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第114話 不調和

「英雄の1人が裏切った。味方を装って、隙をついて、コーサ・アレンダークを捕らえた。そこで最初の革命が打ち切られた」


英雄の1人が裏切った。その言葉の深刻さは、深く考えなくてもわかった。

ユートリアはなお語り続けた。


「6人の英雄の中に、多分最初から裏切り者がいたんだ。お祖父さんたちの革命計画もおそらく漏れていた。

お祖父さんたちは帝国に惨敗したけど、裏切り者がいなかったら、もしかしたら惜敗くらいにはなっていたかもしれないね。


……そしてその裏切り者は、コーサ・アレンダークの襲撃時にも見事な働きを見せて、彼の革命までも一時的に阻止してしまった。


でも、結局、コーサ・アレンダークを止めることは不可能だったんだ。彼はその後、自力で抜け出した。

それから2度目の襲撃を実行して、やり遂げたけど、身内の裏切りはあれほどの天才にも1ヶ月の逃亡と療養を()いた

その結果、革命は2度にわたって行われた」


「待て、6人の英雄は、その後1人一つ国を作ったんだろ。

その中の1人が裏切り者だとしたら、そんなに仲良く、1人一国作るなんてしないんじゃないか?」


ランスは浮かんだ疑問を自然と口に出した。ユートリアが答える。


「もちろんそうした方が良かったと思うよ」


「じゃあなんで」


ユートリアは少し呼吸をおいて続けた。


「わからなかったんだよ。裏切り者が誰なのか。


僕に伝わっている話だと、

お祖父さんたちがコーサ・アレンダークに逃がされた後、前もって決めておいた一時避難場所に隠れた。そこには、6人全員いた。


裏切り者は随分演技派だったんだろうね。全ての革命の芽が摘まれるまでは、完全に味方として振る舞い続けていたらしい。


もちろんお祖父さんたちは、自分たちの中に裏切り者がいることがわかっていた。

だからコーサ・アレンダークが革命を完遂するまで、これ以上の裏切りが実行されないように、お互いがお互いを見張りながら、裏切り者を探し続けた。


だけど誰かわからなかった。あいつが怪しいと言えばそう言った人も怪しいと言われて、決定的な証拠なんてなくて、人狼を搜索するような状態が続いて、結局、対外的には、全員を英雄として扱うしかなかった。


……本当は6人で1つの国家を造りたかったんだと思う。不必要な分断は争いの種を蒔くだけだから。

でも、裏切り者が1人いると知っている状態で、とてもじゃないけど、統一国家なんて造れなかった。


だから6人がそれぞれ、6つの国を造った。その後も、誰かが裏切り者だという事実を飲み込みながら、表面上は平和な外交関係を築き続けている。

けど……」


ユートリアは少し発言に迷った様子でまた口を開いた。


「コーサ・アレンダークは、裏切り者を知っている。

裏切られた時点で襲撃が打ち止めになったのだから、他の5人が生き延びた以上、彼が最後に助けようとした人が裏切り者のはずなんだ。


だから各国の王族はみんな、コーサ・アレンダークを探している。……いや、探していたんだ。今は亡くなってしまったみたいだけど」


ユートリアはそう言うと、頭痛でもするかのように頭を抑えた。

ランスは少し考え込んでから尋ねた。


「待て、確かに博士……と言うより、コーサ・アレンダークは、裏切り者を知っていたかもしれないけど、それを今、明らかにすることに何か意味はあるのか?

裏切り者も国を作っていたとして、当然そこの国民は党首が悪役側だったなんて知らない」


「そうだね。僕のお祖父さんが裏切り者だった可能性も、十分ある」


そこまで平等に疑いをかけているのかと、ランスは少し驚いたが、一旦質問を続けた。


「……だとしたら、わざわざ昔の悪役を今暴き立てる必要はあるのか? 安心できると言われたら、そうかもしれないけど」


ランスの質問に、ユートリアは理解を示した。しかし肯定はしなかった。


「確かに、今はもう他の国と同じように、あの帝国の統治を克服しようとしていたら、裏切り者を見つける必要はないかもしれない。


……けど、裏切り者の一国は今もなお、シエル大帝国の国の復興を目指しているみたいなんだ。


シエル大帝国の再興を目指す人たちは、自らを『修正者』と呼んでいる。中には昔から暗躍する大きな集団もあって、たまに、国家規模の大事件を起こすところがある。その事件に、どうやら裏切り者の王国の元首が1枚噛んでいるみたいなんだ。


つまり、裏切り者の一国は、表向きは各国とそれなりに外交しながら、裏ではかつての帝国のために動いている。


だから、この状況を打破するためにも、それぞれの国が裏切り者を調べていた。

そしてコーサ・アレンダークのことも探していた」

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