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第125話 買い物


「ランス、今何買ったんだ? 宝石?」


「モナズ石だ。精密機械を作るのに必要な、希少土類元素を多く含んでいる。こういう石はレアアースって呼んでいて、なるべく集めている」


へぇ、と返事をし、サンはランスの手の上に置かれた鉱石をまじまじと見つめた。

ランスはその石以外も、物好きな鉱石収集家が販売していた何種類もの石を、どこで採れたのか細かく確認した後、購入していた。

隣で懸命に話を聞いていたノアが、それぞれの好物の産出場所を手元の地図に書き込んだ。


「スマホとか作るのに必要な材料は、採れる場所が限られているってことか?」


横で聞いていたジオも興味深げに尋ねた。


「そうなるな。ごく少量なら探せば近くで見つけられるかもしれないけど、ある程度使いたい場合は、多く見つかる場所探して採ってきた方が効率が良い。

これらの石は後で成分分析して、使えそうなものがあれば、授業がある日にでもノアに採集してもらう」


博士の〈浮遊〉の魔法を引き継いだノアは、実は飛べる。

博士も自分の身体をものとして浮遊させて移動し、数日のうちに世界中を巡って各地のデータを収集することができた。


一般的に自分の魔法で傷つくことはないから、どんなに早く移動しても、風圧に押しつぶされることも、空気の冷たさで肌が切り裂かれることもないらしい。

「やろうと思えば、光速だって超えられるかもな」と博士は冗談のように言っていたが、魔力の異次元度合いを考えるとあながち冗談ではなかったのかもしれない。しかしいくら当人に影響がなくても、周りの物体に干渉し、甚大な被害を出す可能性があるので、実際に光の速さで移動しようとはしなかった。


いずれにしても、博士と同様、ノアもある程度の速さで移動することができるので、国境を越えた鉱石採集も容易だった。

だから今日は鉱石収集家や商人から、有用な石の採集場所の情報を集めるのが主な目的だった。

当然眉唾(まゆつば)な情報も混ざっていたが、正しい情報も集められたので、ある程度の成果はあった。


この日はちょうど、ちょっとした行商人の連隊が数ヶ月ぶりに帰ってきただとかで、市街地の大通りにいくつもの露店が出ており、街全体が活気づいていた。普段現れない商人からも色々なものが買えた。


「それにしてもすげぇ規模だな。俺の町で年一回やるでかい祭りの時よりも人がいる。あ、あれ美味そう。買ってきて良い?」


サンは休日の市街地の活気に驚いた様子であたりを見渡し、興味がある場所には吸い寄せられるように近寄った。

純粋に楽しみ、思う存分羽を伸ばしているサンに、ランスは思わず感心させられた。


極力無視していたが、ランスはずっと、常に10mほどの距離を保ちながら、見張るように黙って後を着いてくる3年首席が気になってしかたなかった。


ランスたちが止まれば歩みを止め、ランスたちが進めばまた歩き出した。

一度サンが遠くの出店(でみせ)に引き寄せられた時、「あまり離れるな」と一言だけ口に出したが、ほとんど何も言わず静かに着いてきていた。

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