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第113話 何故

 ユートリアは一通り話し終えると、どっと疲労が押し寄せたようで、ソファの背もたれに体を預けた。腕で両目を覆うようにしてしばらく静止していた。


歴史的英雄がかつて起こした革命は、本当はコーサ・アレンダークという1人の力で遂行された。しかしその後、当人は行方をくらませた。

そしてその人物こそ、ランスのよく知る博士であり、ずっと正体を隠しながら科学者として天寿をまっとうした。


ランスは自分の知っていたそれまでの常識から大いにかけ離れたこの革命物語を、どう捉えたら良いのかわからなかった。

そしてここまで整理して、それまでずっとランスに纏わりついていた疑問が、別の様相を帯びてまた浮かび上がってきた。


博士はなぜ、自分を国立魔法学校に入れたがったのだろうか。


きっと何か目的がある。それはこの隠された歴史に、決定的に関わっている。それは果たして、自分が本当の英雄だと証明することなのだろうか。

ランスにはそうは思えなかった。博士の考えはわからないが、少なくともランスが知る限り、真実を白日のもとに晒そうと躍起になる人ではなかった。


ましてやその大役をランスに押し付ける人でもなかった。名誉欲や虚栄心は皆無で、良くも悪くも何も考えておらず、ただ毎日平穏に過ごしていた。


しかし、だとしたらなぜ、ランスを学校に入れる必要があったのだろうか。


「……じゃあ、『コーサ・アレンダーク』が国家機密になったのは、本当の歴史がわかればロシュフォール家をはじめとした今の国家の正当性が揺らいで、色々と不都合があるからか?」


歯に衣着せぬ物言いになったが、博士の目的を理解するために、いちいち語気を気にしているのも面倒だった。

今はただ、もっと情報が欲しかった。


ユートリアは腕を少し上げ、ランスをじっと見つめると、座り直しながら言った。


「半分はそうかもね。でも、別に僕はそれだけのためなら周知しちゃっていいと思っているよ。

今更新事実で王家の信頼揺らいで下されるほど、今までの国家形成が評価されてないんだとしたら、それまでだし」


「半分?」


含みのある言い方だった。ランスはすかさず聞き返した。


「……革命が2回に分けて行われたことは、ランス君も知っているでしょう?」


もちろんそれは知っていた。常識みたいなものだったし、ヨルクが講義で、ご丁寧に日付まで触れて説明していた。


「知ってるよ。革命は60年前の7月14日と8月15日、2回にわたって遂行された」


「どうして1回目の襲撃で終わらなかったのかは知っている?」


「それは知らないけど、余力がなかったんじゃないか?」


とりあえず適当なことを言ってみた。ユートリアは首を振った。


「コーサ・アレンダークの力を持ってすれば、一回の襲撃でシエル大帝国を滅ぼせたはずなんだ」


「じゃあ、なんでだよ」


ランスが尋ねると、ユートリアは少し考え込んだ後、覚悟を決めたように語り始めた。


「……最初の襲撃の目的には、6人の英雄の救出も入っていた。


革命を試みた6人の英雄は、ものの見事に惨敗して、シエル大帝国に囚われた。

見せしめにでもするためか、しばらくは生かされていて、コーサ・アレンダークは襲撃の傍ら、彼らを探し出して逃していた……」


「じゃあ、捜索に時間を取られて革命の完遂に間に合わなかったってわけか?」


ユートリアが少し言葉を詰まらせたので、ランスは続く言葉を推察した。ユートリアは首を横に振った。


「違うんだ。逃すのだって、そんなに手間取らなかったはず。ただ…………


英雄の1人が裏切った。味方を装って、隙をついて、コーサ・アレンダークを捕らえた。そこで最初の革命が打ち切られた」

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