は届いていなくて、偶然市街地に行っていた職員とかから、情報を拾った状況だったんじゃないか」
ジオとサンは、今朝のユートリアの言葉を思い出していた。
(ちょっと気になる連絡があって、それに対して対策が必要かどうかもわからなくて、わからないうちは、大事をとって、予防策をとっておきたいんだ)
確かにあの時の発言は、「届くべき情報が届いていない」時のそれのように感じる。
ランスは最後に「勝手な想像だけど」と付け加えたが、ジオにもサンにも、今のところ一番妥当な説明だと思われた。
「だとすると、王室側のミスだろうな。多分今頃はもう、ちゃんと連絡が入っているだろうな
……心中穏やかじゃなさそうだ」
ジオはユートリアの内心を察し、慮るように呟いた。




