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第21話 ともだち計画


「それでは二回目のライブ配信に向けて作戦会議を行います」

『おー』


 賑やかしてくれるスフィとは反対に、他のメンバーの反応は薄い。オカルト探求部の部室には、五名全員が揃っているというのに。


「いきなり言われても、何のことだかさっぱりですよ」

三門みかにゃん、説明はしょりすぎ。なんとなく分かるけどさ」


 しまった。ことを急ぎ過ぎたか。


「ごほんっ、では説明しましょう。スフィとのライブ配信は大好評で終了しました。しかしっ、次回なにをするのか全く決まっていない。ですので、皆様方からアイデアを募集したいのですよ」

「そんなのSNS使えばよくないですか?」

「最終的には一万人超えてましたもんね」


 確かに久坂の意見はもっともだ。倫子ちゃんが同意するのも当然だろう。


「その意見は却下する。自慢じゃないが、俺はSNSではつぶやくだけで、他人の投稿を読んだりしないんだ」

「ホントに自慢じゃないですね」


「俺は気づいたんだよ。やっぱりSNSじゃなくて、リアルの付き合いを大事にしたいって。第一はやっぱりオカルト探求部だ。サークルである以上、一体感を大事にしたい。だから、みんなには協力してほしい」


「利用されてる感ありありなんですが」

「いやいや、ちゃんとお返しは考えてるから。まとまった収入が入ってきたら、みんなで旅行とか計画してるよ」


 俺の提案に倫子ちゃんの目が輝いている。いや、いつも輝いてるけど、普段より数割増しだ。


「それってスフィも一緒ですよねっ!」

「もちろんだよ。なっ、スフィ」

『ん』


「なんというか、めちゃくちゃスフィを出しにしてるじゃないですか!」

「そんなことない。これは俺とスフィ、二人の計画なんだ。その名も友達――――」

『ひゃくにんけいかく、だよ』


 久坂はあからさまに、「それはちょっと」といった雰囲気を醸し出している。


「手始めに、まずはオカルト探求部のみんなと仲良しになる必要がある。友達はいいもんだなぁとスフィに理解してもらって、人見知りを徐々に克服していく。そうすれば、友達百人も決して夢じゃない。現実的な目標になるのだ」


『なるのだ』


 スフィは俺の真似してVサインを作った。背中合わせでポーズをとる俺たちに、倫子ちゃんが拍手を送ってくれている一方で、久坂の表情は固まっている。きっと俺たちのコンビネーションに感動しているんだろう。練習の甲斐があったな。


「塔子先輩はなんでスマホ向けてるんです?」

「普通の動画でいいんでしょ? だったら、今みたいのでもいいかなって」

「確かに今のスフィは最高でしたよ!」

「三門先輩のどや顔はちょっとうざかったですけどね」

「あとで三門にゃんに送っておくね」

「私にもくださいっ」

「どうせなら今の動画にコメントつけて友達募集してみれば?」


 確かに今のでも神田さんはOKだしてくれるだろう。スフィの安全性をアピールするのに可愛らしさを前面に出すのは正解だ。でも、友達募集はなんとなく嫌だ。なんて断ろうか。いろいろ考えていたら、何故か久坂も難しい顔をしていた。


「響ちゃん、どうしたの?」

「う~ん。塔子先輩の言うことはもっともなんだけど、SNSで友達募集なんてしたら、それこそ大きなお友達ばかりになりそうで怖いなって」


 確かに!

 いいこと言うじゃないか。久坂にしては。


「そうですよ! 俺もそういうのは教育上よくないなぁって思ってたんです」

「そうかなぁ?」


 塔子先輩はスフィの前に行くと、優しく微笑んだ。


『とうこ、なに?』

「私とスフィって友達?」

『ん』


 スフィは当然のように頷いた。


 あぁ、しまったぁ!


 これだとスフィが否定するはずがない。今でも大人の友達ばっかりだからいいだろうって結論に持っていくつもりだ。悔しいが塔子先輩は策士だぜ。なんとか反論しなくては。


「じゃあ、こっちの二人は?」


 倫子ちゃんと久坂が期待の眼差しをスフィに向けている。


『りんこ、ともだち』

「じゃあ、私は」

『ひびき、ともだち?』


「なぜ、そこで疑問形!?」

「はっはっはっ、残念だったね久坂くん」


「嬉しそうに言うな! ねぇ、スフィ。私は友達じゃないの?」

『ひびき、カスミと、ともだちじゃない』


「だから、私とは友達ではないと。スフィと友達になるには三門先輩と友達にならなくちゃいけなかったなんて。なんで三門先輩がそこまでスフィに信頼されてるのか不思議だけど、とにかくめちゃくちゃ悔しい!」


 俺も理由は分からないけど、スフィがそう言うのだから認めるしかないだろう。中にいるのが気持ちいいのは最初に付いてくる動機ってだけだろうし、もしかしたら別の理由があるのかもしれないな。


「スフィ、いい機会だから見ててくれ。どうやって友達になるのかを」


 右手をスッと差し出すと、久坂は俺の意図を察して、仕方ないといった様子ながらも握手に応じた。何故かその上からスフィが手を重ねてきてるけど。スフィは俺相手に何度も練習して手加減を覚えたので、相手の霊幕を傷つけずに触れることができるようになっている。


『これでともだち?』


 いつのまにか、倫子ちゃんの手が伸びてきた。スフィの小さな手を包み込んでいく。


「うん。みんな友達だね」

「じゃあ、私も」


 人の目を全然気にしない塔子先輩まで参加してくるとはね。メンバーは全然そんな感じじゃないのに、なんだか体育会系みたいになってしまった。思ってたのと随分違う形になってしまったぞ。これ、どう収拾つければいいんだ?


 そう感じているのは、どうやら俺だけじゃないみたいで、みんなが見合っている。牽制し合う中、動き出したのはスフィだった。


『んん~。ともだち、お~』


 俺が知らないところでスポーツの動画でも見たのだろう。それっぽい動きをして集合は解かれた。


 でもちょっと待ってくれ。次回の動画内容をどうするか、まったく話し合いになってないんだが。まあ、自分で考えてやるしかないんだろうな。

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