ならばその目でしかと見よ
月にウサギがいるといわれてますが、実はカエルもいるらしいんですよ。
夜空に満月がありましたら、ウサギの右下を見てみましょう。
カエルの頭と前足が見えるかも。
その森ではアケビの木が並んでいる。紫色の割れた実が下がっている。
小さなタヌキくんと、頭に王冠のようなものを乗せた白いおサルさんがいる。
二人の間にあるお皿には、魚の西京焼きが乗っている。
皿の横には湯気のあがる湯呑も置かれていた。
「んとね。白猿さん。インドの月面探査機が月の南極で観測を始めったていうニュースを見たの」
「おいらもみたぜ。子狸くん。月の南極で探査機が着陸できたのは世界初らしいな。日本でも近々月面探査機を打ち上げるらしい。がんばってほしいな」
「んとね。いろいろな探査機が届いたら、月のウサギさんもびっくりするの」
「月のウサギは、元々はインドの伝承が元になっているな。ウサギとサルとキツネが雪山で遊んでいると、お腹をすかせた老人が現れた。サルとキツネは食べ物を調達できたが、ウサギさんは食べ物を見つけられなかったんだ」
「そのお話ではウサギさんは火に飛び込んで自分を食材にするの。かわいそうなの」
「で、その老人が神様で、ウサギさんは生き返って月で暮らすことになったんだな。日本昔話でもその話があるぜ。月の模様がウサギに見えることから話が作られたんだろうな」
「食べ物はおサルさんとキツネさんが持ってきたから、ウサギさんは死なずに別のことでおじいさんを助けてあげればよかったと思うの」
「そうかもな。中国でも月にウサギがいる話はあるけど、違う話になっている。中国では月の白い部分がカエルに見えるみたいだ。月にはウサギとカエルがいるという伝承もあるぜ」
「月の模様にはいろいろな見え方があるんだね」
「ウサギとカエルっていうと、日本では『鳥獣戯画』っていう絵巻物が思い浮かぶな。鳥獣戯画の序盤ではウサギとカエルの他に、サルとキツネもいるんだ。鳥獣戯画は『月の世界を描いたもの』っていう説もあるぜ。インドと中国の月の伝承を合わせたんだな」
「そうなんだ。今、ぼくは鳥獣戯画のことを調べてみたんだけど、人間とか他の動物もでているよね」
「人間などがでるのは後半だ。鳥獣戯画ってのは長い年月で別の作者が追加していったみたいだ。序盤だけ月のつもりで描いてて、追加分は月と無関係かもな」
「鳥獣戯画の序盤にはシカさんもいるの」
「シカと月の関係を書いた昔話はインドにも中国にもなさそうだ。でも、鳥獣戯画ではカエルやウサギは擬人化して描かれているのに対して、シカは乗り物用で一頭だけ描かれている。だからシカトしていいと思うぜ」
魚の西京焼きっておいしいですよね。
サイキョウ、サイキョウ、サイキョウ……