第128話 犯行声明
「グレン中尉?」
サンが声の方を向くと、軍服を纏った男がいた。
年齢はサンの父親と同じくらいだと思われ、顔は浅黒く日焼けし、小さな皺が微かに刻まれていたが、身体は軍服の上からわかるほど若者にも引けを取らないほど鍛え上げられており、歴戦の軍人としての貫禄があった。
「オルガ軍曹。ご無沙汰しています」
グレンはそう答えながら、軽く会釈をした。
あれ、とランスは感じた。
「あぁ、久しぶり。仕事中か? 今日の任務、グレン中尉には回ってなかったと思うが……」
「今日は非番です。ユートリア様からの頼まれごとを少し」
「あぁ、またユートリア准将からの特別任務か。お前も大変だな」
そういうとオルガ軍曹と呼ばれた人物はガハハと笑い、グレンの肩を軽く叩いた。随分関係が深いみたいだった。
その後ランスたちにも、「魔法学校の生徒か。よろしくな」と気さくに声をかけた。
グレンは軽く辺りを見回してから言った。
「今日の任務って言いましたが、何かあったんですか? 巡回している軍人が普段より多いみたいですが」
「は? お前、あの件聞いてないのか?」
「あの件?」
グレンが何も知らない様子なのを受け、オルガは驚いて続けた。
「『レクティフィカトル』が今朝、犯行声明を出したんだよ」
「……れくてぃふぃかとる?」
後方で聞いていたサンが小さく呟いた。
ジオはオルガの発言に驚きを浮かべながら、サンに小声で応えた。
「組織的な犯罪を何度も成功させていて、今、国で一番警戒されている修正者の集団だ。
レクティフィカトル(rectificator)は元々、『修正者』を表す古語だけど、
ある時から自分たちを真の修正者だとして『大文字の修正者(Rectificator)』を名乗る集団が現れた。
その勢力が力を増して、最終的に元の意味すら追い越した。
現代ではほとんどの場合、『レクティフィカトル』と言ったら修正者組織の『大文字の修正者』のことだ」
「ほええ」
サンはまだことの重大さを捉えきれておらず、気の抜けた返事をした。
「犯行声明って、いつ? どんな?」
グレンは冷静に質問を重ねた。
「昨晩だったか。王室に、ご丁寧に『大文字の修正者の署名付きで声明が届いた。
『同士を増やす』ってな。こういう犯行声明が出された時は、あいつらは必ず、一定の成果をあげるまで止めない。
つまりこれから、あいつらが満足するまで、魔力5000以上の奴らが狙われるってわけだ。
気をつけろよ。勧誘か説得か買収か恐喝か、あらゆる手段を使って奴らは自分たちの目的を達成する」
オルガはそういうと、釘を刺すようにグレンを見た。が、すぐランスたちに視線を移していった。
「もちろんこれは、魔力が5000にいっていない奴が無関係ってわけじゃないからな。
修正者の集団は、概して手段を選ばない。周りの人間を巻き込むことにも躊躇いがない。
いつどこで、何が起こるかわからないから、こうして軍の巡回も強化しているんだ。
お前らも、不要不急の外出は避けたほうが無難だぞ。用事が終わったら真っ直ぐ帰りな」




