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第102話 少し過去1(ヨルク)

 数年前、ユートリアは国立魔法学校の学長に就任することが決まった。

逃げるように王城から出たので、正式な就任よりも数ヶ月も早い時点から魔法学校にとどまっていた。


国立魔法学校に着いて彼が最初にやったのは、そこで働いていた教員たちへの挨拶だった。

一人一人を訪ねて行き、これからよろしくと言って回った。

会いに行く前、それぞれがどんな仕事をしているのか、どんな性格の人なのかを事前に確認していた。

資料に目を通すこともあれば、当時王家の人間の代理として学長職を兼務していた理事長に話を聞くこともあった。


「次はどなたの挨拶に行きますか?」


理事長に聞かれ、ユートリアはパラパラと教員名簿をめくった。


「ヨルク先生にしようかな」


ユートリアがそういうと、理事長は意味ありげに言葉を詰まらせた。


「あぁ……その人ですか……そうですね。

もしかしたら、ユートリア様は学長就任を機に、雇用契約を再考した方がいいかもしれません。特にその人に関しては」


「どうして?」とユートリアは理由を尋ねた。


「理由はいくつかありますが、まず、経歴が本学校にふさわしくないんです。

どういうコネがあったのか、なぜか王室関係者からの紹介状を持って転がり込んだみたいですが……偽造でもしたんじゃないかと思っています」


「王室関係者の紹介状なんて、そうそう偽造できないでしょ」


「まあそうですが、そう思ってしまうくらい、今までの経歴が本当にパッとしないのですよ。それに……」


理事長は一呼吸おいて続けた。


「それでいて、仕事を全然していない。

名目上は第4図書室の司書なんですが、生徒の来ない図書室の管理なんて、いてもいなくても変わらないでしょう。

他の業務をしようともしない。積極性にかけ、不真面目、かつ怠惰。教師の風上にもおけませんよ」


ユートリアは色々と思うことがあったが、一旦は「そうなんだ」と聞き流すように返事をした。

何をしたらこんなに散々言われるんだ、と思わず口にしたくなるくらい、理事長の評価は手酷かったが、他人の言うことなんて鼻から当てにする気はなかった。

そんなことをするよりも、自分で会ってみたほうがいい。


「それに、よりによって唯一やっている仕事が『古書の管理』って……何か企んでいると思いませんか?」


「……と言うと?」


ユートリアは理事長の意図を確認するように聞いた。


「古書を読めば、当然、かの史上最悪の支配国家、シエル大帝国の思想に近づけるわけです。

片端(かたわ)の人間が自分の不幸を呪って『修正者』になる。ありそうな話じゃないですか?」


そういうと理事長は下卑た笑いを浮かべた。ユートリアが眉を顰めたことに、気付いていないみたいだった。


「あの、理事長、ちょっといいですか?」


第4図書室に向かう道で、ある教員が呼び止めた。決済資料に不備があるとのことだった。


「そんなもの後にしないか! ユートリア様をご案内しているんだぞ!」


と理事長は怒号を発したが、ユートリアに促され渋々執務室に移動した。

ユートリアは1人で第4図書室に向かった。

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