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第20話 とりあえずの成功


 初めての配信は順調だ。アクシデントはあったけど、スフィも上手くやってくれている。霧島のフォローに助けられて、無事に終了予定時刻までたどり着いたところで、気になる質問を見つけた。


 <今後の配信予定とか、どうなってんの>


 そういや、まったく考えてなかったな。配信で収益を得ることが目的じゃないから、特に変わったことをやる必要がないし。まあ、正直に話せばいいか。


「そのへんはまだ決めてない感じですね。というか、いつまで続けるかも未定なんで、もしかしたら今回で最後の可能性もある?」


 きっと腐界管理局から何らかの反応があるだろう。それを見て決める感じなのかな。政府の要請で配信を始めたなんて言わないけど。


 でも、今の段階だとスフィの安全性を示したとは言い切れないよな。普通の人たちはともかく、各国政府の人からしてみれば、俺やスフィがそんなことしませんよと言ったところで納得するはずがない。


 矛先がいつ自分に向くか分からないし、一流の霊能力者たちより遥かに強大な霊力を持ってるのは間違いないんだから。俺は今までの感覚で大丈夫だろうなって確信してるけど、流石にそれは共有できないだろう。


 <¥5000:今止めるとかありえねえ駄目だろ>

 <¥300:スフィをもっと見せて>

 <配信から逃げるな>


「あぁ、ありがとうございます。予定は未定だけど、たぶん続くんじゃないかなと。どういう形でかは決まってないです。それじゃあ、そろそろ配信終わりますね」


 スフィに耳打ちしてお願いする。たぶんスフィが言わないと終わらないだろうから。


『ばいばい』


 <またね~スフィ>

 <ばいば~い>


 ふぅ、ようやく終わったか。


「おつかれ、三門。スフィもおつかれさま」

『ん』

「ホント疲れた。今までの配信とは比べ物になんないわ」


 今までは、垂れ流してただけだからな。視聴者のことなんて全然考えてなかったってことだ。頭の使い方がまるで違う。しかも、スフィの発言に注意しながらだったし。


「ははっ、まあでも一応成功ってことでいいんじゃないか?」

「たぶんね。最初としては十分だと思う。あとは腐界管理局がどうでるか」


「そっか。んじゃまあ、俺はそろそろ戻るわ」

「助かったよ。それと弁当ありがとな」


 霧島は立ち上がって玄関に向かうと、軽く手を挙げながらアパートを出ていった。


『キリシマ、いい人だった』

「うん。なかなかに見どころがある若者だったな」

『ん』


 いや、素直に同意されても困るんだけど。

 さすがにスフィにツッコミを期待するのは早すぎたか。


『カスミ、でんわ』

「おっ、神田さんじゃん。神田さんも配信見ててくれたのかな」


 一度水分を補給してから通話ボタンを押した。


「もしもし、三門です」

「おつかれさまです。神田です」


「おつかれさまです。配信見ててくれたんですか?」

「ええ、もちろん見てましたよ」


「あんな感じでよかったんですかね」

「どうでしょうね。私としては良かったと思いますが、大事なのは世間がどう判断するかですから。ですが、少なくともロリコンというレッテルを張られるような印象は受けませんでした。仲の良い兄妹のようでしたよ。多少のやっかみはあるでしょうが、そういう人はどこにでもいますから、気にしない方がいいですね」


 まあ、万人受けを狙ってるわけじゃないしな。一番気にしてたことがクリアできたのなら問題ない。


「あの、それで、腐界管理局として次にどうしてほしいとかはあるんですか? こういう配信がいいとか、よく分からないんで」

「そうですね。三門さんにはこれまで通りに生活していただいて、腐界で人命救助をしてくだされば助かります」

「それだけですか。もっと、具体的に指示とかあると思ってました」


「いえいえ。腐界管理局は、国民の皆さんが以前のような生活を送っていただけるようにするのが目的の一つですから。その点で言えば、三門さんが腐界で救助活動をしてくださってるのは本当に助かっているんですよ。そういった日常の合間にスフィさんの姿を映していただければ何も言うことはありません」


「そうですか。分かりました」


 通話を終えると、スフィが再び寄ってきた。話してた内容は理解できないだろうけど、気になるよな。


『かんだ、声ちがった』


 気になってるのは、内容じゃなくて声の方か。


「う~ん。うまく説明できないんだけど、電話だとちょっと聞こえ方が違うんだよ」

『スフィも、ちがう?』

「たぶん違うよ。誰かに聞いてもらおうか?」

『ん』


 そうだ。倫子ちゃんに電話してみよう。配信の時も倫子ちゃんっぽいコメントがあったし、今なら通じそうだ。スフィからの連絡なら喜んでくれるだろうし。アドレスから倫子ちゃんを探して発信する。ところが倫子ちゃんが出てくれない。


『りんこ、でないね』

「うん。今なら出てくれると思ったんだけどなぁ」


 もしかしたら、お風呂に入ってるとかかな。仕方ない。他の人にするか。


「塔子先輩とはプライベートを干渉しないようにしてるし、久坂は問題外。出ていったばかりの霧島にかけるのもなんか違う。そもそも運転中だろうからダメ」


『カスミ、ともだち、すくない?』


 そんなことない。

 そんなことはないはずだぞ。たぶん。


「いいか、スフィ。友達ってのは沢山いればいいってもんじゃないんだ。腹を割って話せるような人が何人かいれば十分なんだ」


『カスミ、ともだちなんにん?』

「うっ。塔子先輩、と六道さん」


『りんこ、と、ひびきは?』

「まだ浅い友達。二人とはこれから仲良くなっていく段階」

『やっぱり、すくないね』


 やっぱりって何だよ。やっぱりって。二人いれば十分だろ。いや、六道さんは家族みたいなもんだから別枠か。それにまだ連絡取れないから、今すぐ話せるとなると塔子先輩だけだ。その塔子先輩とも部室で話すだけだし。


『カスミ、かなしそう』

「そこまで深刻じゃないっ。慰めないでいいからっ」


 スフィは涙目になって、横から抱き着いてくる。


『カスミ、ともだちすくない。だから、スフィも、ともだちできない』

「いや、それはおかしい。スフィも恥ずかしがらないで、外に出てくればいいのでは? ごふぉ」


 幼女に正論かましても通じるはずがない。抱き着き強度がさらにあがってしまった。かなり苦しい。


『スフィ、ともだち、ひゃくにん、ほしい』

「百人!? そりゃ――――」


 無理だというのは簡単だ。だが言ったところで何が変わるというのか。スフィの人見知りが急に治るわけじゃない。


「そりゃ、頑張らなくちゃな」

『ん。カスミ、がんばって』


「頑張るのはスフィだろ?」

『カスミのともだち、スフィのともだち、だよ?』


 なるほど、そうきたか。そうきましたか。


「そっかぁ。それじゃあ、いっちょ一肌脱ぎますか」


 俺の言葉を聞いて、スフィの表情がパッと明るくなった。やっぱ、スフィは笑った姿がよく似合う。


『カスミ、ゆうれいになるの?』

「なりません!」


 肌を脱ぐってそういう意味じゃないから!


 なんとなく否定しちゃったけど、何かひっかかるな。

 俺が死んだらどうなるんだろ?


 普通の人は死んだ時に魂の力が弱くなっていくから同時に霊幕も弱まっていく。そのうち魂が形を保てずに霧散する。地縛霊とかにならない限りは、常世に向かってアニマムンディで再構成されるんだ。


 でも、俺の霊幕は強力だから、死んだとしてもある程度の期間は魂の形が維持されるんじゃないのか?


 まあでも、どっちにしろアニマムンディにたどり着けば同じことか。

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