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飛天

作者: GONJI

私の音楽野郎仲間にとても渋いちょいワルおやじのシンガーソングライターの仁(仮称)さんという方がおられました

とても熱く魂からの叫びで歌われる方

ファンも日に日に増え続けついに某テレビ局主催の全国規模のコンクールに地元代表として出演することが決まりこれからだ!と意気揚々とされていました

ところが・・・

そんな魂の光が天まで届いてしまったのかもしれません

突然の余命3ヶ月を告げられました

ものすごい速さで症状は悪化し僅か1ヶ月で旅立たれてしまいました

結局コンクールへの出演は叶わなかったのですが、このテレビ局が別枠で仁さんをご紹介くださいました

仁さん 享年50歳

と画面に事実を告げるテロップとともに・・・


今日は人生を熱く燃え尽きたその方の紹介をさせていただきたいと思います


仁さんは職人の棟梁さんでした

朝早くから現場で他の職人さんに指示し面倒見の良いまさに親分肌の方

顔を見ると悪そうな顔つき・・・

きっと学生時代はヤンキーやったんちゃうか?と思っていたらまさにその通り

でも、そういう方だからこそ感受性が強く、大きな慈悲心をお持ちなのです

傷つきやすいから他人の痛みもよく分かる人なのです

ところが瞳は澄んでいてまるで子供のように無邪気でした

人を楽しませることを自分の楽しみとして大いに盛り上げて、はしゃぎ過ぎたあとで奥様に「ええかげんにしいや!」と怒られることが多かった人なのです


学生時代にギターの弾き語りをされていたのですがその後は離れておられました、しかし数年前からまた再開されたのです

そのきっかけとなったのが古くからのお二人の友人が事業に失敗して相次いで自らの命を絶たれたことからでした

仁さんは助けてあげられなかった自分の無力さを痛感し嘆き苦しみました

そこから世の中をなんとかしたい!

と歌い始められたのです


まさに本物の魂の叫びを聴かせてくださいました

これからだったのに・・・


その当時に旅立たれた仁さんに対して私の想いを綴った追悼の言葉

です


やさしすぎた仁さん

やさしすぎるので傷ついたことも多かった、やりきれずに荒れたこともあった

それでも最後までやさしさを捨てなかった

友2人が世の中の矛盾に敗れ自らこの世を去った

友を救えなかった自分自身の無力さを嘆き苦しんだ

そしてこの世の中をなんとかしようと立ち上がった

想いを、叫びを込めて歌い続けた

戦い続けた

何でも自分ひとりで抱え込んで周りを救い続けた


そんな頑張っておられた仁さんでしたが本当に残念なことに病魔が襲いかかりました

そうなってしまった自分自身

そんな仁さんですから、やはり愛する伴侶に辛さを与えてしまったことを嘆いたことでしょう

自分自身の体も辛かったでしょうけれど、きっとこの大切な人に辛さを与えてしまったことが何より辛かったのではないでしょうか


人は弱い者

だから助け合う

精一杯その人の力になってあげる

それを実践してこられた方です


「なのに」と誰もが思ったことでしょう

今となっては事実として、ひとつひとつ心の整理をしていかなければなりません

そうして一日も早く「こんなに元気にやっているよ!」と仁さんに向かって言えるように

それは私が仁さんは本当に空を自由に機嫌よく飛びまわっておられるなと感じる時だと思っています


仁さんの周りには、仁さんを愛しておられる方がたくさんいらっしゃいます

仁さんのお人柄ですから、当然ですよね

葬儀の当日その中のお一人の方がおっしゃった言葉「本当に寂しくなりました」

仁さんが放たれていた光の素晴らしさですね

仁さんのことはきっと今後も語り継がれていくでしょう

それほど、人の心の奥深くに入り込むことができた人だったのですから


かっこええ人ですね

私も自分なりの生き方でがんばります





旅立たれる1週間前に病院へお見舞いに行きました

面会謝絶の表示がありましたが、私が来たことを奥様が仁さんにお伝えくださり

特別にお会いできました

ベッドに腰掛けてはいるものの鼻から管を通され痩せこけてしまった仁さんは私に向かって右手を立てて「申し訳ない」と謝罪されたのです


かつて仁さんと約束したのです「仁さん!80歳になっても一緒にライヴしようね!」

どうやらその約束を守れなさそうだとの謝罪です

「何言うてるん!最期まで解らへんやんか!」


その数日後自宅へ戻られて家族に見守られながら息を引き取られたそうです


今となっては私も仁さんの年齢をすっかり追い越してしまいました

仁さんはきっと機嫌よく自由に空を飛び回っておられることでしょう

そしてあちらこちらで世話を焼いてはるかな?


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