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第127話 面接

ランスとジオも後方へ向かい、グレンと合流した。


「てか、先輩は何か食いますか? あそこのチーズパンとか、めっちゃ美味そうっすよ」


ランスとジオが近づくと、やっとサンの声が聞こえた。


「いかない。というか、俺のことは気にしなくていい」


グレンは表情を変えず言った。

任務として護衛に当たっていることに徹底している様子で、わざとらしいほどに淡々としたその態度から、必要最低限の会話を避けているのがわかった。


「ええ、腹減ってないんすか? 今朝学校出てから何も食べてなくないすか? 今日朝何食べたんすか??」


そんなグレンの暗示も、サンには効かなかった。

サンが生まれ育った町では子どもはみんな仲がよく、年上も年下もただ生まれる時期が少しずれただけの友達候補だった。

出会った相手と仲良くならない、という発想がまず無くて、相手から明示的に拒否されない限りは躊躇いなく距離を詰めてしまうのが普通で、

事前にジオから忠告を受けなければ敬語で話しかけるのも忘れてしまっていたかもしれなかった。


それに今まで上級生と関わる機会はほとんどなかったのもあいまって、目の前の3年首席に興味が尽きず、質問を重ねた。


グレンはグレンで、サンのようなタイプの後輩に会ったことがあまりないらしく、爛々と目を輝かせて見上げながら回答を待つサンに若干困惑していた。


「……腹減ってないし、別に空腹でも問題ない。いざとなれば携行食がある」


「何持ってんすか?」


サンは間髪入れずに次の質問をした。


「ビスケット、と干し肉」


「へぇ、美味いんすか?」


「美味くはない」


「マジすか。じゃあ……」


グレンとしてはパッと回答した方が早く会話が終わると考えたのかもしれないが、サンは回答がくるとさらに興味を強くして、聞きたいことが次から次へと溢れてくるようだった。


グレンは質問が重ねられるたびに当惑の色を濃くしたが、後輩からの関心を(ないがし)ろにするつもりもないらしく、聞かれたことには意外と素直に答えていた。

ずっと後方に下がるタイミングを見計らっていたが、結局サンとの会話を振り切れず、そうこうしているうちにノアが(おもむろ)にグレンの手を繋いだ。

子どもの手を振り払う気もないようで、結局ランスたちと並行する形になった。


「先輩って軍人なんですよね。学校通いながら軍の仕事もしてるってことすか?」


サンの興味は、グレンの肩書きに移っていた。観念したのか、グレンは必要に準じてさっきよりも詳細に回答してくれるようになった。

面接のような一問一答が続いた。


「基本的には学校を優先している。平時の訓練は学校が終わった後に向かう。

 何か事件とかがあれば呼び出されて、その時は任務を優先する」


「じゃ、学校がある時でも呼ばれれば行かなきゃいけないんすね。大変だ。外出の許可証持ってたのは、軍の仕事する必要があるから何ですか?」


「そうだな」


「へええ。てか、先輩3年首席なんすよね。魔力いくつなんすか?」


サンがその質問をした時、なぜかランスには、グレンが肩を強張らせたように見えた。

一瞬の間言葉に詰まり、その後すぐ何事もなかったかのように口を開いた。


「7142」


「マジすか! 7000いってんすか、すげぇ! めっちゃ高いっすね」


それもそのはずで、グレンは3年になった時点で、歴代の学生の中でも5本の指に入るほど魔力が高い。

ユートリアのせいで若干霞んでしまっていたが、18歳でこの魔力に達しているのは偉業と言って差し支えなかった。

類まれな才能を有しながら、人より遥かに努力を重ねた賜物で、在学中だけではなく、卒業してもしばらく語り継がれるのが容易に想像できた。


だからランスは、魔力よりもグレンの反応の方が引っかかった。

必要以上に無骨で、それどころか、それまでの回答と比べるとどこか後ろ向きな態度のように感じた。

謙遜が入っているのかもしれないし、褒められすぎて一周回って辟易しているのかもしれないし、学校中でも有名なグレンの魔力をサンが知らなかったことに驚いただけかもしれないが、それらの中のどれにしてみても、違和感が拭いきれない反応だった。


サンの称賛に対しても、特に何の反応も示すことなく、ただ無表情を貫いていた。


「あ、そういえば、軍人って、色んな階級あるんですよね。先輩の階級って……」


サンはここに来てやっと、グレンに近づいた当初の目的を思い出した。

元々はグレンの軍人としての階級がわからないから、聞いてみようとして近づいていた。


しかしサンが言葉を続けようとした時、突然知らない声に遮られた。


「グレン中尉?」


サンが声の方を向くと、軍服を纏った男がいた。

年齢はサンの父親と同じくらいだと思われ、顔は浅黒く日焼けし、小さな皺が微かに刻まれていたが、身体は軍服の上からわかるほど若者にも引けを取らないほど鍛え上げられており、歴戦の軍人としての貫禄があった。

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