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双龍の誓い〜桜龍と白龍〜

作者: のんか

龍の話が好きです。




とある国、その昔一本の桜があった。


未だ人の領域に入らず、人ならざる物たちの

それは一つの拠り所。


この世界の天と地、この世とあの世。

その両方を行き来できるのが、この世界の唯一の存在

龍である。


その龍は桜が色づき始めると天より舞い降り、

桜が散る頃に地から飛び立つ。


それは龍にとって、季節を重ねても絶やすことのない

何事にも変え難い楽しみだった。


地に降り立つと桜に語らいで、花ひらくのを心待ちにした。


桜が花ひらき、美しい姿を見て感嘆する。


時は流れゆき、

人は争いながら人間の領域を広め、人ならざるものである龍は多くが天界のあの世に身を守るようにして去っていく。

人の知らぬうちに。


だが、後に人から桜龍と呼ばれる龍は桜に恋焦がれ

気づけば唯一地界のこの世に姿を見せる人ならざるものとして存在していた。


桜龍は人に桜を守ってもらう代わりに人の間に和平をもたらす。


その頃から何百何千と約束は守られてきた。


だがそれは突如終わりを迎えてしまう。


桜龍が大事にしてきた桜を一目見ようと

好奇心旺盛な若い龍、白龍が天から降りたつ。


白龍は桜の何がそんなに良いのかわからなかった。

だが知りたくもあった。桜龍を好いていたから。


白龍もまた桜龍に恋焦がれていたのだ。

しかし白龍は若く短慮であった。

この桜がなくなれば、桜龍は私を見てくれるかもしれない。そんな一抹の希望に、かけてしまったのだ。


白龍の言葉は桜の木に傷をつけ、口からの咆哮が桜の木を焼いた。跡形もなくなくなった後、白龍は気づく。

桜の木の精霊たちに教えられる。

大切な者の大切な唯一を奪ったと。

これで桜龍にとって、この世界で唯一許せない者になると。


そんなことを今更言われても、もう桜は跡形もなく。

精霊たちも新たな拠り所を探しに行ってしまった。


白龍に手を差し伸べるものはいなかった。


そうこうしてる間に、桜龍がこの地に降り立つ。


桜龍も白龍を少なからず思っていた。だが事情を知った桜龍は白龍などの話はもう聞きたくないと、

心を閉ざし天界へ引きこもってしまった。


白龍は自分の気持ちを優先することの愚かさを学んだが、

それを活かす機会などもうないのだろう。

桜龍が好きなあまり暴走してしまったことを悔いた。


しばらくして、白龍はどうにかして謝ろうと手紙を書き続けた。白龍はあの世を管理している龍王様にあの世から追い出された為、地界から天界への手紙は人の目にも届いた。

それは瞬く間に人の間で語り継がれ

いつしか御伽話として知られるだけのものとなる。


あんなに広かった人の領域も。時は流れ、平和に身を置きすぎた代償に人の出生は少なくなり、人の領域はちいさくなっていったからだ。

また以前の地、桜の墓地に人ならざるものたちは集う。

ただ唯一、桜龍は天に。


未だ恋焦がれた白龍は遂に狂ってしまった。


白龍もまた自分の事が嫌いになってしまっていた。

桜龍もまた自分のせいだと自責の念に囚われていた。


そんな時、1人の少女が彼の地にやってきました。

精霊と話せるその少女は龍を思い歌を歌う。


双方の思いを込めて歌う。


遂に双龍の思いは重なりお互いを許した。


彼の地に、桜龍が再び降り立つと

そこには桜が咲いていた。


桜龍を思い白龍が育てた桜の木であった。


桜龍は白龍の行いを許し、また再び桜龍は桜と共に。

そして、この世でこの地で白龍と共に生きていくという少女に誓ったのであった。








最後まで読んでいただきありがとうございます。


自分の行いを悔やみ、また時に自己嫌悪して。

それでも許しあえたなら。



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