十
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状況把握の為十津さんの所に行くと……。
「……ああ、ネイト、貴女でしたか」
「……十津さん、どうしたのですか?」
「……ちょっと記憶の植え付けをされてね。……反吐が出るわ」
「……どんな記憶を見せられたのですか?」
「……端的に言えば性的利用が目的の奴隷にされた記憶、ね。……情報や状況の齟齬も結構大きいから捏造だと解るレベルだし、私自身がどうこうされた訳じゃ無いけどね……」
「イメージ的には捏造の自分主演なAVを強制的に見せられた感じ、ですかね」
「……イメージ的にはそれで合っているわ……記憶を捏造し、植え付ける、機械で間接的にやる奴とか好きそうな犯人よね」
「……うへ……」
捏造のレ○プとかをされた記憶や、度を過ぎたセクハラ行為を受けた記憶を無理矢理他に植え付ける能力、ですか。それを許せるかどうかはまた別の話としても、精神攻撃としては有効そうなのがまた何とも……。
「……問題なのは記憶の植え付け自体は一瞬で終わる事、ね。犯人は処理したし、能力で記憶を除去したからもう概要しか覚えて無いけど」
「ルド様がどうこうしたとか聞きましたが」
「……確か、その件は強制屈服領域、だったかしら。何もかもを屈服させられた精神状態に領域内の他者をする能力」
「……強制解らせ領域、ですか……またアレですね」
「空間を破壊出来ない限りは譲渡可能なタイプの物は粗方奪われる類いの能力に成るわ」
「……何というか、滅茶苦茶ですよ、もう」
「能力としては威圧だけで相手を降参させる能力の発展系、って所かしらね。本当胸くそ悪いわよ」
「……それは、それは」
「……ネイトはどうだったの?」
「その時異次元でスプリンガーの相手をさせられて居たので被弾は免れました」
「……そう、羨ましいわ。貴女に取ってはスプリンガーの野郎に助けられた形だし、不服でしょうけど」
「はは……」
……しかし捏造記憶の植え付けと、強制解らせ領域、ですか……。精神干渉に特化していますね……。エロ目的で使うと悪用内容が簡単に思い付くので本当にヤバ過ぎると思います。能力が通りさえすれば精神的には勝てますし、屈服した精神の奴に自害を命じるとかもやれそうですし。……エロ目的の利用だと……ゴホン、それはともかくとして、試合だと能力が通れば相手が勝手にサレンダーしますよね……。まあ、処理されたそうなので、対抗手段はそれなりに有ると言う事だとは思いますけど。
「……それはともかくとして、大量に設定が盛られていようが、それは絶対ではないって言うのは忘れない様にしないとね」
「……絶対系でもですか?」
「幾ら設定を盛ろうが前提側をどうこう出来る奴には関係ないもの」
幾ら世界観上の理論値としての最強を用意しようが、話の前提の世界観自体を無視して変えてそれ以上の奴を出される、ですか。傍から見れば空気が読めないと言うか、話の前提をそもそも理解していないと言うか……。まあ、前提を変えられるって議論の前提を変える事なのでしょうけど、脳内シミュレートの議論的にはそりゃあそれで勝てますよね。前提が違う物への回答しか相手はしていない事を前提に考えるのですし。
「……なら何故盛るのですか?」
「前提側をどうこう出来ない奴には有効なのは変わらないし」
「……」
「前提側をどうこう出来るって事は、第三者が決めた公平なルールではなく、自分が決めた自分が負ける余地が一切合財無く、超絶有利で何が有ろうが敵に何を出されようが絶対勝てるルールで戦う。それを敵に強制出来るって事。同じ土俵に立たないとそれ以外で幾ら強かろうが一律で論外に成るわね」
ゲーム的に考えるなら絶対的な効果のゲームマスター権限持ち相手に、それ無しで一プレイヤーが喧嘩を売る的な感じですかね。まあ、ゲームバランスとかは考えないで良いでしょうから、普通に考えたならどう考えても無理ゲーです。実際にはメタ創作的には勝手に決めて居るのじゃ無いよとか言われる奴でしょう。
ですが、少なくとも何でも有りのルールでは自分に都合の悪い能力だけは禁止なんて理屈は通りません。まあ、色々と制限をして居るスポーツ競技だと一人だけがレギュレーションの無視が公式に認可された形で可能とかチート呼ばわりされても仕方無いですけど。
「……それはインチキと言うかアンチヘイト創作の作者がやっている様な事を能力として落とし込んだ感じですかね……」
「それはともかくとして、全体に効果を及ぼす法則干渉をする奴が出るとか法則干渉方法を身内全員に習得させないと不味そうね……」
「……そんな簡単に習得出来る物なのですか?」
「初歩の初歩しか出来なくても、既存法則を乱すくらい迄なら割と出来る奴は居るのよ」
「またまたご冗談を」
「創作的にとても簡単に言うと、既存作品に適当に意味の通らない文字を雑に入力して混ぜ込むだけよ?」
小説データに乱雑に文字を打ち込む程度の難易度とか個人の範疇で良いなら簡単過ぎにも程が無いですかね。まあ、他人の小説データをどうこうするのも無断転載サイトとか有る訳ですし。まあ、他国の奴が犯人で丸ごとコピペしか能の無い奴なら天安門事件とか、他国で言及すると不味い系の内容を混ぜておくと撃退出来るらしいですけどね。
「法則干渉がその程度の技術なのですか?」
「最低限の技量を学んだら雑兵でも簡単に出来るわ。干渉した結果、代わりにちゃんとした物を造るので無ければね。そうでなければランダム効果呪文と同じ程度の扱いよ」
「……ああ、適当にやっただけだからどうなるか解らない、ですか……」
「ま、相手の法則潰しだけで終わるパターンの方が多いとは思うわ。確率論的には自爆的な物が発生しない保証も無いけどね」
「……なら教えて戴いても?」
スプリンガーの野郎が言って居た、真空崩壊を出来る奴がある程度居ると言う話はこれが根拠ですか。
「教えるのは良いけど、魔法生物を使って皆にそれをレクチャーする教師役をして貰うからね?」
「げっ……いや、はい、解りました。ご教授お願いします」
「ならシミュレーターの中でやりましょう。着いてきて」
それでシミュレーター内部に移動して、十津さんに法則干渉のレクチャーを一通り受けました。……法則干渉技術、か……。これで扱われる理屈自体は超絶簡単な物ですね。いわゆる有象無象の雑兵レベルの奴が前提の基本装備として習熟していて良いレベルで。
只、初歩の初歩段階しか出来ないならランダム効果呪文扱いされる性質上、多用されるような物では無いですけど、防がなければ致死レベルの相手の攻撃にぶつけるには分の良い賭けに成りそうなので、大技を撃たれた際の防御技に起用するには十分有りのレベルな物だと思います。
運のパラメータが高い系の奴には神器レベルに運用出来るのでは? と思いましたが、創作的に例えるなら理屈は雑多な文字の打ち込みで単語が成立した場合何かしら起きる……と言う物なので、相手が出している奴と自分が出した奴の掛け合わせで決定される為、純粋なランダムと言う訳でも無い様です。
……法則干渉技術なんて有る訳無いだろ、ですか? 法則を変える現象なら魔法や超能力抜きで現実にも有りますし。……それに三千度其処らのアーク放電を空間上に撒き散らすゴーレムは素材をちゃんと厳選すれば魔法や異能無しの科学的にもワンチャン有りそうなのですけども。
余談を一つ。恐らくこの世界は進化論ではなく、インテリジェントデザイン論が前提の世界です。まあ、神様が実際に居る世界観ですし、それに法則干渉技術が有るのだから、それを大規模でやった奴が神様扱いでも不思議じゃないかと思います。全部が物理を前提とした魔法産か何かで有り、結果として法則干渉で全部壊せると言う事なのだと思います。……まあ、この話を深堀しても意味は無いから、インテリジェントデザイン論に付いて詳しく知りたかったら自分で検索してくださいね。神様が居ない前提だとボロクソ言われて居てもおかしくない内容ですけど。