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第121話 検証

 ハーキムには3年首席に見張られたまま、1年に喧嘩を売る度胸なんてなかった。

しかしこのまま帰って1年に舐められるのもままならなかったようで、あろうことか、3年首席を巻き込もうと画策した。


「グレンさんはどう思います? 今年の1年、たるんでると思いませんか?」


「は?」


たった一文字の返事にも他人を圧する気迫があり、ハーキムは少したじろいだ。

しかしここが(こら)えどころと考えて、負けじと3年首席に歩み寄った。


「決闘の話聞きましたか? 魔法使ってない奴に、魔法使って負けた奴がいるんですよ。

それが今年の1年の首席だって言うんだから、1年全体の実力もたかがしれていますよね」


「決闘……?」


グレンはハーキムの言葉の本意をわかりかねているらしく、ジオとランスを交互に見た。


グレンはあの決闘の日、ユートリアと一緒に学長用の特別席で試合を見ていた。つまりランスが決闘相手だと知っている。それなのに2年はそのことに気づかないまま話を進めているので、一瞬状況をうまく飲み込めなかったみたいだった。


しかし察しが良いのか、ハーキムがつらつらと講釈を垂れる中で徐々に話の筋を理解してきたらしく、ハーキムを向いて尋ねた。


「じゃあ、お前だったら勝てたのか?」


「魔法使ってない奴にですか? さすがに勝てますよ。油断しなければ誰だって勝てるでしょ」


ハーキムが調子良く答えると、グレンは一言


「そうか」


と言って、左手を開いた。


ハーキムはグレンが左手を動かすのを目で追っていた。何か取り出したのかと思って、覗き込んだ。



次の瞬間、ランスの目の前が急にパッと明るくなり、ゆらめく光が広がった。

が、一瞬のうちに視界は遮られ、目の前に鉄の壁が浮いた。


グレンの魔法は〈マグマ〉だった。

ハーキムがそれを思い出すのより先に、グレンの手から、煮えたぎる溶岩が噴出した。


「うわああああああああ!!!!!!!!!」


ハーキムは手で顔を覆ったが、何の意味もなかった。

メラメラと燃えるようなマグマが全身をめがけて降り注ぎ、炎のような眩しさで顔全体にまとわりついた。眼球にも直撃し、視界一面が赤く白く瞬いた。


腰を抜かし、振り払うようにバタバタと一通りのたうちまわった後で、やっと身体中に目を向けた時、自分の感じた暑さや痛みが幻覚だったことに気づいた。


敵意のない魔法だった。


「グレンさん、何を…………?」


今しがた感じた恐怖を消化しきれておらず、半ば呆然としてハーキムが尋ねた。


「あの1年は、お前より油断していなかったみたいだが」


グレンはそういうと、首の動きだけでハーキムの後方を指し示した。

そこには〈鉄〉の魔法を展開しているジオがいた。〈マグマ〉の魔法は、グレンを中心にそこにいた生徒全員に降りかかったが、魔法で対処できたのはジオだけだった。


グレンの左手からは、まだドロドロとした溶岩が垂れている。手から離れると、地面につく前に消えた。


ハーキムはとめどなく流れる溶岩を見るだけで、自分の身体を燃ゆる津波で焼き尽くされる幻影が鮮明に浮かんだ。

恐怖に顔を強張らせ、何やら許しを乞うような言葉を1つ2つ発した後、取り巻きと一緒に逃げるように走り去った。

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