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第115話 今さら

「そしてコーサ・アレンダークのことも探していた」


ユートリアは一呼吸おいて言った。


「そう……探していたんだ。今は亡くなってしまったみたいだけど」


そう言うと、頭痛でもするかのように頭を抑えた。

ランスは少し考え込んでから尋ねた。


「待て、確かに博士……じゃなくて、コーサ・アレンダークは、裏切り者を知っていたかもしれないけど、それを今、明らかにすることに何か意味はあるのか?


裏切り者も国を作っていたとして、当然そこの国民は党首が悪役側だったなんて知らない」


「そうだね。僕のお祖父さんが裏切り者だった可能性も、十分ある」


そこまで平等に疑いをかけているのかと、ランスは少し驚いたが、一旦質問を続けた。


「……だとしたら、わざわざ昔の悪役を今さら暴き立てる必要はあるのか?

安心できると言われたら、そうかもしれないけど。そんな各国が懸命に捜査するような案件だとも思えないんだけど」


ランスの質問に、ユートリアは理解を示した。しかし肯定はしなかった。


「確かに、今はもうあの時の裏切りの首謀者も心を入れ替えて、他の国と同じように、あの帝国の支配体制を嫌忌(けんき)していたら、裏切り者を見つける必要はないかもしれない。


……けど、裏切り者の一国は今もなお、シエル大帝国の国の復興を目指しているみたいなんだ。


シエル大帝国の再興を目指す人たちは、自らを『修正者』と呼んでいる。中には昔から暗躍する大きな集団もあって、たまに、大きな事件を起こすところがある。


そういう事件に、どうやら裏切り者の王国の元首が1枚噛んでいるみたいなんだ。

主犯を捕らえて取り調べとかすると、明らかに背後から大きな支援を受けていることがわかる。


つまり、裏切り者の一国は、表向きは各国とそれなりに外交しながら、裏ではかつての帝国のために動いている。


だから、この状況を打破するためにも、それぞれの国が裏切り者を調べていた。

そしてコーサ・アレンダークのことも探していた」


 ユートリアはまた顔を伏せて、恐る恐る、といった調子で尋ねた。


「ランス君の知っている博士は、もう亡くなってしまったんだね。

……けど、その人はランス君に、何か話したり遺したりしているの? 裏切り者について、何か心当たりはないかな」


そんな質問を投げられても、ランスの記憶には、それらしい人物の情報なんてなかった。

ただ魔法学校入学初日、帰宅後に読んだ手紙の中身を思い出した。


――――

段階があるんだ。慌てると、色々と弊害が出るかもしれないんだ。

簡単に言えば、すごく身勝手で打算的で最悪なんだが、俺が昔やらかしたことにまだ採算がついていなくて、ランスに代わりにやって欲しいことがあるってだけなんだ

――――


博士が用意した遺言状は、最近届かなくなった。ただ、しかるべきタイミングできっと届く。

博士がランスにやってほしいこととは、裏切り者の告発なのだろうか。だとしたら、いつか裏切り者の名前が書かれた、爆弾のような遺言状が発掘されるのかもしれない。


ランスはユートリアの質問に対して、一応知っている範囲で答えておいた。

博士はいくつか遺言を残していること、ただそれらはまだ全て明かされていないこと、ランスの入学にも何かしらの意図はあるらしいことなどを、一通り説明した。


「そうなんだ……」


とユートリアは頷くと、また腕で目元を覆った。そして独り言のように言った。


「……王族のこと嫌いになったかな」


「は? 何で」


質問の意図が汲み取れず、ランスは聞き返した。別に(もと)からそんなに好きではない、とあえて言うのは止めておいた。


「ロシュフォール家の人間が、この国を統べる資格なんてないのに、王族になっているからだよ。

しかもランス君の恩人の功績にただ乗りするような形になってる」


別にランスは、そんなことには微塵も関心がなかった。是非を問われたとしても、今の王家のあり方が間違っているとは思われなかった。


コーサ・アレンダークが音沙汰もなく消えた以上、ロシュフォール家が台頭しなければいけなかったことは汲み取れる。それに先代国王ステフレッド・ロシュフォールのは、革命だけではない。彼の統治が始まって、飢餓や抑圧に苦しむ国民は減った。

だからランスはどちらかというと、ユートリアの方が厳しい目線を向けている方が気になる。


「本人が消えた以上、誰かがその穴を埋めないといけないだろ。

それに、俺の知っているコーサ・アレンダークは少なくとも、王の器なんて全くなかったよ。あいつが統治なんてしたら2日で国が滅ぶ」


ランスが大真面目にそういうと、ユートリアは久しぶりに少し笑った。

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